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映画『猿の惑星 聖戦記(グレート・ウォー)』 感想

シーザー一代記


猿の惑星 聖戦記』を見てきました。公式サイト↓
www.foxmovies.jp
前作の感想↓
ese.hatenablog.com
このリブートシリーズは本作で完結なのですね。私はてっきりオリジナルに倣って5作で完結させるものだと思っていました。長くなり過ぎずちょうどいい。


さて、前作『新世紀』は第1作『創世記』の10年後、本作はその2年後の設定です。ということは、人間、わずか12年で滅びちゃうのか!早い!弱い!


コバの反乱により人間との全面戦争が避けられなくなった本作の時代。さらにこの時代になると人間側に寝返る動物もいて、より事態は混沌としている。
シーザーは捕虜を生きたまま送り返し、「人間が攻めてこなければ戦わない」というスタンスをとりますが、人間どもはそうはいかないので戦いは収まることがありません。
もうこの作品内では「猿、進化してるなー」「進化しすぎだろ」という感心やツッコミは無用です。猿と人類は完全に対等の関係であり、米国vsベトコンのような構図です。


素晴らしいリーダーとして君臨していたシーザーですが、妻と子供を殺され、復讐に燃えます。エイプの仲間よりも復讐を優先してしまい、側近からも「まるでコバだ」と恐れられます。
この辺は「いくら身内を殺されてもシーザーなら組織としてのリーダーを優先するんじゃない?」と思いましたが、そうしないと話が「人間との対決!」にならないので仕方ない。そして脚本もその辺の無理を感じさせない筋運びでした。
(でも軍を追っていく様子は「丸見えじゃねーか!」と思いましたが)


途中、病に侵された少女と出会います。ひとりぼっちにさせられないので連れて行く猿の軍団。オランウータンの背中にしがみついたら臭いだろうなーと思いながら見ていました。
もうひとり、動物園から逃げ出したバッド・エイプとも出会います。貧相な見た目は『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムみたい。


ようやく軍の施設に到着すると、何と仲間が捕えられていました。そしてシーザーも捕えられ、強制労働に従事させられます。ドラクエ5みたい。
そこから脱走計画を練る猿軍団。『大脱走』じゃねーか!
そして大脱走と最後の戦い。ここでオープニングでシーザーが逃がした兵士がシーザーをボウガンで撃つ!そして危機一髪のところでシーザーを裏切ったゴリラがこの兵士を撃つ!ここ、上手いなあ。オープニングからの人間関係が全部フリになっている
大爆発と大雪崩。劇場で見たので音の迫力が素晴らしく、いいシーンでした。


さあ、大雪崩で人類滅亡してシーザー一座は新天地へ。そこでシーザーはボウガンの傷がもとで亡くなってしまいます。神話の始まり。


これでオリジナルの『猿の惑星』第1作につながる?猿が人類を家畜扱いしている未来につながる?うーん、ちょっと違う未来になりそう。パラレルワールドとしての未来なのか。コバが勝っていたらオリジナルの未来になるのかも。もしくはコーネリアスの子孫が猿の王国を築いていく中で人間に対する扱いが変わっていくのかな。


上にも書きましたが、シーザーが薬で知能向上してから12年で人類滅亡ですよ。いくらなんでも早すぎる。あの薬で知能向上したエイプはほんの数十頭。進化に対するツッコミは無用ですが、それにしても一族進化しすぎ。
前作の感想にも書きましたが、エイプの進化と人類の衰退を描くためにそれぞれ50年ずつくらい間を空けた方がいいのでは。世代交代や教育・文化の蓄積がエイプを一族ごと進化させるのでは。
このシリーズをシーザー一代記として描くために短い年月でまとめる必要があったのかもしれませんが、もっと壮大にしてもいいのでは。ゴッドファーザージョジョのように主人公が変わっていくお話でもいいのに。


あと、本作に登場するキーパーソン、ノバ。この子、意味ある?ストーリーにも何もからんでこないけど。
バッド・エイプも、あまり意味なし。こんなの仲間のエイプで十分。コメディ担当なのかもしれないけど、彼だからこその必然がありませんでした。あと、そもそも動物園脱出組は薬の効果を受けていないのでいくら飼育員のそばにいたとしてもしゃべれないぞ。


ついでに。この作品がオリジナル1作目につながっているとすると、この人類崩壊前にテイラーの乗ったイカルス号は打ち上げられていることになります。うーむ、科学技術の進歩としても矛盾がでますな。まあ、そこはSF映画におけるヤボなツッコミなので見逃すとしよう。


本作は「聖戦記」と謳っているわりに、人類vsエイプの構図が不完全(ラストの戦いは単なる脱走劇)だし、エイプの勝利や人類の滅亡が明確でないのでカタルシスが足りない。そして着地した結末もオリジナル1作目につながる円環構造になっていない。
というわけで、あまり絶賛という感想ではありませんでした。見ている間はずっと面白いんだけどね。