やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「ヒーローショー」 感想

「パッチギ」などでお馴染みの井筒監督の最新作。
主演はジャルジャルの二人。


面白かった。
でも、それをうまく言葉で表現できない。そこで宇多丸シネマハスラーやその他のネット批評を見て、ようやく固まってきた感じです。
つまり、これから書く私の感想は、他の人からのパクリの言葉でもあります。まず最初にそれをお断りして…。


まず、ジャルジャルの演技が上手い。福徳がお笑い芸人を目指す若者を演じているのですが、その設定がもったいないくらい。実際のジャルジャルと全く関係ない役柄でも良かったのに。


物語のテーマは、「暴力の負の連鎖。その行き着く先」です。
予告や広告で謳われている「青春バイオレンス☆ムービー」というコピーからは明るくポップな青春とケンカが描かれているように感じますが、全くそうでは無いです。監督自身インタビューで語っているように、最近の「青春バイオレンス☆ムービー」の先駆者として、市場や作り手に影響を与えてきた責任があり、それを踏まえて、現実の暴力を描きたかったのだと思います。


売り言葉に買い言葉、または決まり台詞のように「ぶっ殺してやる」なんて言葉が簡単に出ますが、実際に「殺す」なんてつもりは無いはず。
しかし「やられたらやり返す」を続けていたら、行き着く先は「本当に」殺すになってしまうわけです。
今作でも若者たちはそんなつもりはなかったのに、引き返せない空気に押されて、誰も望んでいない最悪の結末へと突き進んでしまいます。また、途中の暴力描写も、地味ではありますがそれがリアリティを出しており、エンタテイメントでない、暴力という「嫌な行動」を上手く表現していると思います。
そうして最悪の結末に手を染めてしまった若者たちにも、その後の日常は訪れます。しかしそれは「あの出来事」と切り離して過ぎてゆく日常であるはずは無く、常に付きまといます。今までと同じ「ちょろい日常」も、これから築こうとしていた「暖かい日常」も、もう彼らには訪れません。
そして、さらに暴力の負の連鎖は続く…。


救いようのないラストやリアリティのある暴力描写で気持ちがげんなりしてしまったため、見終わった直後は言葉が出なかったのかもしれません。映画としては素晴らしかったのですが、あまり自信満々に他人に勧められる映画ではありません。


映画『ヒーローショー』予告編

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