やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『ブラックパンサー』 感想

もう1回見たらまた変わるかも


映画『ブラックパンサー』を見てきました。公式サイト↓
marvel.disney.co.jp
マーベルの作品っていつもこのページなの?あまりカッコよくないな。


私は、アメコミを全く見ません。見たのは『ダークナイト』を含むバットマン3部作と『アイアンマン』(1だけ)くらい。最近のアベンジャーズ周りの作品は全く知りません。
なので今作もスルーするはずだったのですが、あまりに世間が騒がしく、これはもうアメコミに収まらない作品なんだなと思い、見に行くことにしました。


面白かったです。ただ、世間の「超面白い!」にハードルを上げ過ぎて、そこまでノレなかったのも正直なところ。


王子として真っ当で裕福な生活をしてきたティ・チャラと父親を殺されたった一人で裏街道を生き抜いてきたキルモンガー。その対比なのでぱっと見「正義vs悪」の分かりやすい構図なのですが、ティ・チャラの父親は自分の弟を殺し、その息子を放置した。そして世界には差別と暴力がはびこっているのにそれを正すことなく自分たちの裕福な暮らしを優先するワカンダ国。それに対しこの世界を正すためにワカンダ国の技術を世界に出すべきだと主張するキルモンガー。さて、どちらが正しいでしょうか。
これはそのまま現在の世界(というかアメリカ!)の話ですよね。自国さえよければいいのか。しかし、あまり国を開放すると技術の流出や搾取も起きる。さあ、難しい問題だ。


それをアメコミ映画というエンタテイメントで描いているのが素晴らしいのですが、その意図が見え見えだとちょっと興ざめしちゃうんですよね。エンタメとしてめちゃくちゃ面白い!しかもよく考えれば現在の状況を映す鏡になっている!くらいのダブルミーニングがうっすら透けて見えるくらいがちょうどいい。
ラストに「困難に面したとき、賢者は橋を架け愚者は壁を築く」というセリフがありましたが、完全にトランプ大統領ディスじゃん。しかも国連での演説という状況。さりげなさゼロかよ!


お話やアクションはそんなにスゲエ!はないのですが、役者・美術・衣装・音楽が新しくて素晴らしいので、映画を見終わったときの「面白いものを見た」という快楽はあります。
メインキャストのほとんどは黒人俳優。今アメリカで活躍している黒人俳優総出演という意味ではこっちもアベンジャーズですよ。皆さんよかったですが、個人的にはティ・チャラの妹シュリがよかったです。若くて天才科学者という立ち位置が『ドラゴンボール』のブルマみたい。見た目は何となく小島瑠璃子を思いながら見ていました。もちろんキルモンガーイケメン!オコエ最強!さらにラストに出てくるあの少年は『ムーンライト』の主役シャロンの子供時代リトルを演じた子ですよ!
そして美術・衣装も「アフリカの民族性を取り入れつつ現代の最先端の建築・ファッション」になっています。戦闘機などはスターウォーズ感だなーと思いましたが。
そしてヒップホップが全体を通して鳴り響く音楽。これについては、もっとヒップホップだらけだと思っていましたが、アフリカ音楽の曲も多かったですね。


この作品がアメリカを始めとして世界中で大ヒットしているのは、上に書いたように黒人が主役のアメコミ作品ということと政治的メッセージのためでしょう。
それももちろん分かるしそれもいいのですが、それって映画の内容とは直接関係ないですよね。「黒人が出ているからいい」とか「トランプ批判をしているからいい」わけではないのです。あくまで主役は映画の中身であるべき。現実やメッセージが映画より前に出ているのは正しい形ではない。
で、その映画の中身はそこまで「最高!」と興奮するものではありませんでした。前半はずっとよかったんだけどなー。


このお話、王がその座を追われて再び立ち上がって奪還するという流れが『ロッキー3』みたいだなーと思ったのと、ラストにウカビが降参してその合図で仲間たちも戦いをやめるところは『HiGH&LOW』みたいだなーと思いました。
本編に関係ないけど、書きたくて書いた。


ツッコミポイントをいくつかあげます。
ワカンダ王国は超近代国家で超高層ビルがいくつも建っていますが、そこでの暮らしぶりは一切描かれない。街中はいつも牧歌的な市場や大自然しかない。あの都会の中では誰がどんな生活や仕事をしているんだ?
王の継承を決める闘い。これ、肉体的な強さだけある奴がいたらそいつが王になっちゃうけど、いいの?実際キルモンガーが王になっちゃったよ。
王は何か特殊なハーブを飲みますが、あれは一度飲んだらずーっと効いているの?そんなもの、この世にあるの?
ラストの戦いは、「結局内乱・内戦かよー」と冷めちゃいました。あと、オコエは「自分の意思とは違うが国に仕える」と言っていたのに結局裏切りました。クーデターじゃん。それはいいの?
ワカンダ国は母国語があるようですが、英語と混ぜこぜで話すのはなぜ?アメリカ人は字幕読めないから?メル・ギブソンの『アポカリプト』の頑固さを見よ。


この辺のツッコミは些細なことなので、本編の面白さを減じるものではありません。そして、もう一度見たら私の意見も変わっているかもしれません。
キルモンガーを「『ダークナイト』のジョーカー以来の素晴らしい悪役だ!」という意見もあるようですが、そこを見出せなかったんですよねー。身内に親を殺され(それは本人分かっていたのかな?)、絶望と憎しみの中育ち、現在のアメリカの悲惨な現状を目の当たりにし、何もしない祖国にいら立つ。その中で軍隊とMITという文武両道を成し遂げる意志と能力の高さ。そしてついに捕まえた坊ちゃん王子。この辺のバックグラウンドを感じることができなかった。それぞれ少しずつ描かれているので気づかなかった私が悪いのですが、そこを感じることができればキルモンガーを応援するほど思い入れを持てたかもしれません。


批判が多い文章になりましたが、面白かったですよ。ただ、世間ほど熱狂できなかったというだけで。


Black Panther: The Album

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