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映画「白夜行〜白い闇を歩く〜」 感想

こちらの勝ち

原作→TVドラマ→映画ときて、ついに韓国版にたどり着きました。
原作は非常に良く、TVドラマ版はなかなか(でもやはりラストを最初に見せるのはどうかと)、映画版は最低でしたが、韓国版は「良かった」です。
前回の日本映画版は勢いに任せて書いてしまいましたが、あれからだいぶ時間が経ち、原作を読んだ時の情熱や記憶が薄れ、だいぶフラットな気持ちで見ることができました。
(昨日のエントリで日本版について書いていますが、あれは4月に書いたものです)


もともと原作は文庫本にして約800ページという大作なので、2時間で収めるのは到底無理。そこで構成をどうするのか、エピソードの取捨選択はどうするのか、という部分が作り手の腕の見せ所になりますが、日本版は時系列に描き、エピソードは亮司側の悪事をメインに描いていました。
それに対しこの韓国版は途中のエピソードはほぼ省き、最初の事件と質屋の店員殺しをメインに描いていました。
現在と14年前を交互に描くことにより、あのエピソードがない、などをこちらに考えさせずに映画が進んでいきました。この構成は上手いですね。


この作品は「昼と夜」「陽と陰(ひとかげ)」がテーマのひとつですが、それを象徴するように、雪穂は白い服、亮司は黒い服がメインです。
しかし、亮司が雪穂の旦那の連れ子をレイプするとき、その子をケアするときなど、雪穂が手を汚す場面では黒い服を着ており、そのコントラストが上手いなと感じました。
また、「あの二人はシャム双生児だ」という刑事のセリフがありましたが、高校生の時とラスト間際に二人が背中合わせになる場面があり、映像的にも工夫が凝らされていました。


原作では逃げようとする亮司が足を滑らせ転落死(事故)でしたが、映画日本版では自殺でした。雪穂を守るのが亮司の使命でもあり願いだったので、自殺というのはありえない選択だと思っています。そこから足がつくかもしれないので。だから映画日本版はダメなんだ。
韓国版でも結果的には自殺でしたが、当初は逃げる予定でしたし、「太陽が最も高くなるとき、影は消える」という原作にはないセリフがうまく決まり、自殺も「あり」と感じました。彼女が上り詰めたので自分はもういらなくなった。捕まることは彼女を苦しめることだ。
また、原作やTVドラマ版では亮司がサンタクロースに扮していますが、この作品ではそれが「フリ」に使われてます。劇中の刑事はもちろん、見ている私たちもサンタが亮司だと思っていたらそれは彼のツレ。上手い。騙されました。


というわけで、最低だった日本版を見た後で評価が甘くなってしまう部分もありますが、「良かった」です。
多分TVドラマ版も見た上で作られたのではないかと。


それでも性根の曲がった私はいくつかツッコミを…。
■韓国人見分けつかない
韓流ドラマも韓国映画も見たことない私にとって、初めての韓国映画。
韓国人の顔も名前も見分けつかない・覚えられない。
原作を読んでなかったら人物相関図が全然把握できなかったことでしょう。
(このエントリで人物の名前が亮司と雪穂になっているのはそのためです)

■亮司について
溝端淳平山下智久塩谷瞬を混ぜたような感じ。いい男ですが、演技力はどうなのかしら。
他の人のブログを見ると「いい男でうっとり」的な扱いが多いです。やはり女性はそういう目線なのかな。
彼は闇を生きる役柄なので、喫茶店の店員なんてしていていいの?彼女を見守る、という役割か。
関係ないけど、韓国人の男性って何でみんなマッチョなの?鍛えているから?これも整形の一種?遺伝子の差?

■雪穂について
物語が始まった時には既に社長と付き合っているので、彼女がどうやって社長に近づいたのかが描かれていない。と思っていましたが、これを書きながら閃いた。
前半で社長の連れ子が「先生は保護者キラー。去年は誰それと噂になった」と言うセリフがありました。多分彼女は学校の先生をしながら金づるを探していたのでは。そして教え子の親が社長だと知り、近づいたと。しかし、学校の先生をしながらアパレルショップのデザイナー・オーナーになんてなれんの?学校を退職したという描写もなかったけど。
また、途中で過去の事件を生徒にばらされてトイレで嘔吐する場面もありましたが、そこは悪の心で感情を押し殺すべきでは。どれだけショックだったり憎悪を抱いたとしても、他人がいる前では顔に出さない。一人になった時に復讐を誓い、亮司に依頼する、という流れでは?

■車の事故について
社長の車に亮司が細工をして、車は事故を起こす。身を挺して自分を救ってくれた雪穂に感謝し、社長は結婚を決意する。
ここの、車が走行している場面と亮司が喫茶店の女マスターと情事を交わす場面が交互に描かれる演出は良いと思いました。
しかし、この事故はいくら何でもリスク高すぎやしませんか?
ちょっとその辺にぶつかって止まるだけかもしれないし、谷底に落ちて自分もろとも死んでしまうかもしれない。ブレーキオイルを漏らす細工ではなく、煙を出す装置と、社長のシートベルトが外れないような細工でよかったのでは。

■レイプについて
この作品は幼い雪穂が大人にレイプされるというトラウマが、彼女の人格形成に大きく影響しています。
だから彼女は自分を邪魔する女性は亮司にレイプさせ(未遂でよい)、同じような傷を負わせ、黙らせます。高校時代の同級生、大学時代の友達、旦那の妹(韓国版では連れ子)。しかし、映画版では時間がないので省かれてしまっています。刑事のセリフで「彼女の周りでは知り合いが何人も暴行被害を受けている」などの描写があればよかったのに。

■ラストシーンについて
14年前のあの事件以来、会わないと決めた二人ですが、高校時代につかず離れずの距離で亮司がポラロイドをセルフタイマーにセットする。そしてちょっと離れた雪穂と背中合わせのツーショットを撮るシーンがラスト。
この場面はいいシーンですが、ラストに入れるべきだったか?
途中で亮司がこの写真を見る場面があるのですが、そこでこのシーンを入れればいいのでは?そしてラストで亮司が亡くなる場面で懐からこの写真が出てくる(刑事が服から見つける)、というのはどうでしょうか。
また、この高校時代のシーンでは雪穂は髪をひとつに束ねて女学生らしくなっていましたが、亮司は現在と変わらず。もっと髪の毛短くしてダサい感じにして学生っぽくするべきなのに。

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