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RADWIMPS「人間開花」 感想

高値安定


RADWIMPSのNEWアルバム『人間開花』が発売になりました。ネットを見ると様々な個人ブログ他で既に語られまくっていますが、それはそれ。自分は自分の言葉で語ろう。


今回のアルバムは、これも方々で語られている通り「開けている」印象のあるアルバムです。RADWIMPSはメディアに積極的に出てこなかったせいもあり、一部の熱狂的なファンと全く知らない一般層に分かれているバンドですが、『君の名は。』の超特大ヒットにより一般層にも急に広がってきました。
このタイミングで出るアルバムということを考えると、この「素直で真っすぐで明るく開けているアルバム」は、とてもいい着地だと思っています。これは、メンバーがわざと一般受けを考えてこういう内容にしたのではなく、バンドの成熟・メンバーの年齢・「君の名は。」仕事での他分野との仕事、などのいろいろなことが重なってこのアルバムの印象が出来上がったのだと思っています。
「素直で真っすぐで明るくて開けている」なんて書きましたが、一般のポップスと比べれば「濃くてひねくれていて頭も体も全部使って聴く作品」なのですが、それでも一般の人にも受け入れられやすい内容だと思っています。
そして、このアルバムで初めて出会った人が過去作を掘っていき、さらに濃いRAD汁を浴びることを考えると楽しいなあ!


このアルバムは、今までの「君と世界」「生と死」のような深く哲学的なテーマは少なめです。もう語り尽くしたのか、野田君のモードが今そこにはないのか、濃い恋愛モードではないのか、理由は分かりませんが、一見さんも気軽に入れる内容になっています。


それでは、各曲について感想を書きます。
1.Lights go out
久しぶりの英語詞。穏やかな始まりだなーと思いましたが、前作『×と○と罪と』も『言えない』という穏やかスタートでしたな。
そして曲の途中からアレンジがどんどん盛り上がる!全然バラードではありませんでした。もうバンドの音とは思えないサウンドプロダクトですな。


2.光
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ポップ!明るい!1曲目がイントロダクションだとしたらここがつかみだと思っていたので『DADA』『おしゃかしゃま』『実況中継』のような超絶ヘビーチューンを想像していたら裏切られた。
譜割りも、いつもの野田君だったらもっと言葉を詰め詰めにするのに、すっきりしている。インタビューなどを確認したら、『君の名は。』サントラで『前前前世』とこちらのどちらをメイン曲にするか迷ったそうです。だから明るくすっきりしているのか。
しかし、歌詞を見ると、何だか深読みできます。

正しい街に 正しい歌に やけに一人取り残されて
(略)
したら何て言うかな
笑いながら言うかな 「それ痛いの?」
(略)
許されない 愛だけが

何だか、同性愛の曲に聴こえませんか?もし『君の名は。』に採用されたら歌詞変わっていたんだろうな。
あと、この曲は「今すぐ逃げろ 信号はイエロー」の韻が気持ちいい。


3.AADAKOODAA
ラッドっぽいタイトルだな!
HIPHOPです。『G行為』の系譜。
野田君は歌詞も上手いので、韻も上手い。そしてもちろん曲を作る人なので、フロウがメロディアス。こういう曲作られちゃうと凡百のラッパーはすぐ廃業しなきゃと思ってしまいますね。


4.トアルハルノヒ
この曲は「ロックバンドなんてもんをやっていてよかった」というフレーズが3度も出てくるので、やはりそこに耳が向かいますね。
この曲は「ハル」という少女が登場しますが、これはロックバンドを続けてきた彼らに「ロックバンドやってきてよかったね」と実感させてくれるこのアルバムなりファンの存在であり今のバンドの状態のことなのではと推察します。


5.前前前世[original ver.]
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さあ、国民的大ヒット曲の登場です。movie ver.とは歌詞が一部違っています。
ポップスですよねー。で、この曲をポップスたらしめているのは、やはり歌詞だと思うのです。RADWIMPSの歌詞は野田君の思い詰めて考えまくってひねくれまくった純愛が詰め込まれていることが多いのですが、これは外部向けの曲なので、歌詞が分かりやすくロマンチックなポップスとして成立しています。いい化学反応だったな!


