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やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「君の名は。」 感想

映画

おじさんは掴めない


君の名は。」を見てきました。公式サイト↓
www.kiminona.com
私は、普段アニメを全く見ません。新海誠監督の作品も見たことがありません。こんな状態で見てきました。
あらすじはWikipediaに全部載っているので見たい人は見てください。


大ヒットですな。興行収入100億超え確実ですよ。もはや「ヒットしている事実」が更なるヒットを生む状態。金利金利を生むブルジョワ状態。私もその一人だし。まだ9月ですが年末までは上映続くでしょう。


さて、感想ですが、ちょっと難しい。この作品を見て、私は何回か涙を流しました。それでも見た後「傑作!感動!満足!」とは思えませんでした。いや、いい作品だったのですが、いくつかもやもやが残ったのです。まあ、泣くのは心の「涙ボタン」を押されているだけなので感動とイコールではないのでそこは分けて考えなければなりませんが。
そしてそのもやもやを考えていくと、どんどん「あそこおかしくね?」という点を思い出し、どうにも乗り切れないというのが現在の状態です。


こんなに大ヒットしてなければ「いくつか気になるところはあるけどいい作品だったなー」と思ったかもしれません。しかし、これだけ大ヒットだと、もっと面白くなければ、もっと感動しなければ、もっと満足しなければこの興行収入は納得できません。もしくは「ものすごく面白い理由」が分からないと、なぜここまでヒットしたのか、私には理解できません。


というわけで、理解できないのです。
面白かったのですが腑に落ちない点もたくさんあり、この「気になるところ」をスルーしてまで「良かった」とはいえないし、スルーできるような些細な点ではないし、気になるところを凌駕するほどの加点ポイントも感じられませんでした。


以下、ネタバレあります。







まずは重箱の隅をつつくような些細な気になったところ。
●夢だと思っているなら学校行ったりバイト行ったりしないでしょう。そもそも行かないし、行っても上手く立ち回れないでしょう。
●高校生の男女でしかも童貞処女なら、異性の身体に興味津々のはず。一日中オナニーしまくりのはず。ここは映画で描かれなかっただけでオナニーしまくりだったはずと理解しました。
この辺の「日常の混乱におけるありえなさ」はコメディ部門として理解するしスルーできます。


ちょっと看過できなくなってくる部分。
●曜日の違いに気づかないことなんてあるか?
●3年違っていたらテレビから雑誌から新聞から内容が全然違うでしょう。気づかないわけない。


本質にかかわる部分で見過ごせない部分。
●入れ替わっていることが分かったら、すぐ会いたくなるはずでしょう。なぜ会わない。本当に会いたいのなら、手段はいくらだってある。
●「目覚めたら記憶があいまいになる」という設定が都合よく使われすぎ。そのために日記アプリでいろいろ詳細に記録していたのに。
●そして途中で日記アプリが消えてしまうのはあまりにご都合主義ではないか。これに限らずですが、設定やストーリーが「物語を作者の都合のいいように進めるため」に作られている気がします。
●糸守町を訪ねるエピソードで、いろいろな人に訊いてもなかなか分からないなんてことある?あんな立派な湖があったら、そしてあんな大災害があったら知っている人たくさんいるでしょう。同じ岐阜県でも全然違う市町村で聞き込みしてたのかな?つーかそれ以前に同行した二人が知っていてもいいでしょ。
●それよりもなぜ瀧自身がこの大災害のことを知らないのだ。
●クライマックスで三葉が父親を説得したシーン、とても重要なのになぜ端折るのだ。どうやって父親に信じてもらったのかはとても重要だと思うのですが。
●結果死者人。「避難訓練」だったということですが、避難訓練で全員が素直に避難するなんてことはありえないでしょう。お気楽すぎ。
●ラスト、そもそも女子が男子に向かって「君の名は」なんて言いません。男子だって年上の初対面の女子に「君の名は」なんて言いません。作品タイトルだからそう言わせたいのであれば、過去の文献にそういう言葉があったとか、何かしら「この言葉でなければならない理由」が必要です。
※セリフがかぶっていたので聞き取れなかったのですが、「あなたの名前は?」とかでした?教えてください。
●瀧はなぜ三葉のことを好きになったのでしょうか。入れ替わっているときは三葉は自分なのだから、三葉がどんな人なのかは知りません。知ることができるのは日記アプリだけ。それだけで好きになるかな。SNS世代だからそれでいいのか。


この作品は要約すると
①なぜか入れ替わりが起こった。
②実は過去の大災害があって入れ替わりの相手は亡くなっていた。
③その過去を変えるために奔走。
④めでたく過去は変わり、災害の被害を防ぐことができた。
⑤入れ替わりの相手も生きており、その運命の人にもついに出会うことができた。


というお話です。コメディと悲劇とハラハラとハッピーエンド。しかし、それぞれについて私はこう思ってしまうのです。


①これにまつわるいろいろな「ありえなさ」はコメディ要素なので問題なし。
②なぜこれほどの大災害を瀧は知らなかったのか
③どうすれば防げるのか、その手段が分からない。登場人物が何に向かって頑張っているのかが分からない。
④過去が変わったことを本人は覚えていないので、見ている私たちも「やったぜめでたし」のカタルシスがない。
⑤これまでの話が「出会うために」という目的ではないので、出会うことはめでたいけど「よかったね」くらいの感想しかない。


