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やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「佐野元春のザ・ソングライターズ」RHYMESTERの回書き起こし

RHYMESTER テレビ HIPHOP

佐野元春のザ・ソングライターズ」という番組がありまして、その中でRHYMESTERの回が再放送されました。数ある放送の中からこの回を選んでいただいたNHKには感謝!
そこで、この回のRHYMESTERの発言をいくつか書き起こします。
ちなみに、当時書いた番組感想はこちら↓
ese.hatenablog.com
感想としては変わらず。ポエトリーリーディングの際も「歌詞」が重要なんだから、テロップ出してほしいなー。


ラップとの出会いは。

宇多丸(以下「宇」):それこそ佐野さんがラップ始めたころに知識として知ったと思うんですけど、その頃まだ子供だったんで。意識的にラップっていうものにフォーカスし始めたのはRUN-D.M.C.ですかね。
Mummy-D(以下「D」):中1か小6の頃にブレイクダンスを初めて見て、そのときにまず「ダンスがすごいな」と思って、その後に「この後ろでかかっている音楽は何なんだろう。このしゃべるみたいにしてやってるこの音楽は何なんだろう」みたいな感じに、後から気づいた。

ラップ詞を書き始めた時の手本になったものは。

D:日本語で韻を踏むということに関しては、やっぱりいとうせいこうさん、近田春夫さん。その辺のやっていることを見て「あ、これならできそうだ」ってすぐ分かったんですよね、韻を踏むっていうことが。で、しかも、ちょっと生意気だけど「俺の方が上手くできんじゃねえの?」って思って、それでやり始めた。
宇:そのときMummy-Dもはっきり言ったんですけど、「今なら層が薄い」って。「今なら天下取れる」って。
D:なのにすっげー時間かかったんだよなー。(笑)

当時「日本語でラップなんてできるはずない」という風潮の中であえてお二人はラップをやったわけだけど、その中でどんな工夫をしたのか。

D:うーん。あまりにあり過ぎて…。すべてが試行錯誤だったみたいなもんだからね。
宇:やりながら「日本語ってラップに向いてねえな」って思う壁が出てくるんですよ。例えば英語なら1拍に1単語置けるのに日本語だと置けない。で、響きを圧縮できる言葉を選んでいってとか、そういうことですかね。ただ1音1音に置いていくと間延びしちゃうし。
あと、音素(と言っていたのかな?)が英語に比べると貧弱だから、同じ韻を踏むといっても、英語だと語尾の1音くらいで韻を踏んでいるように聞こえるんだけど、日本語だとそういう風に聞こえない。なので、もっと手前から「韻ですよ」って感じで踏むか、Mummy-Dが得意としているんだけどイントネーションで変化をつけていくとか。

ラップはサイレントマジョリティが合唱してくれるような音楽だと思うのですが、その辺どうでしょう。

宇:おっしゃる通りで、もっともミクロな視点に普遍的な何かがあるんじゃないかなと思うんですよね。「あそこの横丁のあいつ」っていう話が世界のすべての街角に通じる話になるっていうところにロマンを感じたんですよね。

ライティング上のメソッドは。

宇:口に出して気持ちい言葉の連なりであるべきこと。それがグルーヴを生む。あと、日本語として耳で聴いて理解できる内容であること。あと、内容が僕が歌って嘘がない内容であること

ビートを聴きながらリリックを書く人が多いけど、Mummy-Dはビートを聴かずにリリックを書くと聞きました。

D:音楽のグルーヴから生まれるものだけで歌詞を書きたくない。一度グルーヴは置いといて、もうちょっと論理的思考のところに一回別の部屋(注:この「別の部屋」は物理的な部屋ではなく、思考の別の回路という意味です)に入って、例えば2行目にこの説明をしておかないと最後のこれが意味分かんないよな、とか。そういう頭の部分のところに一回行きたいんです。で、それで作った上でフィジカルな部屋に戻ってきて答え合わせをする感じ。

