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『M-1グランプリ2017』 感想

MVPは芸人さん、次点はお客さん


M-1グランプリ2017』を見ました。面白かった!
M-1関連のエントリ↓
ese.hatenablog.com
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去年の大会はツイートしながら見ていてそれで満足したのでブログには書きませんでした。今回もTwitter片手に見ていましたが、書く。


今回は、敗者復活組を最初に発表するのとネタ順をその都度クジで決めるというのが大きな変更点。
これはとてもよいと思います。毎回敗者復活組は番組の一番盛り上がるところで登場して、しかも「敗者復活だ!いったれ!」という空気も後押しするのでとても有利。一度負けている敗者なのに勝ち上がった決勝組より有利にするやり方はずいぶん前から改善を求められていました。なので、とてもよい。
ただ、今回のゆにばーすの出来と得点を見ると、やはりトップバッターが不利なのは変わらずでしたね。
クジでネタ順をその都度決めるのは、良し悪しですね。個人的には控室で異様な空気の中自分たちの順番を待っている芸人さんを見るのが好きなので、ずーっとイスに座って待っているのはあまりいいことではないような気がします。
なので、私が提案するのは、
①番組開始直後に敗者復活組を発表
②彼らが到着するまでに過去のおさらい、今大会のルール説明、審査員の登場と紹介などを行う
③トップバッターは敗者復活組で固定
というものです。その他の演者たちは、オープニングでクジを引くか事前に決めておくかはどっちでもいいですが、その都度よりも順番が分かっていた方が私はいいと思います。


では、それぞれのネタの感想を書きます。ちなみに私は準決勝や敗者復活戦などは一切見ていません。ネタ番組もほとんど見ないので、芸人のキャラについてはあまり知りません。そんな素人目線です、という逃げを打って、書く。


①ゆにばーす
「ホテルに泊まる」
彼らのネタは見たことありません。『ゴッドタン』で川瀬名人を取りあげた回を見たくらい。彼がM-1に並々ならぬ意気込みを持っていることは知っています。しかし、トップバッター。さて、どうなる。
面白かった!
ネタも面白かったですが、それ以上にお客さんが温かくてよかった!毎回トップバッターが苦戦するのは審査員が基準点として置きにいくのと、お客さんが温まりきっていないから、という二つの理由があります。そのうちのひとつは解消されました。今回はここ以降もずっとお客さんは盛りあがっていて、とてもよかったです。お客さん、ありがとう!
ネタはボケてツッコむ、正統派の流れ。「1階」というボケもオチにつながっていてきれい。でも、もっと上手くなるしもっと面白くなるぞ。sと、川瀬名人の『ゴッドタン』の回に期待。


②カミナリ
「一番強い動物は?」
カミナリは前回上沼さんに「叩くのはいかがなものか」と言われていましたが、今年はどうか。
叩いた!これが彼らの漫才スタイルなのでこれでいいのです。また、この叩きはたくみくんのノリツッコミの「気づき」の合図なので、必要なのです。上沼さん、認めてあげて。
彼らのネタはまなぶくんの間違い発言のボケをたくみくんが正すツッコミという流れなので、見ている私たちがまなぶくんの間違いに気づいてしまうとたくみくんのツッコミが活きないという弱点があります。それをカバーするのがツッコミの語彙なわけですが。
面白かったですよ。オチの「モグラ」がもっといいチョイスだったらなお良しだけど。


とろサーモン
「旅館の女将」
彼らは面白いけど、久保田がクズなので、いまいちブレイクしない。でもそれで腐っている方が彼らに似合うというジレンマ。
面白かった!途中の猿のくだりはイマイチだったけど。オチでなかなか終わらない「続行!」もよかった。ボケとツッコミと両方で笑いを取っているのもよかった。


スーパーマラドーナ
「合コン」
私、田中君好きなので評価甘くなるのですが、今回も面白い!田中は変人なので「会話→訂正」よりも「泳がせて外からツッコむ」今回のやり方は大正解だと思います。
ネタ中のボケが途中にも活きてきて、最初のオネエもラストにからんでくる。大吉先生も言っていましたが最後のオチでもうひとつ何かあればさらによかったのに。「オネエそっちやったんかい」で終わってもよかったのでは。


