やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「ピクセル」 感想

日本でリメイクを!


映画「ピクセル」を見てきました。公式HP↓www.pixel-movie.jp
2D字幕と3D吹替えがありましたが、時間の都合上と3D料金を惜しんで2Dにしました。


宇宙船に積んだゲーム映像が宇宙人に宣戦布告と受け取られ、ゲームを仕掛けてくる。倒せるのは兵士でなくオタク。このアイデア、素晴らしいじゃない。面白そう!
しかし。うーん、発想はいいのにもっと何とかできなかったのか、というのが感想です。


まず、この映画の立ち位置がよく分からない。もちろんコメディなので大真面目に地球侵略・地球滅亡の危機というわけではないのでしょうが、その辺の切迫感が曖昧です。見ているこちらがどれくらいの緊張感を持ってこの危機を見ればいいのか。
兵士をオタクが鍛えるというところが面白いのでしょうが、それが実際の戦いに生かされない。最初は習った通りに攻略していくが、ボス戦で兵士では歯が立たなくなりオタクに助けを求めるとか、フリとオチが一致していればいいのにそれがないので面白くないしカタルシスもない。
そもそもセンチピード戦はただ撃つだけだからオタクより兵士の方が上手いでしょう。
次のパックマン戦も単なるカーチェイスだからオタクの必要性がない。というか、オタクがあんな運転できたらおかしいだろ。オタクの友達は免許さえ持ってなさそうなのに。
宇宙人が筐体を用意して、それを操作すると実際のゲームキャラも動くとか、それぞれのゲーム独自の攻略法によりクリアするとか、「ゲームが上手いこと」が必要な条件になっていないので、ずっと「別にこいつらじゃなくていいじゃん」と思っていました。


宇宙人側もゲームとして挑んでいるんだから、ゲームとして勝つ・攻略する・クリアする、をして欲しかったのです。「サマーウォーズ」のように。
パックマン戦で街中をパックマンと車が走っているところを徐々に真上から見せてそれがゲーム画面そっくりになっているとか、そういう「ゲームとしての快楽」が欲しいのです。


次に登場人物。
アダム・サンドラーはそもそも顔が生理的に受け付けない。ベン・ステイラーだったらよかったのにな。
顔のことは置いておきますが、キャラもよく分からない。ナードのままなのか、今は普通の社会人なのか(女性と普通に喋れるとか)。イケてる・イケてない具合が分からないので、たまにカッコいいセリフを言ってもどう受け止めていいのか分からないのです。幼なじみとはいえ、大統領と現在も親交のある男が冴えないダメな奴のはずがない。
その友達の男はマジのオタク(ギーク)ですが、面白くない。オタクならではの武器(深すぎる知識とか、マニアックなフィギュアとか)があってそれが戦いに生かされればいいのに何もない。陰謀論がキャラ設定としてあるのであれば、それが役立つ場面があっていいのに。
セリフも面白くない。兵士に向かって偉そうなことを言うシーンも、全く笑えませんでした。
ヒロインのミシェル・モナハンは、ずーっと「サンドラ・ブロックを若くしたような顔だな」と思いながら見ていましたが、この人「ミッション・インポッシブル」シリーズでイーサン・ハントの奥さん役だったのか!
酒飲んだ後しれっと車に乗ってホワイトハウス入っていいのか。この辺はスルーしますが、対宇宙人の兵器を作るのが早すぎ。


細かいツッコミはコメディ映画なので野暮ですが、そうであればもっと徹底的に笑わせてツッコミを無効化してほしいのに、ギャグが面白くないのでいろいろ気になってしまいます。
パックマン戦で岩谷さんが手をかじられるところなんて見ている全員がそうなるだろうと思った通りで、その際のセリフも演技も面白くない。ベタをやること自体は悪くないのですが、ベタには演技力が必要。「男はつらいよ」の寅さんのように。名人の落語のように。分かっているのに面白いというのは難しい。
もう一人のゲーマー、プラントが協力の条件としていろいろ条件を挙げますが、それも面白くない。デートの相手としてマーサ・スチュワートとセリーナ・ウイリアムズを要求しますが、その人選も分からない。この二人にした面白い理由があればいいのに、それもない。
あれ、そもそもギャグなんてこの映画あったかな?それすら怪しくなってきたな。
一応擁護するとすれば、ギャグは言語・文化によって違うので、翻訳により面白さは変わるということ。翻訳が上手くなかっただけかもしれません。


でも、音楽は良かったです。オープニングのチープ・トリック「サレンダー」でいきなりわくわくしました!
Cheap Trick - Surrender - Midnight Special - YouTube
チープ・トリックはクイーン・エアロスミスとともに日本ではアイドル的な人気のあったバンドですが、本国アメリカではマッチョさが足りなくて他のバンドに比べてバカにされていた記憶があります。そういうナードのはしりだったからこの映画のオープニングに使われたのかな、と思ったのですが実際のところはどうなのかな。
クイーンの「ウィーウィルロックユー」も使われていたし、ティアーズフォーフィアーズもあったので80年代ファンには楽しめたはず。
その他にも80年代ネタはたくさんあります。レーガン大統領やマドンナに擬した宇宙人が果たし状を読んだり、ホール&オーツ(に擬した宇宙人)が声明ビデオに登場したり。途中、ハマケンとグッチ裕三を足したような顔の人が出てきましたが、あればどういうネタだったのかな。


で、この作品、クリス・コロンバス監督なんですよ。「グレムリン」「グーニーズ」「ホームアローン」「ハリーポッターシリーズ」「ナイトミュージアム」などなど、大ヒット監督じゃないですか。なのに何でこんなことになってしまったんだ。
予告編などの宣伝でも全く監督の名前を見ることはありませんでしたが、どういう戦略だったのでしょう。監督の名前でもお客さん呼べそうなのにね。
Wikiを読むと、当初は中国のシーンもあったのですが、中国政府に配慮して全面カットになったそうです。こういうことがあったので全体のバランスが崩れてこんな着地になったのかな。ちなみに中国のシーンは万里の長城ディグダグが壊していくというもの。ああ、これ見たかった!


最後に。
この映画は日本が作るべきだったのだ!ということを声を大にして言いたい。
このテーマだったら、日本人の方が面白い展開を思いつくと思うんだけどなあ。エンディングでドット絵が動くのですが、これも本作のあらすじをなぞっているだけで、別に面白くない。この辺だって日本人の方が面白くしてくれそう。
この設定だけ借りて、日本でもう一度作ってくれないかな。まずはマンガからでもいいから。というか、こういうマンガ既にありそうだけどないのかな。


結論。
映画そのものの立ち位置の不明確さ、感情移入しにくいキャラ、不発のギャグ、「ゲーム攻略」というカタルシスの無さにより、私にははまりませんでした。



懐かしのパックマンやドンキーコング、ギャラガまで登場! 映画「ピクセル」予告編 - YouTube