やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『美しい星』 感想

分からない。面白くても、分からない。


映画『美しい星』を見てきました。公式サイト↓
gaga.ne.jp
原作は未読。吉田大八監督作品だから見に行きました。
吉田大八監督といえば『桐島、部活やめるってよ』です。この作品は私の邦画ベスト1といってもいいくらいの作品で、その後見た他の作品もどれも素晴らしく、期待と信頼のもと、見に行きました。


面白かった、でも、分からなかった。


そう、理解できなかったのです。なので、感想は難しい。
彼らの体験は、どこまでが事実でどこからが妄想と思い込みなのでしょうか。主観と客観があいまいで、それは監督がわざとそうしているようなのですが、そこからこの作品の主題や監督の見せたかったことを読み取ることができなかった私は、この感情を、この感想を、上手く言葉に落とし込むことができません。


重一郎(リリー・フランキー)の見た光と田んぼへの事故は?不倫相手の記憶は?一雄(亀梨和也)のエレベーターでの予知夢は?暁子の見たUFOは?重一郎のあのポーズは?黒木(佐々木蔵之介)の言動は?あのボタンは?ラストのUFOでの出来事は?
あー、分からない。どなたか教えてください。


役者は皆素晴らしかったです。演技が素晴らしいのはもちろんですが、脇役に至るまでキャスティングがドンピシャ。
リリー・フランキー
以前は「ちょっと変なおじさん枠」としてかつての岸部一徳のイスに座っていたのに、いつの間にか主役ですよ。しかも上手い。ダラダラもしくは飄々としている姿、でも色気がある(愛人がいる設定に違和感がない)、おかしくなる姿も病に伏せる姿もしっくりくる。
亀梨和也
後輩から「自由でいいっすね」と言われながらぎこちない笑みで余裕を見せる姿、よかったぞ。彼の演技を見るのは初めてだったのですが、演技もいい。お肌の荒れが気になったのですが、いつもこう?この撮影時がこうだっただけ?
橋本愛
「笑わない美人枠」として最適。美人であることで本人の望まない誘惑があって面倒な人生、たぶん彼女の私生活でもあるんだろうな。私にはないけど。ただ、正面の顔は美人100%ですが、横顔は結構鷲鼻(魔女鼻)なんだなーなんて失礼なことを思いながら見ていました。
●中島朋子
「平凡な主婦枠」として最適。自己主張は強くないが彼女がいることで一家は分裂せずに済みました。ラスト、家族がまとまるのも伊余子(中島朋子)がいたからこそ。
佐々木蔵之介
まばたきしない謎の男。『寄生獣』の広川を思いながら見ていました。結局彼は何者なのだー。分からないー。


その他
●今野彰:羽場裕一(主婦受けするニュースキャスター)
●中井玲奈:友利恵(天気予報のアシスタント、愛人)
●竹宮薫:若葉竜也(暁子を金星人に目覚めさせるミュージシャン)
●栗田岳斗:藤原季節(ミスコン主催サークルのチャラい大学生)
●丸山梓:赤間麻里子(マルチを持ちかける婦人)
のどれもがドンピシャの顔!
重一郎と嚙み合わないまま笑顔でいる今野、お天気お姉さん顔で愛人顔の中井(セックス後、すぐに布団を胸まで上げるな)、音楽の実力より女を食う実力の方があるミュージシャン竹宮(その髪型と一重の目!)、ウェイの代表格栗田、セレブかつ成金感の丸山、どれも素晴らしい。
衣装や髪型や演技力の総合力ですが、どれも「本人!」(本人なんていないけど)という出来栄えでした。ナイスキャスティング。


そしてもうひとり、喫茶店で女性ふたりが談笑しているところからその奥にいる暁子(橋本愛)を映すシーンがあるのですが、これは暁子の「周りから浮くほどの美人っぷり」を表すシーンで、そのために最初に談笑している女性が「ちょうどいいあまりかわいくない(ブスではない)女性」だったのがあまりにお見事で、本編と関係ないのに私は爆笑してしまいました。笑わせるシーンでもないのに。


とはいえ、面白かったのにきちんと理解できなかったので消化不良は否めない。映画評論家の宇野惟正さんは「この作品は『これが分かるの、自分だけだ』という秘密の共感が広がって」と書いていましたが、そうなのかー。私は「分からなかった側」なのかー。宇多丸さんや町山さん、解説してくれないかなー。


吉田監督のその他の作品についての私の感想エントリ↓
ese.hatenablog.com
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『パーマネント野ばら』のエントリは書いていませんが、見ました。いい作品でした。ラストはホラーだった! 


美しい星 (新潮文庫)

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映画『美しい星』オリジナル・サウンドトラック

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