かまいたち
「怖い話」
ぼやき漫才は、基本マイナスのことを言うので、「漫才を見ていて楽しい、面白い」というプラスの感情を少し下げることになります。ブラマヨの漫才のようにぼやきの内容がしょうもないとか間違っているとかならいいのですが、正論だとマイナスの効果が強くなります。
今回も「怪談はおかしい」というぼやきなので、正しくて困る。でも、それをはねのける面白さでした!後半からテンポもテンションも上がっていくネタ構成も上手い。
あと、卍って今女子高生の間では別の意味で使われているので、彼女たちが見たら違う感じに見えるのかな?


マヂカルラブリー
「野田ミュージカル」
私、今回で唯一はまらなかったネタでした。ああいう突拍子もないボケは、はまれば爆発だけどはまらないとポカーンだからなー。
野田君、緊張していたね。ツッコミの村上君はまだ上手くない。
今田さんの「最後までやり切りました」という発言は「ウケなかったけど」という言葉がその前にありますね。


さや香
「歌のお兄さん」
全く知らない、お初のコンビですが、面白かった!今の若い子は見た目もシュッとしてますな。
ネタの空気が「楽しい」なので、見ていて応援したくなる。声も出ていた。最初の挨拶でちょっと噛んだのが痛いし、つかみのMステはイマイチでしたが、歌のお兄さんにはまってからは最初の空気を完全に消してくれた。
でも、見返したらまだ詰めきれてないというか伸びしろがあるとも思ったので、また来年、待ってるよ!
上沼さんの「彼らは漫才から離れてもスターになると思う」という発言、私も同意です。


⑧ミキ
「漢字が苦手」
私、ミキの人気がいまいち分からないのです。関西では特に人気ですが、その人気のすごさと自分の分からなさのギャップで、彼らのことを正当に評価できていません。
今回のネタも「小学生みたいなボケばかりだな」と思いながら見ていました。あまり「兄ちゃん兄ちゃん」言うのもどやねんと思うし昴正のツッコミは声が苦手だし。
でも点数高いのねー。


⑨和牛
ウエディングプランナー
上手い!登場からノータイムで設定に入り、それがひとつのボケになっているのが上手いなー。
和牛は上手いし面白いのですが、パワハラモラハラのネタも多くて、さらに演技も上手いから見ていて面白いのに嫌な気分になることがあります(上記かまいたちのところで書いたことです)。水田の顔も楽しい顔ではないので余計に。
それが、今回はそこを上手く外してきたのがよい。「肩触んなよ」の部分はあったけど。オチで前半の回収があるところもコンテスト向きのネタ。


ここでどのコンビが残って落ちたかで今田さんとスタッフの間でごにょごにょひと悶着。ぐだぐだのままCMにいきましたが、ここでこのスタッフは偉い人にしこたま殴られたことでしょう。この熱と流れを削ぐなよー。


ジャルジャル
「ピンポンパンゲーム」
うわー、ジャルジャルだー。ジャルジャルだなー。ジャルジャルしかできないネタだー。毎回「どういう発想やねん」と「よくこの発想を笑いに変えられるな」と「どんだけ練習したんだろ」をいつも思ってしまいます。
これはネタとして面白い、はもちろんですが、「ゲームとして面白い」というinteresuting(興味)や「こんなことをこのテンポでよくやれるな」というwonder(感嘆)もひっくるめての「面白い」ですね。
ただ、これがM-1で勝てるネタかというと、結果のとおりそうではないわけで。彼らがすごい・面白いは分かりますが、「このコンテストで勝つためのネタ」はまた別なんじゃないかという気もします。「そこをあえて自分たちらしさで強行突破」という擁護意見も分かりますが、M-1で勝つことを目標にするなら、そこは違う選択肢をチョイスすべきだったのかもしれません。あくまで結果論ですが。
また、このネタ順も彼らには不運でした。ミキ・和牛という優勝候補が連続で来て、次にジャルジャル。見ている方の集中力も少し弱くなるのは仕方ありません。しかもネタ前にCMが入り、空気も熱気も集中力も一旦リセット。さらに上で書いたスタッフのとんちんかんも加わり、流れとしてよくないタイミングでした。
ネタ順はクジ引きなので仕方ないですが、CMの入り方は何とかならなかったのかな。9組目を引く時点で10組目も分かるのですから、ラスト2組はCMでまたがず、連続でやってほしかったです。


