やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「ダイ・ハード ラスト・デイ」 感想

そりゃ宣伝頑張らないわけだ


私がアクション映画に求めるものは「すごいアクション」だけです。素晴らしい演技とか素晴らしい脚本とかは求めていません。話の辻褄なんていいんです。すごいアクションさえ見せてくれればいいんです。


ダイ・ハード」の1作目は、それまでのアクション映画にありがちだった「マッチョな主人公が力技で敵をやっつける」と違い、「巻き込まれてしまった主人公が愚痴を言いながら知恵を使って敵をやっつける」ことがエポック・メイキングで、評価された部分です。
しかしそれも2作目以降は徐々に薄れ、4作目では単なる「お金をかけたアクション映画」に成り下がってしまいましたたが、それでも私にとっては十分にアクション映画として楽しめました。
それが、今作ではその私の低いハードルすら、卓越したリンボーダンスによりくぐられてしまいました。


この先、ネタバレと文句がありますので注意。









息子がロシアで逮捕されたのでロシアに行ったら爆発があり、理由も何も分からないけど、とりあえず追いかけるジョン(ブルース・ウイリス)。追いかける際の車はもちろん強奪で調達です。
そのまま関係ないのに追いかけるジョン。周りの車を潰そうが気にも止めません。途中、最初の車がおしゃかになったので、次の車を求めるため、車道に急に飛び出して無理やり停止させます。当然運転手は怒って車から飛び出してきますが、ジョンはその運転手を殴って車を奪います。当たり屋以上(以下?)のチンピラぶり。さらに「ロシア語喋るな」と無茶苦茶なことを言います。さすがアメリカ人!英語以外は認めないぜ!


えー、ここから先は突っ込む気も失せるようなトンデモ映画になりますので注意。


紆余曲折あって、いよいよクライマックス。舞台はあの「チェルノブイリ」です。作業員は皆防護服に身を包んでいますが、ジョン親子は革ジャンを着るだけ。
敵も負けてはいません。奥の部屋を開けると「昔の放射能が残っているらしいな」だって。放射能って残り香みたいなもんだったっけ?さらに奥へ進むと放射能濃度が濃くなってきたため、「放射能を中和する液剤」を散布。放射能ってファブリーズで除去できるんだ。そして除去できたので(できねーよ!)皆防護服は脱ぎます。なぜなら、着ていると誰が誰か分からないから。
敵の真の狙いは「兵器用ウラン」。とても危険な物質です。でもそんなの関係ねえ。ジョン親子は銃を乱射し、手榴弾を爆破させます。ウランが拡散したら、ということは一切考えません。
敵も負けてられません。当然ですが銃の乱射にはきちんと銃の乱射で応戦。そしてヘリコプターで建物に突っ込みます。ウランが拡散したら、ということは一切考えません。
最終的に敵は全滅してこちらの親子は元気でめでたしめでたし。ウラン?そんなのあったっけ?空港で娘とスローモーションで抱き合えばオールOKなんでしょ?


どうですか、このシナリオ。いくら「アクション映画に脚本の妙は求めない」私であってもひどすぎると思うのです。
まず、ジョンの立ち位置がおかしい。「『ダイ・ハード』とは運悪く事件に巻き込まれる映画」だと思っていたのに、それが何もない。寅さんの夢オチとかヒロインに惚れるとか、それくらいこの作品には必要な基本ルールだと思っていたのに。
まあいい。そこは目をつぶろう。今作は巻き込まれるではなく、自分から事件に首を突っ込むんだな、と。しかし、それでもジョンは悪すぎます。
上にも書きましたが、周りに多大な被害を与えても罪悪感ゼロです。「サーセン」くらいあってもいいのに、「ロシア語喋るな」だもの。これがアメリカ人気質でしょうか。この辺、脚本家や監督は何も気にならなかったのでしょうか。アメリカ人気質だから気にならないのか。
ジョンが悪いのはこれだけではありません。すぐに「殺せ」「皆殺し」と言います。相手が何者かも分かっていない時点であっても。息子もその「人を見たら撃て」に従い、現れた人をすぐ撃ち殺します。この人、敵かこの施設の職員か分からないでしょ。何でもかんでも殺せばいいんじゃないよ。
そして放射能に対する大雑把すぎる表現。アメリカだってビキニ環礁とかスリーマイルとかあったでしょうに。


まあ、まだ目をつぶろう。だって「アクション映画に必要なのはすごいアクションだけ」なんだから。
しかし、それも全然ダメでした。
今回は前半のカーアクションとラストのヘリコプターのくだりくらいしかアクションらしいアクションはありませんでした。あとはひたすら銃を撃ちまくるだけ。それって全然アクションじゃないよ。普通、アクション映画は最初の5分で「つかみのアクション」をやるもんでしょ?何も起きない空港や飛行機の機内のシーン、いる?
また、ドキュメンタリーな効果を狙ったのか、カメラがわざと手持ちのブレを活かしたカメラワークになっているので、「遠くてよく見えない」か「ブレていてよく見えない」になっています。カメラのブレで「臨場感出ている感」出してるんじゃないよ。その臨場感をきちんとしたカメラワークで映せよ。


最後に、セリフや伏線について。
こういう映画は脚本自体はどうでもいいのですが、主人公たちの「粋なセリフ」は大切です。しかし、それも全然ありませんでした。細かい部分は忘れましたが、もっとうまいこと言える場面がいくつもあったのに、陳腐なセリフで全然うまくない。これは戸田奈津子のせい?それとも元の脚本のせい?
今作は98分という絞られた作品なのですが、非常に長く感じました。なぜかというと、無駄なシーンが多かったからです。ロシアに着いたばかりのタクシーのシーンは何の意味があるの?あのセリフのやりとりやあの運転手がその後に何か活きてくる伏線だと思っていたのですが、何もかすらない。一応「あの道は渋滞する」ことが伏線になっていましたが、それだけだったら「渋滞している→ジョンイライラ→耐え切れずに車を出る」くらいでいいのに、無駄なセリフをダラダラとやりやがって。


と文句だらけの作品でした。
こんなドル箱映画なのに何かあっさり公開されたなと思っていたのですがこういう訳だったのですね。
同じく「金をかけただけのアクション映画」である「ミッションインポッシブル」シリーズ(2作目以降)は、毎回「これぞアクション映画」を作ってくれるのに、こっちはどうした。
このままでは終われないので、ラストにもう一度花火上げてください。息子はいらないのでジョンだけで何とか頑張れ。



映画『ダイ・ハード/ラスト・デイ』本予告編