やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『IT』 感想

「怖い」とは


映画『IT』を見てきました。公式サイト↓
wwws.warnerbros.co.jp
副題の「”それ”が見えたら、終わり。」はとても良くない!「IT」だけだと何のことか分からないと思うので副題付けたのでしょうが、良くないものは良くない。逆に「IT」だけの方が自由度があっていろいろコラボもタイアップもできたのでは。


この作品は1990年に映像化されており、今作を見る前に見たら、とっても面白かった!ホラーだから怖いから見てなかったのに、これ、青春ジュブナイル映画じゃないか!『スタンド・バイ・ミー』『グーニーズ』のあの感じです!
ホラー要素は多くなく、スプラッターではなくファンタジーな感じ。前半の子供時代の話は、ずっとワクワクドキドキで少年たちに頑張れ!と感情移入しながら見ていました。


で、本作の感想は「前作の方がいいな」です。
でも、これも1990年版を先に見てしまったからなのかもしれない。何も知らずに今作だけ見れば「面白かった!」と言っていたかも。


1990年版は、少年たちのキャラ紹介が丁寧。ちょっと並列的な感じはしますが、分かりやすい。それに比べて本作はストーリーと並行してキャラ紹介がされるので、しっかり見ていないと顔と名前、キャラと苦手なもの、などが分かりにくいかもしれません。初見の人、どうでした?
あと、この作品はペニーワイズというピエロが敵役なのですが、こちらも1990年版の方がいいなあ。1990年版の「かわいく振舞っているけどそれがキモい、怖い」と違って、今作は「怖いピエロだぞ」が全面に出ていて、「ピエロ=道化」なのに怖い、というギャップがなかった。


オープニングの船を作って雨の中遊びに行く場面は1990年版と全く一緒。それがペニーワイズがジョージーの腕をガブリ!えー!いや、ガブリでもいいのですが、本当に噛み千切られた表現はいらないなー。そういう物理的な痛みより、はっきり映さずペニーワイズの世界に飲み込まれたということにすればいいのに。
その後もホラー表現は結構直接的。それは上記のような手足もげる表現ではなく、大きな音でびっくりとか、ピエロが気持ち悪い動きで近づいてくるとか、そういう「子供から大人でも物理的にびっくりする怖がらせ」なのです。そりゃびっくりするけどさ、「怖い」ってそういうことじゃないぜ。特にこの作品は「子供の心の不安を具現化した怖さ」がホラー描写の中身なんだから、もっとファンタジーな表現でよいのでは。
そのくせ「井戸の家」はディズニーのアトラクションのような作り物感。この作品、現実と悪夢の見せ方が逆のような気がする。


不良グループやいじめっ子とのいざこざも、強烈すぎない?トイレの汚物をぶちまけるとかナイフで腹を傷つけるとか。子供のいじめのレベルじゃないぜ。
石を投げ合うシーンがあるのですが、それは痛すぎるよ!石だよ!これは1990年版にもあったけど、石だよ!あと、ラストで血の契りを結ぶシーンも、痛い痛い!と思いながら見ていました。子供があんなことするかなー。
全体的に、この作品の登場人物は痛みに鈍感だ。


下着で泳ぐシーンは、1980年代後半であり得るのかな。いくら子供だからといえ、裕福でないとしても、水着くらい持ってるだろ。さらに女の子も下着で一緒に泳ぐなんてありえん、許せん、けしからん。騎馬戦なんかしたら勃起不可避だよ!
水着用意してよー。意味変わってくるよー。


青春ジュブナイル感は今作も十分描いているのになぜ私は足りないと感じたのかな。自転車で走るシーンが少ないから?下着で泳ぐから?
ラストもキスなくてもいいぞ。ベンがかわいそうすぎる。ラブレターの詩を送ってくれたのがベンだと分かってもビルを取るのかー。切ないなー。


クライマックスのペニーワイズとの闘いの場面、1990年版はベバリーがパチンコ(ギャンブルではなくゴムで標的に当てる方)の名手で銀の弾が聖なる力を持つという「倒すロジック」がありましたが、今作はそれがない。いったい彼らはどうやってペニーワイズを倒すつもりだったのでしょうか。ビルが槍みたいなものを背負っていましたが、使わなかったし。
で、いよいよ闘いのときに物理的に攻撃するのですよ。ペニーワイズが物理的に実在するのか子供たちの恐怖の具現化なのか分からないのが怖い(そう、「分からないから怖い」のです)はずだったのに物理攻撃が効くのか。
そして子供たちの一斉攻撃はいじめっ子がしていたリンチと同じじゃないか。やられそう→僕が足を抑えているぞ→俺は腕を→今だパチンコで攻撃!とかの方がいいのでは。
で、結局ペニーワイズは井戸の奥へ消えていくのですが、一応「こういう理屈で倒す(実際には倒せなくてもいい)」がないと「やっつけた感」がなく、ただ消えていったようにしか見えません。


これも、見ている最中は「あの長さ(1990年版は187分あります)を1本でやるには仕方ないか」と思っていたのですが、これ、第1章なのね。半分か。前半部分で135分使うなら、もっと描けたと思うけどなー。


ああ、酷評みたいな文章だな。この作品が好きだからこそ「それじゃない感」を思ってしまい、こんな文章になってしまいました。
あと、この作品はR15なのですが、腕ガブリとかの残酷描写は減らして、PG12に抑えてほしかった。上記のように青春ジュブナイル映画なのだから、中学生に見てもらうことが大切。本国アメリカでもR指定くらっていますが、その辺のことは考えなかったのかな。ヒットしてるけどさ。
吃音、デブ、極度の過保護、厳しすぎる躾、親からの性的虐待など、大人の私たちよりもリアリティと実感を持って見る子供たちがいると思うのですが、何とかならんかったのかな。このような具体的な同一点でなくても、いじめられていたりスクールカースト底辺の子たちが彼らに感情移入して頑張れ!と思ってもらう作品だと思うのです。


とはいえ、続編が公開されたら見に行きますよ。楽しみです。