バンドとは「このメンバーだから起きるミラクル」のこと

4番打者を集めても優勝できるわけじゃない

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
紅白が終わりました。今回はエレカシが初登場ということで（私の周りが）盛りあがりましたね。
で、今回の紅白に限らず、エレカシを見たり音源を聴いたりするといつも思うことがあります。それは「演奏上手くないな」ということです。

宮本さんが天才なのは周知の事実です。あれだけの名曲をたくさん作り、歌唱力は今が最高潮。変人部分はおいといて、天才なのは疑いようのない事実です。
でも、バンドメンバーの演奏技術は上手くありません。まあ、何をもって上手・下手というかについては人それぞれの価値観があるでしょうが、カラオケ採点機のような単純な技術力で測ったら、あまり上手いという評価は出ないと思うのです。（あくまでプロのミュージシャンの中で）
実際、プロデューサーがついてからの方がアレンジの幅は広がり曲に彩りを添えるようになりました。キーボードも入ったり別の人のギターが入ったり。
これを突き詰めれば、じゃあ、演奏そのものも別の人に変えればよりよくなるんじゃないか、メンバーチェンジをすればよりよくなるんじゃないかという極論になるわけですが、そうではない。もしそうなってもいい音楽・いいライブができるわけではない。そこがバンドの面白さ・不思議さなのです。

エレカシは宮本さんの専制君主のバンドで、宮本さんが気持ちよく歌えることがこのバンドにとって最も重要なことです。そしてそれは、上手いミュージシャンではできなくて、石君と成ちゃんとトミでないとできないことなのです。

バンドって不思議。

同じように、バンプも演奏が上手くありません。最近はバンドサウンド以外の音も使うようになった彼らは、藤原基央ソロでも成立するわけです。実際、かつて音源では増川のテイクは採用されず、藤君が全部弾いていたこともあります。昔の演奏をYouTube等で見ると、升君のドラムはよれよれのへろへろでとても聴いていられません。（どちらも、あくまで昔の話です）
それでも、藤君は彼らでないと音楽を続けられないのです。藤君の中にはただの昔からの友達という関係性だけでない、「彼らでないとダメ」という何かがあるのでしょう。

バンドって不思議。

もうひとつ、ウルフルズもそんなに上手くありません。（ああ、こんなことばかり書いているとどんどん敵を増やしそうだ）
実際一時活動休止した際、トータスさんは「ウルフルズの曲は大喜利のお題を考えるようなもんだしメンバーはやってもらいたい演奏できないし」とだいぶ鬱憤があったことをインタビューでぶちまけていました。
でも、トータスさんはウルフルズに戻ってきました。これにはソロ活動が思ったほど上手くいかなかったという実も蓋もない現実もあったと思いますが、それでも戻ってきた後はいい雰囲気のようです（あくまで外から見た私の印象）。
復活以降のインタビューでも「やっぱりウルフルズでないと作れない曲があるし歌えない歌がある」と言っていましたからね。

バンドって不思議。

演奏は上手い方がいいに決まっている。でも、バンドってそれだけではありません。曲作り、レコーディング、プロモーション、ライブ、ツアーなどいろいろな場面があり、家族以上に一緒にいる時間が長い存在です。そこでの人間関係はバンドの雰囲気に大きく作用します。
じゃあ最初からソロでいいのかというと、そうでもありません。ひとりで受ける注目やプレッシャーは、メンバーがいることにより分散されます。プロモーション等の仕事も割り振れるし。民生のユニコーンのときの「俺は5分の1だから何もしないよ感」がいい例です。

で、そういった人間関係だけでなく、いちばん大事な演奏自体も、ずっと同じメンバーでやっているとそのバンド独自のグルーヴが出るのです。このドラムとベースとギターでないと生まれない演奏、それこそが「バンドサウンド」でしょう。
桑田佳祐はサザンオールスターズを休止してKUWATABANDを結成したとき、ドラムは松田弘でした。降谷建志はDragon Ashの合間にソロ活動をする際、ドラムは桜井誠です（音源は降谷君がひとりで作っています）。
もちろんソロ活動ではバンドと違う人とやる方が多い（それがソロの醍醐味でもある）ですが、グルーヴの要であるドラムはやはり長年連れ添った音でないという人がいるのも事実です。

バンドって不思議。このメンバーだから出る音、このメンバーだからできること、このメンバーだから起きるミラクルがあるのです。それがバンドをやること、バンドを続けることの意味です。