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映画『去年の冬、きみと別れ』 感想

小説だからできること、映画だからできること


映画『去年の冬、きみと別れ』を見てきました。公式サイト↓
wwws.warnerbros.co.jp
原作は読んでいません。


(以下、ネタバレあります。この作品はネタバレが重要なので、見る予定のある人は読まずにすぐ見に行こう!)


私は全然ハマりませんでした。セリフっぽいセリフと、演技っぽい演技と、演出っぽい演出。小説なら成立するセリフや展開でも、実写映像で描くととたんに「んなこたない」になってしまう。
と私は思ったのですが、ネットを徘徊したら褒めが多いですね。特に原作ファンからは褒められています。でも、それは「あの映像不可能作品を見事映画にしてくれた!」「小説を映画化にするにあたり上手い脚色!」という視点が多いです。それって、映画自体の評価と何の関係もないですよね。


叙述トリックを映像化したのは評価しますし、トリックにも「おお、そうか」と驚きましたが、その前で私の心は冷めていたのであまり乗り切れませんでした。
彼女「もう、結婚式の打ち合わせに遅れてくるなんて」彼氏「ごめんごめん、仕事が長引いちゃってさ」店主「はは、もう尻に敷かれているな」こんなセリフ、今どきありえますか?これだけで物語に入り込めなかったです。
あと、すれ違ったあとに振り向かないままセリフを言う場面とかも寒い!と思ってしまいました。


ネタバレすると岩ちゃん(恭介)が復讐のためにいろいろやっていたということなのですが、「そんなことあるかなー」といろいろ思いながら見ていました。
●百合子(山本美月)は計画のための相棒で、恭介は復讐が終わったら百合子に他人名義のパスポートとものすごい大金を渡していましたが、そのパスポートどうやって作ったの?そのものすごいお金どうやって用意したの?
雄大斉藤工)、いくら恭介のことを気に入ったからといって初対面の人にいきなり自宅出入り自由のカギを渡すかな。
●小林(北村一輝)はこの事件の中心人物なんだからこの事件を嗅ぎまわる奴がいたら全力で排除するはずなのに、何で途中まで協力するの?いくら編集長の指示だとしても、「やっぱあいつダメでした」で切ることはできるのに。それは文章力でも取材内容でも態度でもいくらでも理由はつけられる。
マリッジブルー雄大に横取りさせるための計画の一部で、そのためにレストランで喧嘩をする二人。雄大が遠くから覗いていることをどうやって察知したんだ。そしてそこで喧嘩しても雄大に喧嘩の内容は伝わらないぞ。
●たまたま雄大NTRを実行してくれたから計画は進みましたが、偶然に頼りすぎ。
●たまたま北村が取材を許可してくれたから計画は進みましたが、偶然に頼りすぎ。
●百合子のTwitterのアカウント名は「百合子」でしたが、いくら匂わせる用のアカウントだとしても、若い女性が本名でTwitterやるわけないだろ。もう少し練ってこい。
●焼死体、状況証拠と指輪だけで本人確定するとは思えないのですが。DNAとか歯の治療痕とか、きちんと事実に基づいた確定作業をすると思うのですが。
●その焼け跡から手帳が見つかり、そこに百合子の心の叫びが綴られている、ということが映画における泣きポイントだったり物語における「被害者可哀そう、加害者許すまじ」になっていますが、そんな上手いこと焼け残るかね!手帳だよ、紙だよ。
●恭介は雄大の姉朱里(浅見れいな)からMDMA的なものを飲まされ「自分が火を点けた」ということを聞かされますが、あんなに雄大のことを守りたかった朱里さん、何でそんな簡単に告白するの?
●朱里は幼い頃に父親に性的虐待を受けていましたが、カーテン全開で性行為に及ぶかね?
●その父親が殺され、幼い兄弟ももちろん被疑者として警察は疑いますが、兄妹が受けた傷は身長170㎝以上の大人がつけた傷だからこの兄弟が犯人ということはありえない、という警察の捜査。えー、傷口で犯人の身長まで分かるの?本当??
●で、この事件は目撃者もまったくいないので迷宮入りになっていますが、実際は小林(北村一輝)が現場にいたわけで、目撃者がいなかったのは単なる偶然なのね。
●2回目の火災のとき、雄大も小林もちょうどいいタイミングで現場に到着するなあー。


私は小説は読んでいませんが、たぶん文章だと気にならない部分です。一人称で書かれていたら本人が勝手に都合よく解釈するし相手の事情は不明でもいいし。でも映像で三人称だと「そんなことある?」と思ってしまうのです。そこで映像としてのリアリティがないのでなかなか入り込めませんでした。


この作品にはMummy-Dが役者として登場。立派にたいめいけんのシェフを演じていました(違)。
個人的にはDさんは役者としての能力はあまりないような気がするのですが…。