好きな言葉

宇:「一理ある」。どんなものにも一理あるじゃないですか。みんなそこを言えるようになればもっと平和になるのになって。
D:分かる。おんなじこと考えてた。
宇:まじでー?(嬉しそうに)
D:俺が考えていたのは、「理由がある」。大人になると「若者は何でそういうこと言うのかな」って言いがちだけど、そういうのは必ず理由があって、一概に上から馬鹿にすることはできないなって。
宇:同じじゃーん。(嬉しそうに)

嫌いな言葉

宇:「私馬鹿だから」的な発言。そんなこと言われたら話終わっちゃうじゃんっていう。どんどんコミュニケーションをとっていこうよっていうことなのに「私馬鹿だから」ってシャットアウトしちゃっているじゃないか。そんなのお互い馬鹿だよ、馬鹿同士話そうっつってんのにさ。さっきの「一理ある」の裏表の話で。
D:えーっと、「エッチ」。エッチって言う男が嫌いです。セックスのことをエッチって言うのは、大事なことを隠そうとする欺瞞を感じるね。

ほかになりたかった職業

宇:映画の予告編を作る人。面白くない映画でも面白く見せちゃうとか、編集によって。つまりそれって、ある意味僕がHIPHOPに惹かれる理由でもあるんだけど、もともとあるものを編集とか文脈を変えることによって別のさらにいい価値を付け加えてしまうっていうのは、真のクリエイティブなんじゃないか。
D:俺は、役者。特に大河ドラマ。歴史が好きなんで。主役じゃなくても。
宇:それはオファー待ち?

女性から言われてうれしい言葉

宇:「目は優しいのね」。普段この感じ(サングラス)なんで。
D:「色っぽいですね」
※Dさんやはり意識しているな!

死ぬ前に愛する人に残す伝言

D:真面目に言ったら「ありがとう」「君に出会えてよかった」「君がいちばんだった」とかだけど、最後に「じゃ、後ほど」くらいは付け加えたいですよね。
宇:「未発表音源には未発表なりの理由があるのだから、勝手に出したりしないように」

ラップの持つ情報量は3分間のロックンロールより断然多い。HIPHOPの方が断然有利だぜ、という思いはないですか。

宇:情報量が多いがゆえに表現しづらい情緒もあるし、言葉が少ないほうが表現できるものもあるわけだから、一長一短というか
D:いい意味でも悪い意味でも、説明できちゃうんですよ、いっぱい言葉が入るから。でもそれってイメージを限定するだけのときがあるんですよ、ふくらませる余地がない。要するに俺たちがやっているのは下手すると行間を読ませるその行間を書いちゃっているだけみたいな野暮なことにもなりかねない
宇:「人間なんてラララ」じゃなくて「人間なんて何とか、人間なんて何とか」って全部並べる感じですよね。いっぱい並べる面白さもあるかもしれないけど、「人間なんてラララ」の広がりはないっていうか。

年齢を重ねることによる寛容などの「成長」についてはどう思う。

D:例えば寛容みたいなものが身についてくるにしろ、HIPHOPはがさついた音楽だし身の回りの生活にブルースを感じながら歌っていく音楽だから、ネタは尽きないしもっと深い表現をしていけばいいだけだなって楽観的に思っています。

今と昔でリリックを書く上で変わったことってありますか。

D:他のジャンルのミュージシャンとコラボすることが多かったんですね、最近。それで、やっぱドキッとさせようと常に思っているような人たちだから、相当影響受けましたね。
で、じゃあ自分たちはHIPHOPという強みを活かして、その1行・1小節・1拍までドキッとさせているか、そこまで精査して推敲して面白い表現をしているかといえば、自分を含めHIPHOPの人たちはまだまだだなと思ったんですよ。なので、「マニフェスト」を作っているときは、実はこれは宇多丸にも言っていなかったんだけど自分の中に課しているハードルがあって、これ(音源)をそのシンガーさんたちに聴かせられるか、ということを考えました、1曲1曲について。
宇:自分のラッパーとしてのエゴよりも大事なことがある。例えばここはもうちょっと分かりやすく整理すべきだとか、それまでの自分だったら照れてやっていなかったことも照れずに感情を持っていくとか。作品のためにすべてを奉仕させるようになった

