やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」 感想

先に見たもん勝ちと後出しじゃんけん


先日、ハリウッド版の「ドラゴンタトゥーの女」を見て、とても良かったので、すぐにオリジナルのスウェーデン版も見てみました。
原作は未読です。


ハリウッド版は158分で長いな、と思っていたらこちらの完全版は186分!それでもそんなに長くは感じませんでした。でも2回に分けて見たけど。
逆にハリウッド版に比べて30分も何やっていたんだろう、という感じ。編集をうまくやれば30分カットできたのかな?


今回は2回目なので、あらすじや人物相関図を確認しながら見ることができました。
グロ場面はハリウッド版の方が暴力的な映像でした。やっていることは変わらないけど、映し方がエグい。


配役は、ハリウッド版もこちらも文句はありません。
ミカエルは最初「ポルノグラフィティのボーカルが年取ったらこうなるのかな」なんて思いました。そりゃダニエル・クレイブの方がイケメンなのは当然ですが、リスベットが惚れる重要な要素「優しさ」がこちらの方が上。
リスベットはハリウッド版のルーニー・マーラの方が可愛いですが、女性性を感じさせないという部分でノオミ・ラパスは良かった。
ハリウッド版はバイクの走りっぷりや「殺していい?」のセリフなど、「マジで強い」女性な感じがしましたが、オリジナルの方は男や社会に対する反骨精神は人一倍あっても、実際の力は女性だもの、という感じがして良かった。あんまり「マジで強い」スーパーウーマンだとアンジェリーナ・ジョリーミラ・ジョヴォヴィッチになっちゃうもんね。
それにしても、彼女たち変わりすぎ。ルーニー・マーラは「ソーシャル・ネットワーク」のヒロインで、ノオミ・ラパスは「プロメテウス」のヒロイン。どっちも、言われても気づかないほどの変わりっぷり。素晴らしい。
あと、ミレニアムの編集長の顔が怖いよー。ヌードにならなくてもいいですよ。


ハリウッド版の方の感想で「なぜ彼女はセックスさせてくれたのでしょうか」と書いたのですが、こちらを見ると「好きだけどそんなこと言い出せなくて、そして自分でも認めたくなくて、即物的に体を求めただけ」な感じがしました。
ツンデレですね。この解釈、どうでしょう。
ラストで声をかけようと思ったけど彼には編集長がいて、諦めてしまうシーンもいい。でも、彼にあの女がいることは知っていたでしょ。


謎解きの部分では、こちらの方が丁寧に描いています。私が2回目だから分かりやすく感じたのかな?
前回「ミカエルはあんまり何もしていないですね」と書きましたが、そうではありませんでした。人と会って話を聞くのは彼の役割、パソコンや情報処理は彼女の役割、ときちんと役割分担されていました。


二人の出会いは、オリジナル版では彼に操作の手助けとなるメールを送ることがきっかけですが、彼女はなぜ彼の調査が終わった後も彼を追い続け、発信元が残る形でメールを送ったのでしょうか。彼の調査をしているうちに既に惹かれていたのでしょうか?この辺、誰か教えてください。


ミカエルはジャーナリストですが、彼が行う仕事は探偵のやることです。
それを、以前事件を解明したことがあり、マスコミから「名探偵カッレ君」と呼ばれていたという過去をさりげなく紹介することで理由付けにしています。また、幼少時代にハリエット(失踪した少女)に会っていたという過去も、彼のこの仕事に対するモチベーションになっています。
この辺はハリウッド版ではカットされていましたが、この方が理由や動機付けといった裏付けがされており、良かったです。
ハリウッド版では敵対する実業家をつぶす弱みを教える、という取引が動機付けになっています。こっちでもいいけどね。


それでも、ハリウッドの方は「後出しじゃんけん」なので、いろいろ修正されています。
地下鉄の構内でチンピラに絡まれる場面は「そんな輩いるかよ」という感じがしたので単なるひったくりでよいです。
事件が聖書の内容とリンクしているのですが、ミカエルがそれに気づかない理由として信仰心が薄いことが描かれていたり(娘が宗教に熱心になることにあまり乗り気でない)、悪徳後見人に対して復讐後もダメ押しをするところとか、リスベットの「仕事は熱心にやるけど人に対してそっけない」感じを「(責任者に)電話して」の一言で表現しているところとか。
ヴァンゲル一族が欲深く偏屈なやつらという描き込みも十分されていたし。
ハリエットの真実についても、ハリウッド版の方がもうひとひねりしてあって良かった。死んでいる→生きている→匿っている→成り代わっているの件(くだり)。
敵対していた実業家がオリジナル版では自殺、ハリウッド版ではマフィアによる抹殺になっている部分も、悪党の末路としてははっきりとした着地の方がいいので、ここもハリウッド版を支持します。
身内に裏切り者がいるエピソードも無くなっていましたが、オリジナルの方でもそれがラストに活きてこないので、カットでよいです。
それよりも、リスベットがハッキングの技術を利用して大金を手にするエピソードをテンポよく入れていた方が良かったです。
でも、後から思ったのですが、リスベットはあんな化粧や着こなしや立ち振る舞いができるのでしょうか?ハリウッド版は「スーパーウーマン」な感じがあったのであまり気にならなかったのですが、オリジナル版は「不器用な少女」が強く出ていたので、そこに違和感を感じてしまいました。
脳溢血で倒れた前の後見人のもとに行き、「友達が出来た」と告げる場面も良かった。まだ「恋をしている」と自分で認めていないところがいい。
オリジナル版の、お母さんのところに行ってひどい父親と虐げられてきた母親、それによるトラウマを抱えた親子関係を描いた場面もいいけど。
ラストで「クリスマスだね」のセリフとか、プレゼントを渡そうとして渡せない場面なんかは分かりやすいツンデレ胸キュン場面で、この辺の分かりやすさはさすがハリウッド。


というわけで、それぞれにいいところがあり、甲乙つけがたいのですが、やはり最初に見た方が良いと思ってしまうので、私はハリウッド版に1票を入れさせていただきます。


さて、第2部・第3部も早く見なきゃ。


<追記>
ハリウッド版、スウェーデン版2・3作目の感想はこちら↓
ese.hatenablog.com
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