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映画「アポカリプト」 感想

アポカリプト」を見ました。
2007年の作品なのですが、宇多丸さんが「オールタイムベスト!」という作品を見ないわけにはいかないので、レンタル。


面白かったです。


しかし、自分にとってはオールタイムベストといえるほどではなかったです。多分これはリアルタイムで見なかったこと、劇場でなくDVDで見たことが少なからず影響していると思っています。この作品に限らずですが、家でDVDで見ると、劇場で見た感動の8掛けくらいになってしまう。これはしょうがない。なのでなるたけ映画は劇場で見ましょう。


お話はシンプル。村が滅ぼされ、生贄として捉えられた主人公が逃げるお話。
まずは動物を狩りして仲間で分け合う場面。ジャングルでの仲間との楽しい生活ぶりが描かれます。ここが前フリとキャラ紹介。誰がどんなキャラなのか、この楽しい生活がこの後どうなるのか。
登場人物はこの後登場する敵側も含めてみんなほぼ裸族ですが、髪型や刺青で誰が誰だか分かるようになっています。それ以前に顔も主人公はイケメン(ロナウジーニョをイケメンにした感じ)だしのろま役はずんぐりしているし父親は威厳があるし敵のボスは怖くて強そうだし悪い奴は悪い顔をしている。顔も含めた適材適所です。


敵が襲ってきて、捕虜になる主人公ジャガー・パウ。そして生贄になる直前に日食が起こり間一髪難を逃れるパウですが、その後も生贄狩り(わざと逃がして殺しを楽しむゲーム)に遭い、仲間は次々に死んでいく。何とか逃げ延びたパウですが、敵たちは追ってくる。
この場面、あんな距離から弓矢や槍投げ当たるかな?当たらないよー。途中に刺客を何人か置くとか槍は体をかすめる程度とかにした方がいいんでない?


そして、逃げるパウと追う敵集団。生贄がひとり逃げたくらい、放っておけばいいのにと思いましたが、殺されたのがボスの息子なのでみすみす逃がすわけにはいかないのだな。分かった。
でも、道なき道をあれだけ逃げたら、すぐ見失っちゃうんじゃないの?しかも夜を超えて翌日まで逃げっぱなし。体力持たないよ!追う方もモチベーション持たないよ!
まあいい、このお話は逃げるものと追うものの物語だから。


途中滝つぼに自ら入り見事生還。「やーい、俺様はジャガー・パウ!ここは俺の森だ。くやしかったらここまでおいでー!(意訳)」と捨て台詞を吐くパウに対し、「俺たちも行くぞ」と次々滝つぼダイブする追手たち!マジかよ!泣く泣くまた逃げるパウ。
逃げる途中でパウは底なし沼にはまってしまい、頭まで全てずっぽり泥まみれ。ここの撮影大変だっただろうなあー。そしてここでパウは気づくのです。そうだ、ここは俺の森だ。俺のテリトリーだ。あいつらは俺が倒す!と。ここから反撃開始!
ここの、主人公の意識の切り替わりと「ここから物語のベクトルが変わりますよ」の描写上手いなー。


自分が泥まみれなのを利用して蜂の巣攻撃(蜂の巣を相手に投げつける)。猛毒のカエルの毒を利用した吹き矢攻撃。そしてクライマックスはボスとの一騎打ち。ここで矢を胸に受けてパウ危うし!自分は丸腰だ、相手はナイフを持っている、万事休すか!と思った瞬間、オープニングでイノシシ(ブタだったかな?)を仕留めた罠が発動!こういう「忘れていた前半のあの場面がフリとなって後半発動する」という展開、大好き。カタルシスあるぅ!


しかしまだ2人残っているのです。そしてパウはもう疲労困憊満身創痍。せっかくボスを倒したのにザコにやられちゃうじゃないか。と思ったら、海の向こうからスペイン人来航。もうこの3人はわけが分からないのですよ。あれ(船)は何なんだ、あの人間は誰なんだと。もう殺し合いなんてやっている場合じゃないんですよ。というわけで何となく追いかけっこ終了。


そしてこの追いかけっこと並行して村の枯れ井戸に残して来た臨月の妻と息子の危機も同時に描かれます。身重なので自力では井戸から出ることができない。さらに途中から大雨が降ってきて水位が上がり、このままでは溺れてしまう。さらにさらに、この緊迫した状況で産気づき、出産もしてしまう!奥さん頑張った!あんた偉いよ!
この奥さんパートは追いかけっこと並行して描かれるので、緊迫感は持続するし追いかけっこシーンばかりだとだれてしまうのを防いでいて上手い構成だなーと思いながら見ていました。


ラスト、森に帰っていく一家でエンド。個人的にはちょっとあっさりしすぎじゃない?と思いました。森に帰っていくのはいいのですが、その見せ方があっさりしすぎ。森に入ってそのままカメラを引いてジャングル全景を見せるとかの方がエンディングっぽくない?ベタだけど。


面白かったです。見ている最中は時代も文化も違う世界なのでどういうストーリーになっていくのか分からないまま物語は進むのですが、終わってみればシンプルな筋書き。構成と脚本がしっかりしているからだな。上手い。
登場人物はみんな耳ピアスとか鼻ピアスとかだいぶいろいろ人体改造をしているのですが、みんな特殊メイク?臨月の奥さんのお腹も?
ネットを見ると時代考証などがあまり正確ではないという批判もあったそうですが、私はマヤ文明のことは詳しくないので気になりませんでした。「ジョジョの奇妙な冒険」のせいで「生贄の心臓を捧げるのはアステカ文明じゃね?」とちらりと思いましたが。
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あと、ラストでスペイン人がやってきた「意味」は、なんて批評もありましたが、そこまで気にせず見ていたなー。
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矢、当たりすぎ。敵、追いすぎ。は感じましたが、面白い作品でした。歴史文化的な作品かと思いましたが、エンターテイメントな冒険活劇でした。「ランボー」とか「マッドマックス」側の作品。知識なくても楽しめます。ぜひ。


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