やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「ゴーン・ガール」 感想

カップルで見てはいけない


デヴィッド・フィンチャー監督最新作「ゴーン・ガール」を見てきました。前評判がとてもよく、期待して見たのですが、期待に違わぬ傑作でした!原作は未読です。
公式HP↓

映画『ゴーン・ガール』オフィシャルサイト
ウィキペディアにはストーリー全部載っているので未見の人は見ない方がいいです。


(以下、ネタバレも含みます)


本作については「ネタバレ厳禁!」というフレーズをよく見ますが、これは「トリックが」「どんでん返しが」という意味でのネタバレを危惧しているわけではありません。
奥さんの失踪の真相、その犯人については物語の半ばで明らかになります。このお話はそこでは終わりません。むしろその後の方が怖い。


結婚記念日に奥さん(エイミー)が失踪。室内には争った跡があり、事件性が疑われる。
情報提供を求めるために記者会見を開くのですが、その結果旦那さん(ニック)は有名人になり、奥さんの両親の尽力のおかげ(せい?)で報道は過熱し、いつしかニックが疑われるようになります。
(このご両親、専用HPを開設したりポスター作ったりボランティア集めたり集会開いたりするのです。やりすぎで怖い!)
この流れ、とっても怖い。不用意にほほ笑んだその一瞬を切り取られ、「この非常時に見知らぬ女とツーショットで笑顔なんて」とか、「双子の妹といつも一緒だけど、何だか関係が近すぎない?」とか、報道から勝手にその人の印象を決められて「あいつが犯人だ」と決めつけられる空気。
事実よりも「なんか嫌な感じ」の方が優先される社会。
その後弁護士の力を借りてインタビューを使って好印象に変えるのも、同じこと。事実よりも「実はいい人かも」が優先されるのです。


事件はエイミーの自作自演だったのですが、逃げる先で単純な暴力によりその計画はご破算になります。あれだけ緻密に綿密に練られたプランも、カツアゲには敵わない。暴力って恐ろしい。
それでもくじけないエイミーはあれやこれやでニックの元に戻ってきます。
これで世間は「かわいそうな夫婦」「危機を脱した夫婦」「奇跡の夫婦」となります。兄妹で経営していたバーはフランチャイズ化、事件の書籍化・映画化。世間から見れば成功したといえるでしょう。


しかし、全てを知ってしまったニックは、もう元には戻れません。離婚を申し込みますが、エイミーは却下。今、世間が望むようにふるまうことを要求します。
そんなことには耐えられないニックに対し、「それが結婚よ」と言うエイミー。かつてこんなに結婚の本質を怖く言い当てたセリフがあったでしょうか!
さらにその後の妊娠も、男はキンタマが縮み上がる事実でしょうね。
ラスト、夫婦揃ってのインタビューでエイミーに促され「僕たち、子供を授かったんです」と笑顔で言うニック。こーわーいー!


この映画、夫婦やカップルで見たらその後どんな空気になるのでしょうか。夫婦はこの「結婚の現実」を知っているので笑って見れるかもしれません。しかし、カップルだったらどうなのでしょうか。「結婚したらこういう風に変わっちゃうのかな」などと考えてしまうかもしれません。
※「結婚の現実」といっても、ほんの一側面を拡大したものだし、あくまで「この夫婦のお話では」ということですので、カップルで見ても別れないでね!


フィンチャー監督の演出や物語の進め方も素晴らしいのですが、それをきちんと語れる知識と言葉がない。
俳優はみな素晴らしいです。
ニックのベン・アフレック。いつもぼーっとしている間抜け顔が、今作にぴたりとはまっています。
エイミーのロザムンド・パイク。私、彼女のことは知りませんでしたが、とてもよかったです。ラブラブの頃のかわいい顔、倦怠期の疲れた顔、逃亡しているときの気を抜いたすっぴん顔、戻った後の美人顔。全然違うし、全て「その通り!」の顔になっています。
(途中何度か脱ぐのですが、乳首は出ないんです。何でだ!)
弁護士のライラー・ペリーもよかった。頭が良くて余裕がある。
あと、ニックの浮気相手のエミリー・ラタイコウスキーがめちゃめちゃよかった!アホでかわいくてエロい。こちらはおっぱい出ます。


これは、ミステリーではなくスリラー映画ですね。
映画の冒頭とラストにエイミーが振り返る顔が出るのですが、この表情がいい。「結婚とは相手が何を考えているのか、望んでいるのかを知ることだ(この辺のニュアンス、ちょっと違うかも。覚えている人がいたら教えてください!)」というニックのモノローグとともに振り返るエイミー。
冒頭では「そうだよな。それって難しいよな」という軽い感じで見ていたのが、ラストでは「あなた、分かるでしょ?」と強要・威圧されているように見えました。
同じショットなのに!


素晴らしかったです。全部が分かった状態でもう一度見たい。



映画『ゴーン・ガール』予告編 - YouTube