やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「フィフス・ウェイブ」 感想

予告編が間違っているのか


(ネタバレあります)
映画「フィフス・ウェイブ」を見てきました。
公式サイト↓
www.5thwave.jp
こういう地球崩壊もの、宇宙人襲来もの、好きなんです。どの映画もラストはぐだぐだになることが多いのですが、それでいいんです。どれだけ地球がめちゃめちゃになるか、どれだけ宇宙人の圧倒的な力で地球人が壊滅状態になるか、そこが見ものなのです。
本作はその両方を兼ね備えた作品で、しかもタイトルにあるように「第5波」まであるそうなので、これは収拾つかなくなるぞ、と最初から風呂敷を畳むことは期待せずに見に行きました。
そしたら、SFでも宇宙人でもデザスターでもなく、ヤングアダルト原作のティーンムービーでした…!そっちか!そっちだったか!こんな話だとは全然知らなかったよ…。


最初は、面白いです。
壊滅状態の世界で、ひとり銃を手にしながらスーパーマーケットに入っていく主人公キャシー(クロエ・グレース・モレッツ)。水や食料を調達しながらタンポンも確保。おお、サバイバルの現実を描いているな。
そして店の奥で怪我人を発見。しかし疑心暗鬼の極限状態でキャシーはその人を撃ってしまいます。敵ではなかった…。


というオープニングから遡り、日常があっという間に崩壊する経緯を描きます。ある日巨大UFOがやってきて、地球の上空に居座ります。最初の10日間は何もしてこなかったということですが、その間に政府や国連が何かしたという話はありませんでした。引っ越す人もいながらも結構みんな普通に授業受けていますが、そんな呑気でいいの?
で、ようやく攻撃開始。電磁波パルスの力で電気を使うものすべてが使用不可になります。飛行機がいきなり落ちてきて車も動かなくなる。停電どころか水道も出なくなる。これが第1波。
第2波は大地震と大津波で全世界は壊滅状態。この津波シーン、逃げる人を次々に飲み込む様は東日本大震災をやはり思い起こしてしまうし、熊本・大分の大地震のことも頭をよぎります。圧倒的な力によるなす術ない無力さ。
でも、この津波シーンは「2012」の方が素晴らしかったな。倒れる電柱から火花が散ったり倒壊するビルの割れた窓から人が飛びだしてきたりする精巧な崩壊具合。

"2012" 予告編 2009年11月21日(土)全国ロードショー
第3波は鳥インフルエンザにより大量の感染死。ここでキャシーのお母さんも亡くなってしまいます。非常事態なのでお墓を作ることもできず、土に埋められて石に「Mother」の文字だけ。あのー、いくら何でも「母」でなく名前を書いてあげてよ。


ここまでもちょっとツッコミどころはありますが、ドキドキとワクワクの方が大きく、期待しながら見ていました。
しかし、難民キャンプ場に軍隊が来るところから物語はおかしくなります。
子供だけさらって軍隊訓練を施す米軍。今から鍛えても使い物になるのは何年後だよ!そして宇宙船は空だぞ。格闘技を教えても意味ないだろ。空軍が攻撃しろよ。
第4波で宇宙人(この作品の中では「アザーズ」と呼ばれています)が地球人に成りすましているので、それを倒すのが軍の目的だそうで。
特殊なスキャナーを使って地球人に成りすましたアザーズを見ると、脳の部分に大きな蜘蛛みたいのがくっついています。寄生獣か!で、この乗っ取られた地球人は一般の地球人を全滅させようとするそうです。ふーん。
キャシーは弟を追って軍の基地へ向かいます。途中何者かに撃たれて気を失いますが、イケメンエヴァンに助けられます。このイケメン君は医者でもないのに点滴の道具を持っており、傷の縫合もします。お前は何者なんだ。
一緒に基地へ向かう二人。途中、湖で水浴びをするエヴァンの裸を覗いてドキドキするキャシー。おーい、そういうティーンムービー要素入れるなー。家族愛だけで十分だよー。これ以上要素を増やすと風呂敷畳めないぞ。と思っていたのですが、どうもこちらがこの映画の本質だったようです。


