やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「誰か Somebody」宮部みゆき 感想

タイトルの意味は?


久しぶりに宮部みゆきさんの本を読みました。
以前宮部さんの作品を読んだときに感じた「言葉で飯食っている人はやっぱすげえなあ」という思いを、改めて感じました。
私もこんな文章を書いていますが、語彙も表現力もあまりに乏しい。例えば私が何かを書く際に3種類の語彙の中から選択して書いているとして、宮部さん(に限らずプロの作家さんはみんなそうなのでしょうが)は30種類の語彙の中からその文脈・表現に最適な単語を選択しているように感じます。
また、その心理状況や見た目の説明などの文章も上手い。正確で的確なのはもちろんですが、学者のような硬い書き方ではなく、エンタメ作家として読みやすい文章で書いているのが素晴らしいです。


この物語はミステリのカテゴリではありますが、謎としては大きなものではありません。それよりも人間関係やその関係性についての人間ドラマです。
なので、この物語がシリーズ化して「名もなき毒」へと続いているのが不思議でした。主人公はいい人ではありますが、それだけで特段個性や魅力が溢れる主人公ではないからです。
そうはいっても「名もなき毒」はもう買ってしまったのでまたそのうち読みますが。


こんなトリックなどないお話でも読ませてしまうのは、ひとえに作者の「筆力」の賜物なのでしょう。こんな、「面白くない話を面白く書ける力」が欲しいなあ。
(このお話が面白くないという意味ではありませんよ!)


あと、この本、実は以前読んでいました。
読み始めてすぐに「あれ、この本読んだことあるぞ」と気づいたのですが、先のストーリーを全く覚えていなかったので、ずっと新鮮に読むことができました。
(覚えていたのは妹と婚約者の不貞の部分だけ)
謎の部分が小さかったからというのもあるでしょうが、それでもこんなに忘れていて大丈夫か俺、とも思いました。
もともとこのブログは何でも忘れてしまう自分の備忘録のためでもあるのですが、その必要性を改めて思い知らされた作品でした。
こうやって書いておけば忘れない(はず)。と信じたい。


誰か―Somebody (文春文庫)

誰か―Somebody (文春文庫)

誰か ----Somebody

誰か ----Somebody