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映画「クロニクル」 感想

スターがいないと公開もできんのか


映画「クロニクル」をレンタルで見ました。この作品、知っていますか?知らないですよね。だって日本では公開はされましたが、ほんのわずかな期間と館数の公開だったんだもの。
私も知らなかったのですが、この方のブログで絶賛していたので見たくなり、レンタルしてきました。

POVが持つ弱点を克服した大傑作!『Chronicle(クロニクル)』 - くりごはんが嫌い
というわけで期待して見たのですが、面白かった!


そして他の人の感想も探していたら、また面白いブログを見つけた。

クロニクル(ネタバレ)|三角絞めでつかまえて
どちらのブログも数年前までいつもチェックしていたのですが、パソコンを買い替えてお気に入りがリセットされてから見ていなかった。久しぶりに読んだら今でも面白くてためになる。素晴らしい。


こういう、映画の見方を分かっている人のちゃんとした批評を読むと、私が書くことなんてもうなくなってしまうのですが、それでも自分の言葉で何か書こう。このブログは映画評論ブログではない、自分の備忘録だ。


見た人は誰もが思うでしょうが、「キャリー」であり「AKIRA」ですよね。超能力を持ったが故に起こる苦悩と暴走。
そしてPOVの撮影方法。POVとは主観カメラで撮影した映像です。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「クローバーフィールド」「パラノーマル・アクティビティ」とかが有名ですね。

【映画】ブレア・ウィッチ・プロジェクト 日本国劇場予告 - YouTube

クローバーフィールド 予告編 - YouTube

「パラノーマル・アクティビティ」予告編 - YouTube
こういうPOVの手法は、「パニックの最中なのに対象物捉えすぎだろ」といった批判や、基本1カメショットになるのでアングルやカットが弱くなってしまうという弱点がありましたが、この作品は「超能力を記録する」という目的があるので不自然じゃないし、途中からは「超能力でカメラを浮かせて撮る」という手法になっているので、アングルの限界からも自由になっています。逆にあり得ないカメラアングルやアングルの移動が行われていて、より効果的に作用しています。実際、どうやって撮ったんだろうと思うほどです。
ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「クローバーフィールド」で感じたPOVのイライラ(手持ちカメラぶれるから酔う)を「超能力でカメラを浮かせる」という解決方法。素晴らしい。


ただ、やはりそもそもの「何でずっとカメラ撮ってるの?」という疑問は解消されません。超能力の記録以外は普通に三人称視点でいいのでは?
一人称を維持するために主人公アンドリューがいないときは別の「ブログのためにずっと記録している女性」を登場させていますが、彼女は本編やアンドリューに直接関係ないので、「カメラを撮るために」登場させているだけに感じました。


物語は「青春学園もの+超能力もの」という少年マンガの王道パターンです。超能力を手に入れてから「これは筋肉みたいなもので、急に使うと力尽きる。鍛えることにより強くなる」という超能力の特性と「人には使わない、人の見ているところでは使わない」という仲間内のルールが提示されます。うん、こういう「枠」は必要ですね。そうしないと無秩序になってしまうから。
この超能力の向上度合いもきちんと順序立てて展開していくので、違和感がなかったです。上手い。


でも、高校生男子がこんな力を持ってしまったら、もっと「モテたい」「エロに活用したい」に向かってしまうと思うのですが、そうはならないんですね。基本はおふざけと自分たちだけで楽しむ。パンチラ誘発シーンはありましたが、エロ要素はそれくらい。
(予告編には女性のハダカもありましたが、あれは超能力のおかげではない)
私だったらモテとエロにこの力を注ぎ込んでしまうな。


内気でいじめられっ子な少年が超能力を手に入れてしまうが故に暴走して破綻してしまうというのはありがちなストーリーですが、悲惨な家庭環境(母親は難病で親父はアル中でDV)のため、彼に肩入れして見てしまうので、「可哀想だな、そりゃ暴走もしちゃうよな」と同情目線で見ることができます。この辺は設定が上手い。
母親が亡くなった直後に大怪我をした息子に対して「俺に謝れ」という親父。そりゃアンドリューでなくても切れるわ。


クライマックスの超能力大暴走シーンはいいですね。「これぞ!」というか「そう、こういう映像を見たかったんだ!」というシーンがてんこ盛り。「俺、AKIRA好きなんだ!」という監督の愛も溢れています。
このシーンは一般市民のカメラ、警察のカメラ、街中の監視カメラなどから映されています。上手い。


ただ、クライマックスがこうなるのは当然として、であればそれに対抗する部分ももう少し用意しておけばよかったのに、とも思いました。
今作ではアンドリューのいとこであるマットがその役になるのですが、アンドリューを危ういと思うとか再三暴走をたしなめるとかの描写があれば、彼が暴走した時に「恐れていたことが。あいつを止められるのは俺しかいない」となったのにな、とも思いました。


と注文もいろいろ書きましたが、面白かったです。
この作品が全国規模で劇場公開されないのは客を呼べるスターがいないからでしょうが、それでももっと宣伝方法あったと思うんだけどなあ。「全米No.1」も今ではあまり効果ないのかな。予告編流すだけだと「いわゆるよくある超能力ものね」で終わっちゃうのかな。芸能人や文化人に見せまくって番組やブログやTwitterで拡散させるのはどうか。
全て今さらですが、こういう面白い作品が埋もれていくのはもったいない。ぜひ見てほしいです。



映画「クロニクル」予告編 - YouTube