6.‘I’ Novel
先攻シングルですが、発売は1年も前だし『前前前世』のヒットが大きすぎて「先行シングル収録」という印象がない。そもそもこの曲と両A面だった『記号として』の両方とも、いい曲だけどシングルかなーという印象でした。
しかし、この両曲ともアルバムに入るとはまる。アルバムの中のいい曲!という感じがします。ヒップホップでありつつメロディもあるので、リップスライムの『One』みたいな印象です。
自分の人生を小説になぞらえて描かれる歌詞。野田君はこういう「置き換え」が上手いなー。


7.アメノヒニキク
これは誰もが思うでしょうけど、サカナクションですよね。パクリとかではなく、曲作りの手法が。
歌詞は具体的でなく抽象的。具体的に何かを語るというより、サウンドと併せてイメージで聴く曲ですね。しとしと雨が降っている情景が浮かびます。


8.週刊少年ジャンプ
タイトルを見たときは『会心の一撃』みたいな明るく激しい曲かなと思っていたのですが、まさかの弾き語り。
最近のRADWIMPSは鍵盤の導入が増えてきていますが、今回のアルバムは主役として使っている曲が多いですね。
少年は本当にこんなことを思って日々過ごしているし、大人になっても何割かはこういうことを思いながら暮らしています。「少年みたいな男性が好き」な女性の皆さん、こんなですがいいですか?


9.棒人間
これは、ビリー・ジョエルだ!『ピアノマン』だ!
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聴いてもらえれば分かるように、メロディなどは全く違うのでパクリとかではないのですが、三拍子でピアノ弾き語り、ピアノマンです。
この曲は中学生が聴いてしまうと「俺も棒人間だ!」と思ってしまう危険性がある。中二病誘発ソングだ。


10.記号として
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『‘I’ Novel』との両A面シングル。このアルバムは超絶ヘビーチューンがないので、この曲がその役目。他のアルバムに比べればまだ軽い方ですが。
こういう、イントロのリフ聴いただけで「ラッドだ!」と分かる記名性ってすごいな。分かりやすいメロディを弾くのではなく、各楽器が混然一体となったグルーヴがそのままリフになる。


11.ヒトボシ
イントロでライブの歓声が聴こえるこの感じ、『One man live』みたいですね。
RADWIMPSにしては珍しく「Yeah Yeah Yeah」というコーラスがあり、とてもライブ向き。ライブで聴きたいなー。


12.スパークル[original ver.]
https://www.youtube.com/watch?v=8ZNbisuWsW4www.youtube.com
これも『君の名は。』より。この曲を聴くと野田君のボーカル力の向上がよく分かる。バラードだけどサビで高音を張り上げることなく聴かせるメロディ運びとボーカル。素晴らしい。


13.Bring me the morning
インスト。『スパークル』でググッと盛り上がったところを一旦落ち着かせて、ラストへ向かいましょう。


14.O&O
これは「オーアンドオー」でいいのかな?コラージュしたサウンドがトラックなのでまたヒップホップなのかなと思っていたら、何とゴスペル!
RADWIMPSでゴスペルは『七ノ歌』がありますが、それをさらに進化!


15.告白
こんなに盛り上げて、まだ終わらない!オーラスはピアノバラードです。
この曲は、友人の結婚式のために作った曲だそうです。かつて『37458』で「絶対なんて絶対ない」と歌った野田洋次郎は「内緒で今作ろうよ」「ねぇここに一つあるよ」と歌います。


「素直で真っすぐで明るく開けている」なんて書いておいて、実際各曲について書いたらやはり濃い!これでもRADWIMPSとしてさっぱり側ですので、今後RADWIMPSの過去作を掘る人は、ある程度覚悟して聴いてください。できれば昔の作品から新しい作品の流れで聴いてもらえると、バンドとしてもボーカルとしても成長が分かりますので、ぜひ。


いいアルバムです。『アルトコロニーの定理』『絶体絶命』『×と○と罪と』の「濃くて壮絶なアルバム」時期を抜け、もっと自然に曲を作れるようになったのでしょうか。それでいい。重すぎるのはいつか折れちゃう。今後も長く活動してもらうためにこれくらいの塩梅がちょうどいい。


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