やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『日本で一番悪い奴ら』 感想

バカまじめ


『日本で一番悪い奴ら』を見ました。公式サイト↓
www.nichiwaru.com
『凶悪』の白石監督だし『凶悪』と同じく実際の事件を題材にした作品なので、見る前は重くてシリアスな作品なのかなーと思っていたのですが、完全なエンタメ作品でした。
面白かった!


検挙点数のためにヤクザやチンピラとつながりを持ち、拳銃検挙のために拳銃を購入し、拳銃検挙のために覚醒剤の密輸を見逃す。本末転倒!しかもこれ、警察組織ぐるみですからね。しかもこれ、実話ですからね。
キャラクター造形は映画オリジナルだそうですけど、エピソードは全部本当にあったことなんですって。映画を見た原作者が「2点事実と違う。俺は捕まるときは暴れなかったしさすがに警察署内でセックスはしてない」と言っていますが、違う点それだけかよ!それ以外は事実なのかよ!


綾野剛演じる諸星は、やったことだけ見れば警察官の風上にも置けないワルですが、映画を見ていると「バカまじめ」だっただけなのでは、と思うのです。柔道が強かっただけで警察にスカウトされ、何となく入ったから「市民の安全を守るために」なんて思ってもいないお題目を唱え、ようやく見つけた憧れの先輩のようになりたくて言われるままに裏社会に飛び込んでいく。そして先輩がいなくなった後は自分がこの街の顔役になっていた。
その後も上司に「拳銃何とかならんか」と言われるから拳銃を仕入れたり宅急便で送らせたり。バカまじめなんです。まじめなんだけど、バカなんです。


ついには「拳銃200丁を仕入れるために、まずは覚醒剤20㎏の密輸を見逃す」という本末転倒な計画を立てます。それも警察署の上司や税関職員も含めた会議で決めているのです。
「え、拳銃買うの?」「え、覚醒剤見逃すの?」上司の言い分、もっともです。「はい(それが何か?)」「拳銃と覚醒剤、どっちが大事なんですか!」諸星の言い分、おかしいです。しかしこの組織では諸星の言うことがまかり通るのです。


S(スパイ)の舎弟の結婚式に出席して「これからもチャカあげような!」なんてスピーチする諸星。しかもこの結婚式には警察の上司も同席している!この世界、何が正常なのか分からなくなる!


さすがにやり過ぎで地方に飛ばされてついには自分も覚醒剤に手を出してしまい、お縄に。しかし諸星以外の逮捕者は一人も出ませんでした。繰り返しますけど、これ、実話ですからね。
稲葉事件 - Wikipedia
wakatake-topics.com
そう、この作品は「日本で一番悪い奴」ではなく、「日本で一番悪い奴ら」なのです。その「奴ら」は諸星の仲間ではなく、北海道警察の内部の人たちでしょう。これだけの事件を起こして誰も逮捕されない、誰も責任を取らない。こいつらが一番悪い。


役者は皆さん素晴らしかったです。
綾野剛
細すぎて貫録が足りない、柔道が強そうに見えないという外見的弱点はありますが、演技はとてもよかった。彼は脇で光る役者だったのに、いつの間にか主役で輝く役者になりましたね。
バカまじめな純情青年が街の顔役になる場面(振り向いてタバコの煙を鼻からぷかーっと出す場面)、覚醒剤を打ったときの反応、シャブ中のかすれた声など、「これぞ役者!」な演技をしてくれました。
●YOUNG DAIS
チンピラ舎弟役が上手い!「ちーっす」の感じが上手い。ラッパーよりこっちが本職になるのかなー。『TOKYO TRIBE』よりもよかったよ。
植野行雄(デニス)
パキスタン人役なので片言日本語で済むのが幸い。そして上手かった。コントではなく映画の演技としてコメディができているし、シリアスな演技もよかった。
中村獅童
この人絶対歌舞伎役者よりヤクザ役者の方が上手い。「はいこんちはー」、これ、日常で使いたくなるセリフ!使っても誰も気づいてくれないだろうけど。
ピエール瀧
リリーさんとともに「本編がっつり出なくてもおいしいところ持っていきます」な人だなー。
矢吹春奈
この映画で初めて脱いだのかな。脱ぎ損にならないように今後も頑張れ。グラビア時代よりおっぱい縮んだのかな、水着で盛っていたのかな、とかを思っていました。演技は及第点。脱げなかったら起用されなかったでしょう。
瀧内公美
この人知らなかったのですが、おいしい役。あとで調べたらこの人も脱げる人なのになぜ本作では下着止まりなんだ。おっぱい必然の場面でおっぱいが出ないと何かしら裏事情(もともと脱げない人なのか本作の契約なのか)を勘ぐってしまう。これだけいろいろやっている作品なんだから、そんなゲスの勘繰りさせないようにきちんと脱がそう。何となく詭弁を弄しているような気もするが、本心です。
木下隆行(TKO)
ヤクザの怖い親分でなぜ木下なのかー。演技はそんなに悪くないけど、どうしてもTKOがちらつくのでよくない。怖い人なんて他にもたくさんいるのになぜ彼をキャスティングしたんだ。
●その他
警察の上司の皆さん、キャバクラのおばちゃん(ブスすぎず美人すぎず、ちょうどいい顔。なおかつおっぱいがリアリティを増す)、皆さんナイスキャスティング、ナイス演技でした。


見る前は「途中で悪の道に踏み外す警察官」作品だと思っていたのに、見ている最中はずーっと「正義のために拳銃を摘発する警察官」なのです。組織のために(正確には検挙点数のために)職務に励んだ警察官は、逮捕された後も「早く警察に戻ってまたしっかり仕事をしたい」と言うのです。バカまじめだから。


神奈川県警や大阪府警の不祥事がたまにニュースになりますが、これは不正や悪事が表面化するだけまだ真っ当で、全く何も出ない地方警察の方が危ない、なんていう話も聞きます。怖い。実際はどうなんでしょうかね。


というわけで、面白かったです。R15ですがそんなにグロい場面はありません。覚醒剤を扱っているのとおっぱいが出るのでR15になったのでは。


恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白 (講談社文庫)

恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白 (講談社文庫)