やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』 感想

やれることはまだある。やるかやらないか、認めるか認めないかだ。


映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』を見ました。公式サイト↓
shin-kansen.com
もともとホラーやゾンビ映画はあまり得意ではない(怖いから)のですが、Twitterであまりに評判がよかったので見てきました。
面白かった!


ゾンビ映画は「謎の疫病発生→ゾンビ登場→拡散・パニック→どうやって倒すか、どうやって生き延びるか→最後まで生き残ったのは誰か」という王道展開があります。テンプレともいう。
この枠内でゾンビ映画のほとんどは作られてきて、過去に名作がいくつもある中、どうやって新しいゾンビ映画を作るかというのが作り手の腕(才能・アイデア・技術)なわけです。
王道のコード進行でありきたりではない新たな名曲を作れ、という依頼と同じ。過去の焼き直しではなく、ゾンビ映画のルールを逸脱することなく、名作を作る。難しい!


できていました。
新幹線という限定された空間で密室ホラーの要素も入れた設定。車両の号車で区切られる「安全・危険」の領域分け、次の号車へと進むアクションゲーム感などもこの設定で上手く作用しています。
そして、新幹線の中だけでは飽きてしまうので次の空間設定へと進める脚本の上手さ。
また、登場人物がちゃんと生きていて、それぞれにふさわしい行動と生き様・死に様を見せてくれる人物造形と脚本のリンク。この人だからこういう行動をとる→その結果状況が良くなるもしくは悪くなる→最終的にこの人はこうなる。だってこういう人だから。
実は主人公がいちばんその辺の行動原理を描けていなかったのですが、それもラストへの壮大なフリだったのです。


ゾンビ映画には、その作品内での「ゾンビとしての行動条件」があります。この作品では
●走るタイプ…物陰に隠れるのではなく、一生懸命走らないと殺される。電車に乗れるか捕まるかという危機感の設定にも上手く作用しています。
●知能は低い…ドアを開けることはできないので、扉を閉めればとりあえず危機回避できる。ここはちょっと都合いいなと思いましたが。
●暗闇では目がきかない…新幹線の走るトンネルを上手く利用できる設定。
●物音に反応…相手をおびき寄せる技に使える。
などが本作における「ゾンビのルール」です。


主人公のいけ好かないファンドマネージャーと娘、妊婦の妻を守る肉体派おっさん、自分本位のわがままおっさん、青春真っ盛りの野球部男女、一市民代表のおばさん姉妹、敵かな?味方かな?のホームレスお兄さん。
これらの登場人物が危機を拡大・回避しつつ、順番にゾンビの餌食になっていきます。みんなに肩入れしちゃうから「えー、こんな死に方かわいそう過ぎる!」「えー、こんなクソ野郎まだ生きてる!」「ここで活躍するのか!」等々こちらの感情も動かされます。


クライマックス。ここまで散々わがまま放題で他人を盾にして生き残ってきたおっさんがゾンビ化してラストバトル。何とか生き残ったが自分も感染してしまった!
ここで娘と妊婦の女性に遺言を託し、自決。うわー、主人公死んじゃうパターンか!お父さんと離れたくない娘の「ごめんなさい」で涙腺決壊!


ラストは軍に撃たれそうなところを歌声で回避。うわ、冒頭のあれ、伏線になってる!お父さんに聞いてほしくて練習した歌が、お父さんに救ってもらった命を軍から救った。上手い!


ゾンビ映画というテンプレとルールと使い尽くされた表現方法の中、もっと新しいアイデアはないか、もっと面白い設定はないか。大人が一生懸命考えて実現させた傑作映画です。
ハリウッド映画に比べればお金はあまりかかっていません。CGもアラは見えます。それでもこれだけの作品が作れるのです。ゾンビ映画というお客を選ぶ題材でこれだけお客を呼べるのです。
『マッドマックス怒りのデス・ロード』でも『シン・ゴジラ』でも、極端に尖った作品だったからこそ傑作になり、評価されました。
これだけみんなの好みが細分化して国民的ヒットが生まれなくなった現在、最大公約数を目指して70点取るよりある程度の母数の中で5億点取った方が結果的にヒットの幅は広がるのではないでしょうか。
ゾンビ映画でなくてもいいのです。映画会社はもっと作り手を信じて、作り手はもっと観客を信じて、面白いものを作ってください。


新感染 ファイナル・エクスプレス (竹書房文庫)

新感染 ファイナル・エクスプレス (竹書房文庫)