やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『スペシャルアクターズ』 感想

確定、一発屋


映画『スペシャルアクターズ』を見ました。公式サイト↓
special-actors.jp
あの奇跡の映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の新作です。
カメラを止めるな!』は本当に奇跡の傑作で、私は劇場に2回見に行きました。反面、スピンオフ企画の『ハリウッド大作戦』と今年公開の共同監督作『イソップの思うツボ』はとても駄作で、上田監督に対する信頼ライフは残り少ない中、本作を見に行きました。
ese.hatenablog.com
ese.hatenablog.com


以下、ネタバレあります。












見ている間、私の中の大滝秀治が「つまらん、お前の言っていることはつまらん」とぼやいていました。
www.youtube.com
「インチキ宗教団体の詐欺グループから旅館を守ってください→こうやって騙そう→その通りにやる→上手くいく」
ってのをそのまま見せられて、何がおもろいねん!!


ラストに全体のどんでん返しがありますが、とき既に遅し。それまでが面白くないから、ラスト1分でひっくり返されても今までの100分を取り返せません。
上田監督はダウンタウンが好きでお笑いが好きなのに、お笑いを分かっていない。笑いは、緊張と緩和です。フリをしっかり真面目にやることでボケ・オチが活きてくるのです。フリをダラダラしたらオチでオチない。
具体的には新興宗教のリアリティのなさ。コントみたいな舞台に教祖様を立たせるな。グループの裏側を覗くときに文字通り「覗く」わけですが、見つからないわけねーだろ。覗いているときに上手いこと秘密の暴露の会話をする。吉本新喜劇か!胸のパットをあんなところで外す女性いねーよ!裏教典を「裏教典」という名前で保存するな!
その後の「計画→実行」もそのまま進むので、見ている私は「でしょうね」しか思えない。
クライマックスの和人がヒーローになる場面も、見ている私は劇団員がウソの血しぶきを吹いて倒れていることを知っているので、何のカタルシスもありません。
学祭のコントやってるなー、下北沢の小劇場の舞台かなー、くらいしか思えないのです。


この作品はお話全体がラストのどんでん返しのためのフリだったわけで、そういう意味では途中のグダグダ感は理由になります。でも、見ているこっちはそんなの知らないし、リアリティがないから単純に面白くない。
フリを真面目に作れよ!危機感も緊張感も緊迫感もないから成功してもカタルシスがない。


カメラを止めるな!』は、前半の「何だか下手な映画」がそのまま後半の面白さ全体のフリになっていましたし、その配分も3分の1程度でした(物語全体が96分で映画部分が37分)。そして、映画自体はノーカットで撮っているので、下手なりに緊張感は持続します。
それが、本作では…。


怪しい新興宗教が実際にあって、それを騙すための計画を立てて、しかし途中でトラブルがあって、それを何とか乗り切って、クライマックスでカタルシス満点の見せ場があって、大団円。ここまで成立させて、初めてラストが活きてくるのに!ラストのどんでん返しを下手なグダグダ感の言い訳に使うな!


カメラを止めるな!』の成功により、次回作が「この何の変哲もなさそうなシーンも既に伏線なのかな」と思われてしまうのは仕方ないです。そして実際そういう作品を撮るなら、この「何の変哲もなさそうなシーン」をしっかり撮らないと、作品全体のクオリティの低下に直結します。


劇中で「そりゃ芝居はウソだよ。でも、それを本物に見せるのが俺たちの仕事だろ!」とオーディションのプロデューサー?の人が吠えていましたが、その言葉、そっくりお返ししますよ。


と、ここまでボロクソに書いてきましたが、家に帰ってネットを見ると「面白かった」という感想が結構あるのね!マジか!いくら人の感想は千差万別とはいえ、この作品に褒めるところあるのか!途中のグダグダを「上田監督らしいコメディ」と捉えれば面白く見れるのかな。私には分からん。本当に人の意見はいろいろなんだなー。


カメラを止めるな!』のスピンオフ『ハリウッド大作戦』、『イソップの思うツボ』、そして本作。3作連続で大外れが来たらもうサヨナラです。これまでは『カメラを止めるな!』が素晴らしかったので、そのご祝儀も兼ねて見てきましたが、もうおしまい。
映画監督になりたいけどなれない人、撮っても全国公開なんてされない人、全国公開してもヒットしない人。ほとんどがこれです。その中で30億円以上のヒット作を生み出した上田監督は素晴らしい一発屋です。楽しませてもらいました。さようなら。