やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

『水曜日のダウンタウン』は笑えないほど面白い

意味無いことをやることで生まれる意味


水曜日のダウンタウン』とは、とても面白いテレビ番組です。いちいち説明は面倒なのでしませんが、とても面白い番組なので皆さん見てください。
で、この番組がまたものすごい大ネタをぶち込んできました。


4月26日放送『水曜日のダウンタウン2時間スペシャル』の番組ラストで、予定にはないサバンナ高橋が登場。「水曜日のダウンタウンの2時間スペシャル、聞いてへんくだり、嫌な予感しますよね?」
この日の放送では「街頭インタビューで『○○さんのファンなんです』と言ったらご本人がロケ車から登場するやつ、モノマネ芸人でもなんとかなる説」という企画があって、「気づかない人いるんだな」なんてスタジオの出演者は盛り上がっていました。
そこで高橋さんは「皆さんも気づいていないですよ」とツッコみ明かした秘密は、同じくこの日放送の「落とし穴バトルロワイヤル」という企画に出ていた松野明美さんの声を、モノマネ芸人の坂本冬休みさんがアテレコしていたというもの。
あっけにとられる出演者。「何の意味があんねん!」とあきれる松本人志
高橋さんが持ってきた説は「テレビに出ている人の声、実はモノマネ芸人がアテレコしていても誰も気づかない説」。あー、なるほどーという空気が漂うスタジオ。
しかし、この番組はここでは終わらないのです。


高橋「説のメインはここからなんです」と続けます。「今回アテレコされているのは松野さんだけではございません。実は、この2時間スペシャルの頭から今の今までずっと、皆さん(スタジオゲスト出演者)の声をモノマネ芸人がアテレコしておられます」
つまり、収録中の出演者に対するドッキリではなく、オンエアを見ている視聴者に対するドッキリなのです。
スタッフ頭おかしい!


この番組は前回の2時間スペシャルでもゲストのグラドル鈴木ふみ奈さんが番組中ムチャなコメントを連発してバカリズムから「今日売れるつもり?」と強めのツッコミをもらったり鈴木紗理奈さんから「売れたいのは分かるけどもう少し空気をさあ」とマジなたしなめを受けていて、見ている私たちも「何だこのイタい子は」と思いながら見ていました。
それが番組ラストで登場した博多大吉さんが「実はこの子の発言はすべて僕が言わせていました」とネタばらし。これにはスタジオも視聴者もびっくりで、番組まるごとが仕掛けになっているという壮大なドッキリでした。


しかし、今回はスタジオの出演者はアテレコされていることを知らされてもそれが分からないのです。分かるのはオンエアを見ている私たち視聴者だけです。
前回のドッキリは「この子ムチャなぶっこみしてくるな」という違和感を覚えながら、それをツッコむ出演者を見て一緒に笑っていて、ラストのネタばらしでびっくり→大団円という流れですが、今回はネタばらしされても確認のしようがないという宙ぶらりんな状態のまま。そして見ている私たちはびっくりはしたけれども、この仕掛けが番組の面白さをプラスにしていたわけではないのです。
まさに松本さんの「何の意味があんねん!」です。


しかし、この「何の意味があんねん!」をやるからこそ、意味が生まれるのです。


昔、ダウンタウンの漫才で「このオンエアの日、東京の天気は?晴れ、曇り、雨。あとは編集に任せましょう」というオチの漫才をやっていたことがあってそれを思い出したのですが、やっている方法論は似ていますが、まったく違います。
「面白い」を目的としてやっているのは同じですが、こちらのやり口はまるでサイコパスです。頭がおかしい。


まさにその通り。「こんなのやったら面白いよなー」と会議で話し合うのは簡単ですが、実際やるのはアホかサイコパス藤井健太郎さんだけです。


そして、オープニングの映像を見ると実はヒントがいくつも隠されていたのです。
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↑「WDT」というアプリ。昔「ワールドダウンタウン」という番組があって、出演者が外国人だったため吹き替えだったのです。吹き替え!
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以前小峠が発した「サイコ!」という発言を引用。この番組のことだよ!
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松野明美さんとモノマネ芸人の坂本冬休みさん。以前この番組で「未来から来た松野明美から現在の松野明美に電話がかかってくる」という企画でこの方がモノマネで本人と会話。しかも松野さんはそれを信じた!バカすぎる!w


面白いんだけど、わっはっはと笑う面白さとはまた違う、「すげー」と感心する面白さ。それが今回はさらに進んで「ちょっと怖い」と思えるレベルに達しています。
「面白い」んだけど、「laugh」ではなく「interesting」の感じ。さらに今回は「OMG」「You are crazy」のレベル。


いやー、久々に「テレビってすげえ」を見ました。芸人のトークが面白いとか生放送ならではのハプニングとかではなく、作りこまれた面白さ。
この番組のプロデューサー藤井健太郎さんの著書『悪意とこだわりの演出術』のなかで「構造で遊んでいるものが好き」とありましたが、まさにこれ。
この企画は、テレビでしかできない面白さですよね。見ている人数もかけるコストも、ネットでは不可能。テレビはまだまだ面白い。


藤井さん関連のエントリ↓
ese.hatenablog.com

悪意とこだわりの演出術

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