Come On!!!!!!」の歌詞について

D:HIPHOPを自分がやり続けてきて、ボーカルを自由に歌っている・ラップをしているつもりなんだけど、「あれ、傍から見たら俺はただのラッパーなのか。それもチェケラッチョの親玉なのか」みたいな軽い絶望みたいなものを感じたときがあって。自分なりに自分の音楽像を追及しているんだけど、やっぱり一般から見たHIPHOP像みたいなものとすごいズレがあるんだなって。そんな中でいわゆる普通の歌との違いは何なんだって考えたときに、やっぱりリズムなのかなと思って。「じゃあリズムの鬼になってやるよ」みたいなところに行き着いた。


番組後半はラップを作るワークショップ。そこでRHYMESTERのお二人から「ラップとは何か」「ラップにおける作詞とは何か」の一端が語られます。

宇:ラップって、母音の数を揃えるのがライミングだと思っているのが初心者には多いんだけど、『響き』だから。口に出したときに同じ響きに聞こえるかどうかっていう。

その後、学生からの質問コーナー。
「自分のイメージを言葉にする際に韻を踏むことが足枷になることはあるか」

D:あります。昔はすべての語尾を韻踏んでないと気持ち悪いというかそうでなきゃいけないんだ!と思っていたんだけど、最近は自分から出てきた言葉はそのままリズムに乗っけちゃう。そうじゃないと「この人は韻を踏む体裁のためにこの言葉が出てきたんだな」ってとられちゃうとテクニックのために作ったセンテンスみたいに思われちゃうから、それって心に刺さんない。なので、韻を踏むと不本意になるときは踏みません。

「なぜ一人ではなくRHYMESTERとしてラップを作るのか」

D:すっごい簡単で、「一人じゃダメ」なんだよね、お互い。関係でいうと宇多丸がギターで俺がベースみたいな感じなんだよね。だから1曲の中でソロパートはあるけど、サビとかでユニゾンになったときのお互いの声が持ってる倍音成分というかレンジも違うし補完しあっているんですよ。キャラクターも補完しあっているし。で、二人だとケンカしたらおしまいだけどDJ JINもいるから。
宇:アイデアもそうだよね。自分の中に元々あるものだけで出すと自分の考えた通りのものしか出ないけど、ものを作っていくってことは何かマジックを起こさなければいけないわけで。僕がそんないいアイデアだと思わないで言ったこともMummy-Dが「それはここが面白い」って反応するときもあるし、そういうときにいいものができる。


いい回でした。ロックなどのミュージシャンは「感覚」が大事なのでそこを言語化するのは難しいですが、HIPHOPは「言葉」の音楽なので、言葉のプロは伝えるのも上手い。もっと聞きたかった。私も質問したかった。
この番組はアルバム「マニフェスト」が出た後の収録で、途中Dさんの他のミュージシャンとのコラボで刺激を受けたという発言や宇多丸さんの自分のエゴより作品優先という発言がありましたが、それがこのアルバムにはとても反映されていると感じました。それはトラックを外部発注することによるクオリティの向上、Dさんのリズムレベルのさらなる向上、宇多丸さんの伝わりやすい歌詞など。あと、韻はもちろん基本として押さえつつ、それ以上に感情や情緒に訴えかける内容になっていることなど。
その後のアルバムを聴けば分かるように、一作ごとに試行錯誤しながら確実に進歩しているRHYMESTERは偉い。そろそろ情報が出てくるかもしれない次回作に期待します!



マニフェスト

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