責任の分担は情熱の分散
映画『イソップの思うツボ』を見てきました。公式サイト↓
aesop-tsubo.asmik-ace.co.jp
なぜこの作品を見たかというと、もちろん『カメラを止めるな!』が傑作だったからです。
ese.hatenablog.com
今回は3人の共同監督という珍しい体制。さて、どうなる。
(以下、ネタバレ含みます)
ダメ。下手。とにかく下手。
映画『イソップの思うツボ』見た。
— エセ@秋まで何もナシ (@ese19731107) 2019年8月17日
下手。脚本も演出も編集も、下手。
正義・倫理・リアル・フィクション・トリック・メタ、全部ダメ。
共同監督ってどういう役割分担なんだろ。責任の分担になっちゃうから共同なんてダメ。次回作まで上田監督の評価は保留するけど、ライフは残り少ないですよ!
物語前半はずーっとつまらなくて、これが『カメ止め』のようなフリになるのかなと我慢していたのですが、結果的には何もなく、ただ単に下手なだけでした。演出も演技もカメラ割りも編集も、下手。テンポが悪くて物語がドライブしない・スイングしない。
中盤からネタバレパートになるのですが、もう一ひねりしてよ。「誘拐かと思ったら復讐でした」という見ている私たちに明かされるネタバレが、そのまま。「復讐と思わせといて~」じゃないのか!
そのネタバレ自体も別に驚かないし。
ラストでヤクザが撃たれる場面は、「殺されたと見せかけて~」だと思っていたのにそのまま。あの血を吐いて倒れるスローモーションの演出は、あえてのダサさだと思っていたのに、ただダサいだけだったのか!
えー、じゃあ、本当に殺人じゃん!本当に人を殺しちゃったよ、この人たち。どーすんの。
あと、謎の富裕層たちが仮面付けてスクリーンを見ている場面、お金がないから仕方ないけどリアリティゼロ。『カイジ』と同じ世界だけど、世界観ができてないから「急にどうした?」と思ってしまいました。
奇跡の傑作『カメラを止めるな!』と比べられるのはかわいそうですが、比べなくても単なる駄作。これが最初だったら全国公開なんてなかった。
映画は演技も演出も美術も音楽もどれも重要ですが、こういう構成や脚本で見せる作品で、こんな杜撰な脚本でいいの?誰か指摘しなかった?
●亀田兄が大学の講師になるのは、どうやったの?いきなり無理がある。
●亀田兄が兎草母を口説き落とすのは頑張ればできるかもしれないけど、兎草娘が亀田兄に惚れるなんて偶然ある?兄そこまでイケメンじゃないのに。
●亀田娘が亀田兄に惚れているように見せていましたが、実際はどういう状況だったのですか?ミスリードに対する「実際」が分からないです。
●亀田父が兎草親子のマネージャーになるなんて、そんなうまくいく?ヤクザの力添えなのかな?
●亀田娘が兎草父と援助交際。自分の母を(ある意味)殺したオヤジとセックスできる?キスできる?ありえなーーーい!セックスしている最中に金髪のカツラバレないの?「ホテルで朝を迎えた」ではなく「偶然出会って手を握る・抱きしめる」を隠し撮り、くらいにしておけばいいのに。
●亀田兄の前髪ウィッグ、いる?それくらい伸ばせよ。
●上にも書きましたが、ラストでヤクザを殺しちゃいます。いいの?殺人ですよ!
演技面では、亀田娘の恫喝、迫力ゼロ。あと、ヤクザの大阪人でない大阪弁。大阪人使ってよ。
『カメラを止めるな!』が傑作になったのはいろいろ奇跡的な偶然もあるでしょうが、やはり上田監督の情熱の賜物でしょう。映画を作りたい、面白い作品を作りたい、という情熱があの奇跡を起こしました。
それが、今回は監督3人体制。船頭が多かったからダメなのかは分かりませんが、やはり責任の分担は情熱の分散になっちゃう。映画を作るには多くの人が関わるので他人の意見が入るのは問題ありません。ただ、それをまとめること、意見の取捨選択をすること、「これでいく!」と決めること、これらはやはり最終責任者(監督)がやらなければなりません。「総監督」でもいいので、数人の並列でなくひとりの最終責任者を置かないとダメ。そうだったら上手くいっていたかは分かりませんが。
『カメラを止めるな!』はあらゆる意味で奇跡的な1本なので、上田監督はまぐれ当たりの一発屋なのかもしれません。また、巨匠であっても毎回ホームランを打てるわけでもありません。なので今回だけでは判断できませんが、信用度のライフは残り少ないです。次回作『スペシャルアクターズ』、期待しています!
special-actors.jp
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