やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」 感想

思てたのんと違う(©笑い飯西田)


(ネタバレあります)
前作「キック・アス」がとても面白く、首を長くして待っていた続編。
前作のエントリ→映画「キックアス」 感想 - やりやすいことから少しずつ
公式HP→『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』大ヒット上映中!


全体の感想としては、「コレジャナイ」。
前作はアメコミに対する愛と批評があり、それがパロディとカウンターという形で作品になっていたのですが、今回はマジでシリアスな「普通・王道のアメコミ作品」になっています。同じ目線・立ち位置になってどうすんだ。


そもそも、オタクで童貞でスクールカーストでも下位、さらに超人的な能力はもちろん一般人に比べても劣る体力・能力なのに、勇気と男気のみでヒーローになってみる、という主人公像が新しくて面白かったのに、今回は冒頭から肉体改造・戦闘訓練により、普通に強くなっちゃってる。
途中から学校でも自信満々で歩き、女子生徒からもモテ目線で見られています。さらに、自警団チームの女性とセックス三昧。オタクで非モテの主人公が童貞喪失だよ、こんな重大な人生の転換点を、さらっと描いてしまうのは間違っている!監督は童貞こじらせの気持ちが分かってないリア充野郎だな。大根仁三浦大輔だったらこんな描き方はしないはずだ。
あと、ラストのミンディのツンデレシーンを考えれば、セックスはまだしない方がいいよ!


もう一方の主人公、ヒット・ガールであるミンディも、純粋殺し屋マシーンから普通の女の子になる段階で悩みます。これはまあしょうがないかな、と思います。もしお父さんが生きていたらあのままの性格で成長したかもしれませんが、普通の人に育てられたら、そりゃ軌道修正させられますよね。
でも、ヒット・ガールはあの突き抜けたキャラが魅力なので、学校でも浮きまくりでそれでも全く意に介さない、という方がよかったかも。
同級生のイジメなどに悩んだミンディですが、最後は「ゲロゲリマシーン」で大報復。ひどい描写でしたが、私は大笑いしながら見ていました。

安達哲の「お天気お姉さん」を思い出した。生放送中に盛大に○○をまき散らす女子アナ。


敵役のレッド・ミスト(今作は「マザー・ファッカー」と名乗る)は、前作と立場を逆にしていますが、ヘタレでへなちょこなキャラは一貫していていい。白くてぷよついた身体とか、常に半開きな口が「あほボン感」が出ていて、いい。
敵チームの中でのボスキャラ「マザー・ロシア」が、強すぎ人間味ゼロで、それもいい。神鳥忍よりも明らかに強い。それどころか、ランボーとかT-1000とかプレデターとか、その辺と対等な感じ。
『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』大ヒット上映中!
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他にも敵チームにはいろいろキャラがいるのですが、彼女(と呼んでいいのか)の力とキャラが強すぎて、他のキャラはほとんど活躍しません。


ストーリーに戻る。
前作はヒット・ガールという荒唐無稽なキャラとケレン味たっぷりの演出が面白かったのに、今作のようにマジでシリアスな感じにしちゃうと「荒唐無稽」が「リアリティ無し」になっちゃうので、それが残念でした。
「ヒーローがいるから悪が出てくる」「復讐の連鎖」という主人公側の苦悩も最近のアメコミにありがちな流れですが、それに対して「キック・アス」なりの回答や落としどころがあればよかったのですが、特に目新しいものはなし。じゃあ、「キック・アス」でやる必要ないじゃん。
後半で主人公の父親が殺されてしまうのですが、ここは半殺しくらいにしておけばよかったのに。見ながら「えー、殺しちゃうの。マジじゃん」と思ってしまった。
ラストの戦いでヒット・ガールがドーピングで覚醒した後の無双っぷりがもっと見たかった。マザー・ロシアに対してガラス片でぐさぐさやりますが、彼女はそんなんで倒れるかな?もっと殺陣を続けて打ち勝って欲しかった。「喧嘩商売」の煉獄みたいに。
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(この漫画だとドーピングしているのは相手ですが)
キック・アスVSマザー・ファッカーは、普通に戦えば鍛えているキック・アスが勝ってしまうので、マザー・ファッカー側にも何か武器か特技を持たせて欲しかった。主人公がピンチになる場面も決定的な一撃もなし。天窓が割れて落ちるだけ。うーん、物足りない。


演出について。
今回、アクションシーンが面白くない。前作は「マトリックス」「ウォンテッド」の流れを汲むカメラワークだったのに、今回はその辺の斬新さが見えませんでした。後半の車でのアクションシーンは良かったけど、たまに「ブルーバックで撮ってるな」という感じが分かってしまい、ちょっと冷めた。
あと、Fワードを始めとした汚い台詞はこれでもかというくらい出てくるのですが、ただ下品なだけで、オモシロにつながっていない部分が多かったです。冒頭、コスチュームのジッパーを開けようとしているのをオナニーに勘違いされる場面がありましたが、ああいうオモシロをもっと見たかったです。「ゲロゲリマシーン」は面白かったけど。


結論。
餅は餅屋。この作品がなぜ評価されたかを考えて、続編を作って欲しかったです。監督が交代したからなのかな。
でも、この作品単体として見れば、新しい切り口のアメコミ作品として高評価する人もいると思います。私は前作のルサンチマン・イケてない高校生目線で見てしまうので、今作はいまいち乗り切れませんでした。


イケてない目線での傑作「ボーイズ・オン・ザ・ラン

映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』予告編 - YouTube