やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

ライムスター「マニフェスト」 感想

「K.U.F.Uで毎回『最新作が最高傑作』になる老舗」

初めてライムスターを聴いたのは「ウワサの伴奏」でした。「ウワサの真相」の曲の多くを豪華客演で再録したアルバムで、ヒップホップ初心者にも入りやすい、間口の広いアルバムでした。 その後「グレイゾーン」「ヒートアイランド」と続き、すっかりライムスターの虜になっていた私でした。
この頃のライムスターのイメージは
■マミーD・・・ひたすら格好いい。ラッパーの最高峰。カラオケでもDさんのパートが歌いたい。
宇多丸・・・記号・飛び道具キャラ。言っていることは深く面白いが、ラッパーとしてのスキルはイマイチ。
(ミュージックとしてグルーヴに乗ってラップしているのではなく、面白話を喋っている)
■バックトラック・・・ファンキーで個人的には格好いいが、地味。キャッチーさに欠ける。
といったものでした。

その後ライムスターは活動休止し、個人活動に入ります。宇多丸はラジオで大活躍し、ギャラクシー賞までゲット。マミーDはマボロシで少し歌物寄りのフローへ移行。アルバムも3枚も出し、ツアーも大盛況。
二人とも、やりたいことを満喫し、大きな評価も得ています。正直、復活は無いんじゃないかと思っていました。復活するにしても、二人ともこれまでのような創作意欲はないのではないかと。
しかし、復帰作「マニフェスト」は、圧倒的に最高傑作でした!


今回のアルバムはヒップホップにしては珍しくフィーチャリングアーチスト無し。その代わりと言っては何ですが、バックトラックを外部へ発注、というやり方です。
これが大正解。トラックが格好いい!
やっぱりライムスターが今まで世に出なかったのは、ヒップホップファン以外の一般人の耳にも刺さるベタさ、派手さ、キャッチーさが無かったからだな、と再認識。


また、宇多丸のラップが進化しています。きちんと譜割り通りに言葉を乗せ、ミュージックとしてのレベルが上がっています。あれ、ラジオでしゃべって映画を見てブブカで原稿書いていただけじゃないのね!ごめん、疑っていました。


そしてマミーDですが、こちらも進化しました!今までもラッパーの最高峰だったのにさらに進化し、「韻を踏んでいなくてもグルーヴ感を出す」「Dさんのタイム感でラップをすれば、譜割り通り以上のグルーヴが生まれる」ようになったのです。
分かりやすいパンチラインの韻も減り、フローそのものがグルーヴを生みだすようなラップは素人には真似できません。最近のKREVAと同じような進化です。これは、実は諸刃の剣(あくまでも私にとって)。私のような猪口才物がラップをしたら全然格好良くならないでしょう。というか、非常に退屈なしゃべりになるでしょう。進化しすぎて一般人ではついていけない(カラオケで再現できない)。


もうひとつ、このアルバムが最高傑作になったのは、トラックのレベルアップ、ラップのスキルアップに加えて、作詞のレベルアップも大きな要因です。もちろん今までのライムスターの楽曲もその辺のJ-POP、J-RAPとはケタ外れのレベルの高さでしたが、文句・下ネタ・面白話が多かったのも事実。
いや、文句・下ネタ・面白話が悪いということではありません。そういう、世間のJ-POPでは取り上げないテーマというのもヒップホップでは大事な要素です。
しかし今回はそういう「飛び道具」は無くても、J-POPと同じテーマであっても、断然勝っているのです。
「ワンスアゲイン」のような「もう一度立ち上がろう」という応援ソングであっても、
「ニューアクシデント」「ミスターミステイク」のような「失敗は新発見の素」「失敗を恐れるな」というポジティブソングであっても、
「K.U.F.U」のような「小さなことからコツコツと努力」ソングであっても、
「カモン!!!!!!!!!!!!!!」のような「俺最高」という「ザ・ヒップホップ」ソングであっても、
全て視点・切り口も含め、作詞力が圧倒的に高いです。
これは、二人が年齢を重ねて「照れ・衒い」がなくなってきたこともあるでしょうが、グループとしての活動を休止している間の個人活動が大きくプラスに影響しているように感じます。
宇多さんは映画・アイドルソングなどから「見せ方・相手への伝わり方」を、Dさんは「ラップの作詞論にとらわれず、素直に詞を書くこと(韻を踏むこと自体よりも、伝わることを優先する)」を学習したのではないでしょうか。
そして繰り返しになりますが、もちろんミュージックとしても、ラップとしてもレベルが高い(韻の踏み方、グルーヴ)。


このアルバムは「ウワサの伴奏」以上に、普段ヒップホップとは無縁の一般リスナーの耳にも届く力を持っています。何とか一人でも多くの耳に届け!



追伸。
ライムスターの良いところのもうひとつは、「ヒップホップの恥ずかしさが無い」ところです。
「ヒップホップ」というと、一般の人は
■だぶだぶの服を着て
■じゃらじゃらのアクセサリーを身にまとい
■しかめっつらで
■「YO!YO!」というポーズ(特に腕の動き)
■歌の内容は「俺一番」
■歌詞にはヒップホップ用語満載
というイメージでしょうが、ライムスターにはこれが無い。つーか、みんなは何でこれやるのかね。恥ずかしくないのかな。だから笑われたり茶化されたりするのに。イメージだけでだいぶ損してるよ。


※この文章は2010年10月に書いたものです。





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