やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「夜行観覧車」 湊かなえ 感想

もう、「嫌ミス」やめて


現在ドラマで放送中の「夜行観覧車」の原作を読みました。ドラマは見ておりません。
私は湊作品は「告白」ではまり、それ以降文庫になる本はほぼ読んでいます。湊かなえ作品の特徴は「一人称での独白の語り口」「人間の悪い部分(分かりやすい「殺人」とかではなく、私たち一般人が持っている他人への嫉妬や独りよがりの思い込みなど)を描くので読後感が悪い」などがあります。
特に後者は、読後感が悪くなるミステリだから「嫌ミス」と呼ばれているそうです。


今回の作品は三人称でしたが、読後感の悪さは相変わらずありました。
とは言っても救いようのないラストということではなく、登場人物が「嫌」なのです。特に遠藤家の娘彩花と、高橋良幸の彼女明里。
明里はワンポイントでしか登場しないのでまだ我慢できますが、それにしても言動が意味不明。こんな彼女怖い。
彩花は物語を通して不愉快続き。何でこんなに不愉快なんだ!なのにラストで格好よく「私たちは『坂道病』」なんてまとめのセリフを言うなんて。お前が言うな!


キーパーソンである小島さと子は、事件そのものには関係ありませんが、この「ひばりヶ丘」の「象徴」のような存在なのですね。


事件の真相である「誰が殺したのか」「なぜ殺したのか」についてはあっさりしすぎ。この物語はここが芯ではなく、家族の問題はどんな家庭にもあるよ、幸せそうに見える家族も内側では当事者にしかわからない問題もあるよ、ということが芯だからなのかな。
それでも、家族再生の部分の筆が弱いと思います。ここはもっと言葉を費やして書いて欲しかったです。この事件を通して遠藤家はどう変わったのか、戻ったのか、それぞれはどういう決意・結論を得たのか、など。


湊さんの作品は確かに面白いのですが、やはり読んでいて嫌な気持ちになるので、ちょっと熱が冷め気味です。何で金出して嫌な気持ちにならなければならないんだ。いや、バッドエンディングでも面白い作品はたくさんありますが、そういう「考えさせる面白さ」ではなく、「人間の毒に当てられた」感じが嫌なのです。


ドラマは見ていませんが、原作以上にドロドロで濃密な感じになっているらしいですね。これ以上毒気に当たったら胸焼けでは済まないな!
次回はハッピーエンドの作品に当たりたいです。「人間ていいな」的な。


他の湊さん作品のエントリ↓
「贖罪」湊かなえ 感想 - やりやすいことから少しずつ
「往復書簡」湊かなえ 感想 - やりやすいことから少しずつ
「少女」湊かなえ 感想 - やりやすいことから少しずつ


夜行観覧車 (双葉文庫)

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夜行観覧車

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