物語とは、目的(ゴール)に向かって進むか、問題(困難)を解決するための過程を描いたものだと私は思っていて、「敵に勝つためのトレーニング→勝った」とか「逃げなければ殺される→謎を解いて無事脱出」とかがこれに当たります。
そこで「自分の武器を鍛える・弱点を克服する」とか「謎を解くためにはこれをしなければならない」とかがあるからその過程を「がんばれ」と応援するのです。
そして「絶対に勝てないと思っていた相手に勝つ」とか「絶体絶命→間一髪クリア!」とかがカタルシスになるし、「前半のアレが効いて後半の勝つ理由になる」とか「こういうことをしていたから逃げることができた」というロジックがあるから見ている私たちは納得するのです。
その辺が、この物語は弱い。


前半の入れ替わりコメディパートの後、「実は糸守町は隕石の衝突で壊滅していた・三葉や友達も死んでいた」という事実が明らかになり、それを阻止するのが目的になります。ここは理解できます。
しかし、瀧が三葉に会うために口噛み酒を飲むのが分からない。飲むと三葉に会えるという可能性はどこかで明示されていましたか?私が見落としていたのかな。
で、黄昏時に出会う二人ですが、黄昏時だと会える可能性があるとどこかで(以下略)。
この、困難解決ための行動に理屈がないので「頑張れ!」と思えないのです。
まあいい。そして無事避難完了できて死者ゼロ人。めでたしめでたし。しかし、その事実を瀧は覚えていないのです。なので、見ている私たちも「やったー!」と強く喜べないのです。


ロジックもなくカタルシスもない。
ラストの「ついに運命の人に出会う」は確かに「運命の人」ですが、「好きな人」とはまた別ですよね。まあ、確かにこんな出来事があったら勘違いして好きになっちゃうのは分かりますが、瀧と三葉が入れ替わる理由がなければそれは「運命」でなく「偶然」なのでは。いや、これこそが運命なのか。でも運命といえる理由がほしいなー。
何でも「運命です」だったらSFは不要になります。空想で何でもできるSFだからこそロジックが必要なのです。


SFとは基本的に「ありえないこと」なので、それを映画やマンガで表現するときは「ありえること」にするためにきちんとロジックを構築してもらわないと、見ている・読んでいる私たちは納得できないので物語に入り込めません。ひとつのウソのための100のホント。
この「ロジック」は民明書房でもいいのです。本当に正しいのかどうかは置いておいて、正しいと思わせる、もしくは見ている私たちが引っかかりを覚えないような理屈が欲しいのです。


これら腑に落ちない点については、このブログが詳しいです。私が気になったことも、私が気づかなかったことも。
mercury-c.hateblo.jp


その他、いい点。
長澤まさみの声はいい。
●RADの曲がでかすぎ、物語の邪魔をしているという意見も見ましたが、あれはそれぞれのシーンのテーマ曲のように使われていたので気になりませんでした。MV的というか。


音楽の使い方についてはこちら。現在の東宝無双は川村元気プロデューサー無双でもあります。
shiba710.hateblo.jp


若者はこの作品のどこに感動したのでしょう。これだけの特大ヒットなので、絵がきれいとかRADWIMPSの曲がいいとか、そういう表層的な部分だけではないはずです。若者に訊きたい、君はどこに感動したのかい?揶揄や批判ではなく、純粋に知りたい。教えてほしいです。


この物語は「はっきり覚えていなくても常に探している人はいて、その人に出会ったらすぐ気づくはず。君にも運命の人はいるよ」というお話なの?だから若者に人気なの?
あーもう、おじさんは分からないのです。この作品の本質を掴めていないのです。


<追記>
書き終わって読み返すと、何だかダメ出しばかりの文章になってしまった。でも、見ている間はワクワクドキドキしたし、いい作品だと思っているのです。それでもいくつか気になることがあってそれについて書いていたらこんな文章になってしまった。
上にも書きましたが、私はこの映画を掴めていないのです。理解していないのです。だから教えてほしいのです。
私はアニメを全く見ないのでアニメ特有の表現方法が苦手です。そしてアニメを全く見ないのでオタク・セカイ系といった知識も感覚もありません。こういうところがこの作品を読み取れない原因のひとつなのでしょうか。
繰り返しますが、私は分かっていない。この文章を読んで反論がある方はぜひコメントを書いてください。


<さらに追記>
私がこの物語にはまらなかったのは「キャラが生きていない」からなのでは、と思いました。特に瀧君。キャラが生きているとその行動にリアリティと説得力が生まれるので、どんな行動をとっても「ありえない」と思わなくなるのですが、それがないと脚本の辻褄が気になってしまいます。


また、ある人のツイートで「この映画はファンタジーだ」という意見を目にしました。なるほど!私はこの作品は恋愛映画ではなくSF映画だと思い、だからいろいろ辻褄のことを考えてしまったのですが、ファンタジーだったのか!そうであれば何でも許せる。やっと腑に落ちた気がしました。
というわけで、「この映画はファンタジー」がファイナルアンサーです。




「君の名は。」予告

君の名は。(通常盤)

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君の名は。(初回限定盤)(DVD付)

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君の名は。 (角川つばさ文庫)

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