最終決戦①とろサーモン
石焼き芋
私はこの時点で、和牛優勝だな、ミキの勢いも怖いな、と思っていてとろサーモンはノーマークでした。彼らの芸風を考えてもここでスベって爪跡を残す方がいいんじゃないかと思っていました。
しかし、ネタは面白かった!久保田のクズな部分が上手くネタに反映されていてよかったです。


最終決戦②ミキ
「ダースベイダー」
うーん、やっぱり私ははまらないなあー。「名札付きのワル」「高倉健緒形拳」「光GENJI」とかのボケは年配漫才師のネタみたい。あと、総書記とか「見失う・見送る」のボケは1本目ありきのかぶせなので、それも好きじゃない。
ただ、テンポと間は素晴らしい。兄弟ならではのシンクロ具合も素晴らしい。会場もウケていました。


最終決戦③和牛
「旅館の女将」
とろサーモンが1本目に旅館の女将のネタをやったのを分かっていてこのネタを持ってきたのは、彼らの自信の表れでしょう。同じテーマでも俺たちの方が面白いぞと。
で、実際面白かったのですが、このネタは上でも危惧した「水田嫌な人ネタ」なのです。とても上手くてとても面白いのですが、嫌なやつに素直に笑えない部分もありました。とはいえ、二人のセリフ回し・間・演技は申し分なし。上手い!


さあどうなる。個人的には和牛かなと思いましたが…
とろサーモン!!
びっくり!テレビ見ながら声出たわ。


いやー、そうか。今回は最終決戦に進めなかったコンビも含めてみなハイレベルだったので、どこが優勝しても文句ないです。とろサーモンは1本目3位からの大逆転といわれていますが、優勝は最終決戦の出来で決めるので、1本目は関係ないのです。1本目は最終決戦のネタ順を決められるアドバンテージがあるだけ。
とろサーモン、おめでとう!
ちなみに各審査員の点数の分布はこの通り↓


今回のネタのタイトルは↓ここの記事から拝借しました。
gendai.ismedia.jp
この記事の熱は大好きですが、「毎回別のネタなのはすごい」は同意しますが「毎回別のネタだからすごい」には同意しません。予選でどんなネタをしたかは決勝大会では関係ない。この場で面白いネタをしたコンビが勝つのだ。


今回はTwitter片手に見ていて、私が「面白い!」「イマイチ」と思ったネタに対して真逆の感想を呟く人がいて、それが面白かったです。なので、今回負けたコンビも、「あなたたちがいちばん面白かった!」と思ってくれている人はたくさんいるので、胸を張ってください。たまたまこの大会のルールでこの審査員だったからこの結果だっただけ。芸人の勝ち負けはここで決まるわけではない。10年後、20年後、30年後、まだまだ芸人人生は続く。


M-1グランプリは新しいスターを発掘する、と同時になかなか諦めきれない芸人にきっかけを与える、というのが当初の目的だったはず。それが「結成15年」と枠が広がったおかげでこのふたつの目的はぼやけてしまいました。現在の芸能界が40歳でも若手扱いなので全体的なスパンの伸長は仕方ないかもしれませんが、新鮮さや新しい才能よりも上手さの方が勝ってしまうようになり、そこは不満です。
また、審査員も2015のときは過去の優勝者が務めましたが、今回は上沼さん・巨人さん・小朝さん・渡辺リーダーなど、過去に逆戻り。新しい才能を見出すのが古い人たちでいいのか。


↑これは2015年大会のときのツイートです。私も「そうだ!新時代へ!」と思ったのに、また戻った。
このふたつで、M-1グランプリという日本最高の漫才大会が「上手い漫才師を決める大会」になるのはもったいないです。「新しく、面白い漫才師を決める大会」であってほしいです。


すげー長くなった。5,000字超えたよ。全体感想と個別のネタ感想分ければよかった。


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