やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「R100」 感想

もう、さすがに言ってもいいんじゃない?


(ネタバレあります)
「R100」を見ました。
私はダウンタウン直撃世代でありまして、いわゆる「信者」です。今はテレビもほとんど見ていませんが、それでもダウンタウン、松本人志は別格な存在です。
なので、今までの作品も全て映画館で見てきました。そして毎回「つまらなかった」「分からなかった」という感想を抱いて劇場を出ています。


つまらないという予想は、今までの作品の出来もそうですが、出演俳優さんのコメントに全く熱がないから、というのもありました。
どのインタビューを読んでも「面白いですよ!」や「この作品に出演してよかった!」という情熱が伝わってこない。映画の宣伝という、最も依怙贔屓をしなければならない場面でこれだもん。
松尾スズキTwitterを見ていても一切積極的な宣伝はない。同じ演出家として、どう思っていたのでしょうか。


というわけで、心のハードルは目一杯下げて劇場へ向かいました。
土曜日なのに客は5人。いや、お客の数は関係ない。面白さは自分の心が決めるのだ。
でも、結果は「つまらなかった!」。というか、「全然分からなかった!」でした。


大日本人」はラストだけアレでしたが、今となって思えばあそこを楽しめれば面白かった作品でした。途中までは面白かったし。
「しんぼる」は全然面白くなかったですが、でも分かりやすい笑いをやろうとしているのは分かった。ラストは分からなかったけど。
さや侍」は面白くなかったですが、やろうとしていることは分かった。野見さんの使い方は逆だと思っていますが。


と、つまらないながらも、分からないながらも、けなしながらも付いてきた私ですが、さすがに今回はさじを投げちゃいました。
映画の推進力がない。見ている私たちが「この映画は今どうなっていて、この先どうなるのか」が全く分からない。もちろん先が見えないからこその「映画」ですが、それも「主人公が謎に巻き込まれている(見ている私たちも一緒に謎に翻弄される)」とか「主人公が謎に立ち向かっている(見ている私たちも一緒に謎を解明しようとする)」など、映画が「どっちに向かっているか」は提示しながら進むものですが、それすらもないので立ち位置が分からない。
振り返ってみれば「自分からSMクラブへ行き、プレイを楽しむ」という状態から「プライバシーにまで浸食してくる」恐怖におののき、「組織に立ち向かう」という流れなのでしょうが、そのメリハリも転換もないのでドキドキもカタルシスも感じられない。
後半、渡部篤郎がバイクで登場したシーンから映画のテイストが変わり、そこは面白かったのですが、オチが全然理解も納得もできないし、面白くない。


そして一番許せないのが、この映画は100歳を超えた映画監督が作った作品だという「メタ映画」だったのです。そしてこのメタ構造が、作品に対して何もプラスに作用していないのです。じゃあ何のためにこんな構造にしたかというと、言い訳のためです。
分からないよ、つまらないよ、シナリオがおかしいよ、という私たちの意見は全てメタ構造に入っており、「君たちがそんなこと言うのは分かっているよ」という言い訳になっています。
私の嫌いな「(笑)」や「www」と同じです。スベった自分を先回りツッコミしないでください。ツッコミ(評価)するのは私たちです。



それでも、まだ理解しようとしてくれる人もいます。
「自分」と作品について:『R100』 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな
2013-10-06 - ゾンビ、カンフー、ロックンロール
この映画、「3.11」を踏まえた作品なの?地震や放射能を使わずに震災後の日本を描いた作品なの?私には松本さんがそこまで考えて作ったとはとても思えません。それならインタビューで少しくらいはそのことについて触れてもいいのに、寡聞ながら全く目にすることはありませんでした。
ここまで読み取れる読解力は素晴らしいですが、私には単に「松本がそこまで考えて暗喩表現できるわけないじゃん」と思ってしまいました。


松本さんは「映画を壊したい」と言っていますが、それは映画を作れる人が言うセリフです。
ピカソの絵は誰でも描けそうですが、誰も描けません。それは、上手い絵が描ける基礎体力があるからです。面白いボケを言える人は常識が分かっている人です。常識とボケの距離感が分かっているから。
これらは全て松本さんの発言です。
まず、普通の映画が撮れるようになってから壊しに掛かってください。現状はただの「映画のできそこない」です。


いい加減、高須光聖・長谷川朝二・倉本美津留とつるむのはやめろ。制作は岡本昭彦、制作総指揮は白岩久弥とお笑いの身内で固めるのもやめろ。映画が分かっている、才能のある人と一緒にやってください。
北野武には森昌行が、宮崎駿には鈴木敏夫がいます。松本人志にもそういう人がいるべきです。こと映画に関しては。


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松本人志最新作「R100」発表! - やりやすいことから少しずつ


映画『R100』予告編 - YouTube