子供軍隊の方でもみづなれい森三中黒沢を足して割ったような目のクマ少女が登場して、もうよく分からん。
キャシーの憧れだったベンは鳥インフルエンザから復活したのでゾンビと呼ばれていますが、特にそれで特殊能力があるわけでもなし。班のリーダーに任命されますが特にリーダーシップがあるわけでもないし。東出昌弘みたいな「いい人役」な顔でした。アメリカだと福士蒼汰みたいな立ち位置なのかな?知らんけど。
で、子供軍隊も実戦に出て、そこで軍こそが敵だということに気づきます。そうだよなー。電気使えないといいながら車乗り回すし基地には電気もあるしパソコンも動いているし。わざわざ大人と子供を分断するし、大佐はあからさまに怪しいし。
でも、まさかそんな「そのまま」だとは思わないじゃないですか。80年代の少年マンガじゃないんだから。と思っていたら、そのままでした。お、おう…。


キャシーとエヴァンの方でも動きがあります。まずは、少女マンガのドキドキを経てキス&ベッドイン。エロシーンはなく、朝チュン
そして、何とエヴァンはアザーズだったのです(アザーズとのハーフ?)。これも「そのまま」だな!しかし、キャシーに一目惚れして改心。信じられないキャシー。おーい、ベタか!ベタなのか!昼ドラか!大映ドラマか!


さあ、クライマックス。何者かが軍の基地を攻撃し、それに乗じて弟を救い出したキャシー。ベンとも再会し、一緒に逃げることに。
とそこで行く手を阻む軍人。さてどうする!おおっと、エヴァン登場。すぐやっつけて、キャシーとベロチュー!隣にいるベンはどういう気持ちでこれを見ていればいいんだ。ちなみにこの基地への攻撃はエヴァンが仕掛けたそうです。そんな武器、どこに持っていたんだ。そしてこれから爆薬を爆破させるから早く逃げろと言ってどこかへ走り去ります。
特にベンのリアクションはなく、基地の外に出る3人(キャシー・ベン・弟サム)。大佐に見つかりヘリから銃撃を受ける3人ですが、今さら大佐にとってこいつらが逃げようと何も困らないのでわざわざ撃つ必要ないのでは。
そこで助けに来た子供軍隊の仲間たち。今までどこにいたのかは訊かないしなぜベンがここに逃げてくることを知っていたのかは訊かないよ。「映画だから」だろ。うん、分かってるよ。「ご都合主義」とは言ってはいけないよね。


とりあえず基地から逃げてきた子供軍隊。「希望があれば何だってできる」とアントニオ猪木みたいなポエムを読んで終わりました。


…。そうかー。こういう映画だったのかー。「宇宙戦争」「インデペンデンスデイ」「スカイライン征服」とか「デイアフタートゥモロー」「2012」「ハプニング」みたいな映画ではなく、「トワイライト」「メイズランナー」「ハンガーゲーム」の系譜なのね。後で調べたら原作もヤングアダルト小説だそうで。最初に教えてくれよー。
そして、続編作る気満々ですよ。大佐は逃げたしエヴァンは多分生きているし子供軍隊も何か特殊能力を秘めているのかもしれないし。私はもう付き合うことはできませんが…。


プロットは面白そうなのに、「少女マンガの恋愛」と「少年マンガの対立構造とその解決」という手法に落とし込むやり方が私には合いませんでした。若者だったら面白く見ることができたのかな?それだったら予告編もそういう作りにしてくれよー。
キャラが全然魅力的でない。クロエはかわいいけど、キャシーはどんな子なのかよく分からない。ベンに対しても彼が彼女の気持ちを知っていたのかが分からないので、再会のときの両者の気持ちが分からないのです。恋心があれば再会は単なる知り合い以上に嬉しいでしょうし、エヴァンとの三角関係にもなるのですが、単なる知り合いだとベンである必要がない。
ベンは上に書いたように特徴のない「いい子」なだけ。
エヴァンはミステリアスなのか、単に人間味がないのかが分からない。
目のクマ女子は本当に強いのか、単なるオタクなのか分からない。
登場人物が生きていないので、それぞれの行動にリアリティもないし感情移入もできない、なので危機感の共有も応援もできませんでした。


あと、キャシーはいつでもメイクバッチリだし(途中いい感じに汚れていたのに、もう!)、エヴァンは髪も髭もきれいに整えられていて、緊迫感がない。「レヴェナント」のレオ様を見習え!
ついでに、クロエについては個人的にこう思っています。




映画『フィフス・ウェイブ』特別映像

キック・アス」は面白かったので、こちらはぜひ!