やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

最近聴いた曲ひとこと感想(2019年1月)

星野源『POP VIRUS』

POP VIRUS

POP VIRUS

もはや私が何か言うことなんて何もない。国民的歌手が横綱相撲として「一番攻めているのに一番ポップ」なアルバムを出してくれました。


これです。その中でも「鳴っていない部分もリズムだ!」にもっとスポットが当たっていい。この隙間のあるサウンド構築はもっと評価されて欲しい。
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ただ、星野源はメロディに言葉を乗せるとき、基本「一音に一言」なのです。昔はそれを自身に課していましたが、まだその癖が抜けていない。これだけ素晴らしいリズムと演奏があるのに、メロディとボーカルがファンキーでないので、グルーヴが削がれる。ここについて誰も指摘していないんだけど、そんなに気にならないかな?私はもったいないなあと思ってしまうのですが。
<2/1追記>
先日、『アフター6ジャンクション』に星野源がゲスト出演しまして、宇多丸さんがこのことについて質問しました。
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それによると、「単純に歌の技術がないんですよ。音程を早く移動できないんです。ゆっくりした歌しかなかなか歌えなくて。それを楽しい曲するために、コード進行をめちゃくちゃ凝って工夫してたんですよ」であり、「めちゃくちゃ速い曲なんだけど歌の譜割は遅い/広いとか。そういうポップさが僕は好きだったりもするので」だそうです。そして、「自分が歌える限界の範囲は、きっとカラオケでみんなが歌える範囲なのではないかっていう感覚もあるので、ポップなのではないか」なんだって。
そうかー。過去の縛りは自分の技術の欠点をカバーするためのもので、今の「カラオケでみんなが歌える範囲」であることが国民的歌手である理由でもあるのか。意識的・無意識的にも星野源は国民的ポップスを生み出しているんだな。MISIA久保田利伸がそこまでいかない理由も、歌は下手なのにSMAPが国民的アイドルだった理由もこれだな。


向井太一『PURE』

PURE(通常盤)

PURE(通常盤)

歌上手いし、上に書いたようにリズムの作り方も素晴らしいのですが、歌声がAIに似ていてそれが邪魔(ごめんなさい)!もったいない。
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ソロシンガーはバンドと違ってどんな楽器を使ってもいい。生ドラムとエレキギターでもいいし、打ち込みでもいい。どんな楽器を使ってもいいということは、制約がない分その人の発想や選択が重要になってくるわけで、つまりはその人の才能が試されている。なのでいい音で鳴らしてくれるミュージシャンは賞賛します。土岐麻子さんなども同様。


Shiggy Jr.『DANCE TO THE MUSIC』

DANCE TO THE MUSIC【通常盤】

DANCE TO THE MUSIC【通常盤】

デビューのときは「いきものがかりみたいになるぞ!」と個人的にとても盛り上がっていたのですが、アルバム『ALL ABOUT POP』はそんなに引っかからず、その次のミニアルバム『SHUFFLE!! E.P.』もイマイチで、少し心が離れていました。
しかしその次のミニアルバム『KICK UP!! E.P.』が良くて、期待して今回のアルバムを聴いたら期待以上に良かった!
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彼らの武器はダンスなんだな。ダンスというか、グルーヴ。そのグルーヴがポップを生み出す。メロディの良さを引き立てるのもグルーヴ。
特に中盤以降の曲はどれも素晴らしい。原田さんが1曲まるまるソロボーカルとる曲もよい。ノエル・ギャラガーじゃん。ということは、これがShiggy Jy.にとっての『ドンルク』なのか?
あと、10曲目の『looking for you』、これ、まんまプリンスの『パープルレイン』じゃん!ドラムやギターの音もコード進行も、完全にプリンス。清々しい。
このアルバムはとても素晴らしいのですが、事務所は1stで宣伝費を使い果たしたのか、あまりプッシュされていない感じがします。もったいない!こういうバンドはMステとかに出たらすぐ世間に広まると思うんだけどなー。


RADWIMPS『ANTI ANTI GENERATION』

ANTI ANTI GENERATION(通常盤)

ANTI ANTI GENERATION(通常盤)

RADWIMPSなので毎回間違いないクオリティの作品を届けてくれますが、今回は何だかダークでシリアスな印象があります。アルバム後半に『万歳千唱』『サイハテアイニ』『正解』のような青春感のある曲もありますが、前半の流れと『洗脳』『PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~』などの曲により、そう感じてしまいました。この曲順で間違いないですが、違う曲順だったら印象も違ったと思います。
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上に書いたようにアルバム全体は間違いないクオリティですが、個人的には『PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~』が引っかかります。これは実話で、こんな目に遭った野田君には同情しかないしこんなことをしたマスコミには憎悪しかないのですが、それでもこれは「楽しくない」。音楽としてエンタテインメントに昇華されていない。ただ愚痴と事実をぶちまけているだけ。
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こういう曲作ってもいいけど、シングルのカップリング程度にしておけばよかったのに。それじゃマスコミの皆さんに届かないからアルバムに入れたのかもしれませんが、楽しくない。私の中では『五月の蝿』と同じ箱に入れて今後はあまり聴きません。
でも、こんなことするマスコミは許せーーーん!!!
と書きながら、ラストの『正解』で泣いちゃう私。こんなおっさんでも感動するんだから、中高生が聴いたら刺さりまくりでしょ。野田君、あんたはすげえ。
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あっこゴリラ『GRRRLISM』

GRRRLISM(通常盤)(特典なし)

GRRRLISM(通常盤)(特典なし)

私、あっこゴリラ聴くの初めてなのですが、とてもいい。彼女の歴史はほとんど知らないしインタビューなども全然読んでいないので曲に込めたテーマとかアルバム全体の成り立ちなどは全然分からないですが、いい。
タイトルはゴリラの「ガルル」という吠えと「GIRL」が掛かっているのかな?インタビュー読んでないので分からない。
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このアルバムは私のようなおっさんが聴いても「いい!」と思う出来ですが、女性が聴いた方がもっと刺さるはず。CHAIのような「現代社会を自由に生きる」空気がとてもよい。
まだまだ男性優位社会だったり女性は頭悪くて可愛くか弱い方が生きやすかったり受動態でいることを求められる社会で、彼女たちの活躍は「新しい現代の女性像」であってとても輝いていますが、もう数年経つと彼女たちのアティチュードすら新しくなく「普通」になるのかな。まだ社会は過渡期なのかな。
まあ、そんな大きなことは考えなくていいです。ラップも上手いぜ。いい曲だぜ。いいアルバムだぜ。