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やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「オデッセイ」 感想

やるしかねえならやるしかねえよな


映画「オデッセイ」を見てきました。公式サイト↓
www.foxmovies-jp.com
ちなみにWikipediaにはラストまでストーリーが書いてあるので未見の人は読まないように。
まあでも、この物語はネタバレしても面白さは減りません。


(この先、ネタバレあります)


火星に独り取り残された乗組員が無事地球に帰還できるかというお話。もちろん、戻って来るのですよ。そんなことは織り込み済みで、「どうやって」を楽しむのがこの映画。
この作品、悪い人が一人もいないんですよ。みんな前向きで問題解決に挑む。一番いい人で前向きなのは主人公のワトリー(マット・デイモン)なのですが、彼はついこの前、同じく惑星に独りぼっちでしたよね、「インターステラー」で。同じ境遇ですが、性格は真逆。人間、気の持ちようで環境は変えられるのだ。いじわるばかりでは脱出できないぞ。
ese.hatenablog.com
インターステラー」についてはこちらを。私のエントリではマット・デイモンについては全く触れておりませんが。


火星に独りぼっち。次の有人探査機は4年後。あなたならどうしますか?100人中99人は諦めると思います。しかし、諦めないひとりがワトニーだったのです。
水と食料を作り出さなければならない。植物学者でもある彼は、その知識を使って生きるための課題をクリアしていきます。
地球との交信も、古い機械を復活させて可能にします。ひとつずつ、問題を知識と行動力によってクリアしていきます。


食料は作ることができた。地球との交信にも成功した。ここで終わったら物語は停滞します。もちろん映画ですのでそこでは終わりません。
補給ロケットは打ち上げに失敗し、食物を育てていたプラント工場も事故で破壊され、食糧の残りもわずかになってしまいます。
さあ、どうする。


ここでもこの作品の登場人物は諦めません。科学的で実現可能な、そして天才的な方法で帰還方法を発見します。
そしていよいよ宇宙船に戻るとき、ワトニーは自分の宇宙服の袖口を切って空気を噴射させて宇宙船に戻ります。この部分、「ゼログラビティ」を見てからというもの、怖いのです。宇宙では慣性の法則が100%働くので、掴めなければそこでおしまい。宇宙は神秘的な空間ではなく、ひとつ間違ったら即死亡のシャレのきかない容赦ない空間です。なので、空気を噴射させながら動いているときも船長の手を掴みそこなったときも、「危ない!死んじゃう!君たち『ゼログラビティ』見てないのか!」と思いながら見ていました。
「ゼログラビティ」についてはこちら↓
ese.hatenablog.com
というわけでハッピーエンド。めでたしめでたし。
あと、この作品は劇中歌も意味がある使われ方をしているそうです。私は見ていて分かりませんでしたが。歌詞の字幕も出ないし。
その辺についてはこちらを読んでください。歌詞についてだけでなく、文章自体も素晴らしいので。
www.machikado-creative.jp


というわけで面白かったのですが、いくつか気になる点などを。
●動機について
こういう映画の場合、「絶対に帰る」という動機として家族や恋人の存在がありますが、本作はそれがありません。ワトリーの家族関係は一切描かれません。途中船長に向けたメッセージで「母親に伝えてくれ」という部分はありましたが、家族が登場するシーンはありません。予告編だと家族愛もあるように見えますが、あれは編集のウソです。
なので、ここまで絶望の環境でも頑張れる動機が分からないのです。家族や恋人でなくても、犬でも好きな食べ物でも会いたい有名人でも何でもいいので、何か目標がないとここまで頑張れないのでは。
上にリンクを貼った田中さんのコラムの中では

宇宙飛行士というのは、「順序立ててものを考え、時間内に問題を解決する」プロなんですね。「悩み嘆く泣き叫ぶ」なんて対応は脳のプログラムから削除されてる人種なんですよ。

とありますが、それでも火星独りぼっちは辛すぎる環境でしょう。「悩んでいる場合ではない」とか「泣いても事態は変わらない」とか、何かしら主人公が腹くくるエピソードも欲しかったです。
主人公の背景を描かないのは何かしら理由があるはずですが、私はそれを読み取れませんでした。


●中国の援助
最初の補給機の打ち上げに失敗した後中国が援助してくれるのですが、なぜ中国?
これはハリウッドが中国に媚びているわけではなく原作がそうだったからというのが理由だそうですが、そうであっても原作通りである必要はないので、やはり中国にした理由として「中国市場に対する配慮」があったのではないでしょうか。
この作品が10年前に作られていたらこの協力してくれる国は中国でなくロシアだったでしょう。冷戦後、ロシアはもはや敵国ではないというメッセージとして描かれていたかもしれません。
実際中国が協力するにしても最高指導者の許可は必要なので、そうなるとこれはアメリカに対する大きな貸しになります。その辺の政治的要素は一切描かれていないのが、ちょっと不自然に感じました。
これが日本だったら「属国だから当たり前だろ」と思えるので気にならないのですが。


●事前に到着している補給機
火星探索計画はスケジュールがあって、次の有人飛行は4年後。しかし補給機は先に飛ばしてある。結果、ワトリーはそれに乗って火星から脱出するのですが、4年後のためにもう補給機があるの?早すぎない?
この辺は大筋とあまり関係ありませんが、個人的に気になりました。


●火星の重力
火星では皆さん普通に行動していましたが、重力ってどうなっているの?と思いながら見ていました。
調べてみると、地球の40%ほどらしい。じゃあ、もう少しふわふわ動くものじゃない?宇宙服に地球と同じ感覚で動けるような重力調整装置が働いているのかな?


●髭とか髪とか体つきとか
火星独りぼっちから数日は細かく描かれていますが、髭生えません。毎日剃っているの?誰も見ていないのに。
「独りぼっちでも規律を保つために日常と同じ行動をする」ためなのかもしれませんが、それにしてもそんなところまで気が回るのはもう少し後でしょう。そのくせ後半では髪も髭もぼうぼうだったし。
で、物語後半で筋肉が落ちて痩せたワトリーが登場していましたが、あの身体は別人ですよね。ボディ・ダブルというやつ。髪の毛を拭いたり宇宙服を着たりする動作で顔が分からないようにしていましたが、気になってしまいました。クリスチャン・ベイル鈴木亮平みたいな肉体改造は難しいからしょうがないけど。


というわけで、いい作品で面白かったのですが、動機やテーマの部分が私には見えなかったので、なかなか言葉が出ない作品でした。と言いながら3,000字以上も書いているわけですが。
まるで美女とエッチできる機会に恵まれたのに息子が機能しないような感じ。全然違うぞ。


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映画『オデッセイ 』予告編
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