やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『ベイビー・ドライバー』 感想

ネタバレあります


映画『ベイビー・ドライバー』を見てきました。公式サイト↓
www.babydriver.jp
全然知らない作品だったのですが、Twitterで皆さん絶賛なので見てきました。


前半最高!車!音楽!恋愛!


予告編見てください。
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ほら面白そう。
これでもまだ首を縦に振らない人はこちらを見てください。映画の冒頭6分間の「つかみアクションシーン」です。
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サムネのフォントがダサいけど気にしないで。本当はこの場面は映画館で見てもらいたいので動画は見ないでほしいです。


このつかみのオープニングの後、タイトルバックと主要キャスト・スタッフの名前が出るオープニングクレジットのシーンなのですが、主人公ベイビーがi-Podで聴きながらノリノリで街を歩くシーン、街の人や音までがi-Podの音楽とシンクロしているのです!さらにここ3分くらいノーカット!すげー。この二つのオープニングで一気に掴まれました。
公式サイトに「カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』!」と書いてありましたが、まさにそんな感じ。いいコピーだとは思わないけど、伝わりやすい。


天才的なドライビングテクニックを持つ少年。幼い頃に交通事故で両親を亡くしその後遺症で耳鳴りがひどく、それを消すために音楽が手放せない。趣味は録音した会話をサンプリングしてオリジナル音源を作ること。
少年は組織から抜けたいけどもちろん簡単に抜けさせてくれない。そんなとき運命の出会いが…。
何だこの設定。少年マンガか!いいんです。こういうのはベタがいいんです。


もうね、途中まで最高。ベイビーの家には耳の聞こえない養父がいて手話を交えながら楽しそうに暮らしている。音楽を流しながらノリノリで料理を作ったり踊ったり。そして夜な夜な録音素材を生かしてオリジナル音源づくり。
ふらりと入ったレストラン(ダイニングバー?)のウェイトレス:デボラに一目ぼれするベイビー。彼女も好感触。
なんだこりゃ、ワクワクとドキドキとニヤニヤしかないぞ。


ようやく最後の仕事を終えて組織から抜けられたベイビーはデボラを高級レストランに誘ってデート。ここでの立ち振る舞いがスマートにできるのがちょっと不満。慣れないながらもエスコートしようとするベイビーに彼女も私たちも惚れるのに!
そしたらそのレストランに組織のボス:ドクがいて「また仕事やれ」と。断ったら足を骨折したり彼女に不幸があるかもしれないよと脅すドク。仕方なく再び仕事をすることになるベイビー。
いいぞ、ここもお決まりの展開。こうでなくちゃ。正しいエンタメの進め方です。


ここまで、「前半最高!」「途中まで最高」と書いている通り、前半はとてもよいのです。しかし、このラストの仕事のところからちょっとおかしくなります。


強盗の逃がし役という「悪の組織の一員」でありながら自らは暴力をふるうことのなかったベイビーですが、急にいろいろやっちゃう。この辺の決意や翻意の部分がよく分からなかったです。助手席の人を串刺しにしたり銃で撃ったり。
この串刺しで車が動かなくなるのでそこから走って逃げるのですが、この作品でそういう普通のアクションやる必要あるかな。
何とか逃げ切って彼女のレストランに着いたら強盗チームのバディが店にいた。あなた、逃げなくていいのかい?撃たれそうになるがたまたま警察が来たので難を逃れるベイビー。しかしその直後バディの銃を奪って撃つ!こんなに警察がいる中で撃つのかよ!
で、ドクのところに戻って交換条件を出して説得するもけんもほろろ。しかしデボラが一緒にいることを知ると急に気を変えて味方になる。急に変わりすぎだろ。
先ほど撃たれたバディは生きており、駐車場で最後の闘い。生きていても撃たれたんだからそんな自由に動けていいのか?ヤクを山ほど飲むとか何か理由がほしかったな。
最後の車同士の押し合い合戦は「殺す!」の強い意志がないとできない行動ですよ。怖いわ。
何とか逃げ切ったベイビーとデボラ。郊外の道をドライブ。あれ、ボニー&クライドにならないのか、と思っていたら検問があって万事休す。彼女は人質ということでベイビーだけ逮捕されます。
これはこれでいいラストだなと思っていたら、裁判があって「彼はいい人なんです」という証言者が次々に現れて5年で仮釈放。こんな甘々恩赦でいいのか。車盗んだ人にバッグを返したらいい人なのか。車盗まれているんですよ!郵便局へ入らないように忠告したらいい人なのか。強盗ですよ!


この後半に理解できない・納得できない部分がいくつもあり、「満点!最高!」とはいえない感想になりました。
最後まで自分は暴力を振るわない、銃は撃たないなどの縛りや彼女を守るために仕方なく、などがないとベイビーに肩入れできない。「とはいえ、あなたやることやってますよね」と思ってしまう。
そもそも、ベイビーは車を盗んだことがこの組織に入るきっかけです。じゃあ元はワルなのか。天才的なドライビングテクニックをドクに買われて養父の治療代などの名目でなかなか組織から抜けられない、など「本当はいい人ですよ」「悪いことは本意ではないですよ」などだったらいいのになー。
あと、冒頭の街を歩くシーンが音楽と完全シンクロしていて「歌っていないけどミュージカル」になっている点はとても良かったのですが、途中銃撃戦の銃を撃つタイミングなどまでBGMと完全シンクロしているのは好きでなかったです。そこも評価ポイントになる人もいるでしょうが、私は好きではなかった。アクションのリアリティや緊迫感が薄れちゃう。


でも、劇場で見る価値はあります。特に音楽好きの若者男子には刺さるんじゃないかしら。


<追記>
これを書いた翌日、このエントリを読んでとても腑に落ちました。そうか、これは「逃避」の物語だったのか。このキーワードを思いながら見るといろいろすっきりと物語が見えてくる。もう私の文章読まなくていいです。ここに素晴らしい評論がある。
jigowatt.hatenablog.com



Baby Driver (Music From The Motion Picture)

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Baby Driver

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