やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『ドント・ブリーズ』 感想

体液軍人


映画『ドント・ブリーズ』を見ました。公式サイト↓
bd-dvd.sonypictures.jp
公開時から話題でしたが、私の住む地方では上映されず、レンタルでの鑑賞。


ジャンルはホラーですが、実際はサスペンス。盲目だけどめちゃ強い退役軍人ジジイと悪ガキ強盗の闘いと鬼ごっこ。しかし途中からこのジジイの強さに「このモンスター級の強さ、ホラーじゃねーか」と思いながら見ていたら、あの監禁部屋で「うわ、こいつヤベー奴だ。ホラーだ!」と確信しました。さらにその後の冷凍精子を解凍してスポイト注入する場面なんて「ホラーよりおぞましい!」と思うに至りました。


オープニングは空から街を見下ろすショット。徐々にカメラが下がっていくと、誰か歩いている。カバンでも引きずっているのかなーと思いながらカメラが寄っていくと、何と引きずっているのは人間!このオープニングショット、超いい!怖いけどカッコいい。いきなりぞわっとさせる素晴らしいオープニングでした。


家の中の攻防はネタに限りがありそうなのにいろいろアイデア満載で素晴らしかったです。見えないから音を立てなければすぐそこにいても分からない(本当に見えてない?気づかれてない?という緊迫感も)という特殊ルールや「自分は見えるが相手は見えない」という有利な条件が電源を切ることにより同条件以下になるところとか。
家での攻防からようやく脱出して一件落着かと思うと、犬の登場。上手い。ようやく犬に勝利したと思うと背後からジジイ!そしてあのオープニングにつながる。怖え!


ただ、こういう作品では追う側と逃げる側のどちらかに感情移入しながら見るものです。危ない、逃げろ!とか逃がすな、追え!とか。それが、この作品ではどちらも理があり非があるので、どちらにも肩入れできない。
強盗側はいくら家庭の問題があろうと盗みは犯罪だし、ジジイ側は娘を殺された悲しみは理解しても犯人監禁はやりすぎだし。どっちでもいいので、善悪はっきり分かれていた方がよかったなー。ホラー映画ということでジジイをモンスターに描くなら、盗みに入られても仕方ない悪ジイだったり悪ガキも脅迫されて仕方なしに盗みに入るという事情があったりとか。


ラストもジジイは生きていましたというオチですが、盲目なのでさすがにカリフォルニアまでは追ってこないはずなので「終わっていない」「逃げきれていない」という怖さがないのがもったいない。
盗みに入る前に航空チケットを購入しておいて、現場で落とす→空港で同じ便の別の席を再度購入→実はジジイがそのチケットを持っていて、同じ便で遭遇、というオチはいかがでしょう。


面白かったです。ホラー的な演出の怖さもサスペンス的な「逃げ切ったと思ったらまだ終わっていなかった」の脚本の上手さもどちらも両立している。そして88分という短さ。「100分を切る映画に名作は多い」という私の持論を裏付ける1本になりました。あとは、上に書いた感情移入(肩入れ・応援)のしにくさ。そこだけがもったいないなー。


この作品は映画館の暗闇&大人数で見たらより面白かっただろうな。まさに暗闇!とか自分たちも息をひそめる!とか。