読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「40代、職業・ロックミュージシャン」 大槻ケンヂ 感想

書籍

昔、ロックは若者の音楽でした。ロックというジャンル自体がまだ若かったので、「年をとってもロック」というのは誰も想像できなかったのです。誰もその領域にたどり着いていなかったから。
それが、今ではおっさんのロックなんて当たり前ですよね。ロックは反逆という生き方ではとうになく、単なる音楽ジャンルなので。それどころかロック自体がおっさんの音楽になりつつすらあります。
現在はこの問題はHIPHOPが抱えています。HIPHOPもロックと同じく音楽ジャンルに過ぎないので年をとってもラップすることは可能ですが、ラップは「早口でリズミカルにしゃべる」というスキルが要求されるので、ロックとは違う着地を見せてくれるかもしれません。


この本の著者、大槻ケンヂももう46歳。おっさんどころかアラフィフです。そんなオーケンが同じく40オーバーのミュージシャンと対談した今作。
登場するミュージシャンもROLLY、ダイヤモンド☆ユカイ、寺田恵子中村あゆみサンプラザ中野くん森重樹一などのまあまあ知られているメンツから、水戸華之介、ナオキ、永島浩之、宮原学、冠徹弥などの一般的にはあまりメジャーではないメンツまで多種多様(個人的振り分けですみません)。ただ、現在第一線で活躍している人はあまりいません。週刊アスキーでの連載なのでしょうがないけど。


で、40歳を過ぎてのロック、40歳を過ぎての音楽ライフです。
昔はスターだった人が個人でやるようになったら大変だった話、大スターにはなっていないけどまだ音楽を続けている理由、この年になって分かる子育て・健康の話など、普段の音楽雑誌では聞けない話が満載でした。
いくつか紹介します。


二井原実ラウドネス、X・Y・Z→A他)

40代で初めてメンバー車を運転してライブハウス回ったときは「まさかオレ、この年でこんなことするとは思っていなかった!」っていうのはあったけどね。
いやー、やっぱり時代っていうのは流れていくんだっていうのを目の当たりにして、ちょっと辛い思いをしたことはありましたけどね。
はじめの10回くらいは、結構衝撃的なのよ。「お客さんが2列しかいないぜ!」とか。

二井原さんって、ラウドネスですよ!そしてX・Y・Z→Aはそれに筋少爆風スランプのメンバーですよ。それがこれ。時代は無情だ。
で、そこでどうしたかというと

じゃあどうしようか、ってなったときに、「挑もう!」ってことになってね。
そのとき、ミュージシャンとしての大事な部分が純化した、みたいなね。

こう思えて、実践できるかが分かれ道な気がしますね。売れたいのか音楽が好きなのか。優先順位はどっちだ。


中村あゆみ
12歳の女の子の母である中村あゆみさん。当然子育て・しつけ・教育の話になります。ラストでは中村さんの生き方哲学を披露。

私の三原則っていうのがあって、ステージでは限りなくしなやかにかっこよく。プライベートの女性としては素晴らしくエレガントに。でも、子どもの前では最高の肝っ玉母さんでいようって。

素晴らしい!


水戸華之介
知っています?アンジーです。「天井裏から愛を込めて」です。

アンジー - 天井裏から愛を込めて - YouTube
そんな水戸さんが格差社会に物申す。

(大槻)「オレもいつかはのし上がってやる!て思う層は普通はそれこそARBとか聴くんですよ。
(水戸)なるほどね。でも、ARBの時代よりも今の方がもっとエネルギーをスポイルされちゃってるから。平たく言うと余裕がないんだよ。だから、テレビからカンタンに流れてくる倖田來未とかB'zとかを「音楽だ」って思ったところから、サブに行く余裕がなくなったんだよ。
(大槻)人間ってある程度の貧乏で、頑張ればそこから這い上がれるかもしれないってときは浜省とかARBとかルサンチマン系の音楽を聴くんですよ!
(水戸)お、それが言いたかった!
(大槻)ところが、今はもっときついから、倖田來未さんとかジャニーズとか、簡単な夢の世界に浸りたいんだよ。魂転がしたり(ARBですね)したくなくなるわけですよ!「マネー!」(浜省ですね)って言ったところで、掴むマネーがないわけだから(笑)。だからこそ、ぱっと見てきらびやかで夢の溢れたものを求めてしまう。
(水戸)今は夢さえ持てない。まさに「希望格差社会」だよね。

まさにおっさんの居酒屋談義。ニコ動とかボカロとかPとか知らないのかな。

ARB / 魂こがして(ライヴ帝国リクエスト第1位)初期ARB - YouTube

浜田省吾 - MONEY - YouTube


KONTA
バービーボーイズです。あのハスキーボイスです。何と彼は既に52歳!この歳で彼が思うことは。

もっと快感原則に忠実になる。快感原則って何かというと、誤解されるのは「楽しみを追求するとか、快楽を追求する」っていうふうに響くでしょ?それは20代・30代とかの若い人にとってなんだよ。オレもそうだったから分かるんだけど。
でも違うんだよ。快感原則って「不愉快な状態にならないところに自分を置きたい」っていうことなんだよ。で、不愉快な状態に置かなければ、何をやってもより楽しいってことが分かる。
だから、こっちには行かないとか、選択の仕方っていうのがより賢くなる。不要な方を捨てやすくなる。


これ以外に多いのは「健康が大事」「真面目に仕事をすることが大事」という話。ミュージシャンは今でも夢のある商売ですが、でも長く続けるにはこのような「当たり前のことをきちんとやり続ける」しかないんですね。もうミュージシャンに限った話ではないですね。
音楽が好きであればこういうことにきちんと向き合って続けることができるのでしょうが、「そういうことが嫌だからミュージシャンになったのに」という人は退場するしかない。でも、その次の人生でも同じ壁はあるのです。


オーケンの話で面白かったものをいくつか。

(大槻)オレ何も楽器できないから44歳の誕生日にギターを買いまして、やっと始めたんですよ。
SION)でもキミは曲書いているじゃない?あれどうしてんの?
(大槻)あれ、アカペラです。
SION)え、それをみんなが一生懸命コードつけてくの?
(大槻)そうですよ。ラララ~って俺が歌いながら。
SION)な、なんちゅうバンマスだ(笑)!ひどいなあ!
(大槻)それで、最近になって自分の歌のコード譜を書いてもらって「あ、オレの曲ってEマイナーってやつなのか」って分かったり。
SION)奇跡の人間だ!

(大槻)オレ、税金とか年金とか全然分かんないんだけど、そういう基礎知識って、何で学校で教えないの?物理の時間とかよりも、年金の仕組みや雇用のシステムを教えろっての(笑)。オレ、ニートとか、大槻ケンヂに代表されるような世の中のことを全く知らない「大人赤ちゃん」は何でこんなにいるかっていうのは、人のせいにしますが(笑)、まず義務教育できちんと教えなかったからだと思うんですよ!

ザ・人のせい!確かにそうも思いますが。


前作「サブカルで食う」も同じ着地でしたが、やはりどの商売も楽ではありません。トップに立っている人こそ謙虚でいい人だし、金を稼いでいる人こそ金でないモチベーションで働いているんだから。
オーケンエントリ→やりやすいことから少しずつ




サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法

サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法