やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

ぼくの農業体験記

農業すごいぜ


うちは農家ではないのですが、親戚が農業をやっているのでここ数年田植えと稲刈りだけお手伝いに行っています。
普段農作業なんてまったくしない私ですので知識もまったくありませんが、お手伝いしていて感じたことを書きます。用語などの間違いがあったら教えてください。
コロナでネタがないのだ。


<田植え編>
そもそも私はトラクターもコンバインも田植え機も稲刈り機も運転できないので、あまり役に立たない。私が呼ばれるのは近所に住んでいるからなのと車のマニュアル運転ができるから。それだけ。


朝、軽トラでJAのカントリーエレベーターへ向かう。ここは、春は苗を農家に渡し、秋は刈り取った籾を集荷してくれる場所。
親戚が事前に注文しておいた苗を受け取る。コンテナに積まれた苗をフォークリフトで軽トラに乗せてくれる。コンテナ、軽トラにジャストサイズ。
これに限らず、軽トラって大きさや小回りや使い勝手の良さなど、ものすごく機能的で素晴らしい車ですよね。使うたびに毎回感心しちゃう。


田んぼに戻る。
田んぼの畦に苗箱を6つずつ置き、そこに殺虫剤(粒状)を撒きます。植えた瞬間に虫にやられたら元も子もないので。これも専用のジョウロみたいなのがあるのです。一度に出る量を調節でき、苗をささっと撫でるだけで適量が出てくる。
続いて田植え機に肥料を投入。これはどろっどろの液体肥料で、田植えと同時に苗周辺に肥料を撒くことができるのです。
そして田植え機に苗をセットして田植えスタート。


ここから、私はすることがない。ただ見ているだけ。風や日射しが強いときは苗が乾かないように柄杓で用水路の水を掛けてあげるくらい。
田植え機は、片側に小さな轍を作る細い車輪を出して走ります。折り返したときに、この轍を次のセンターラインとして走るのです。そして次の往復ではまた次の新しい轍のラインに沿って走らせる。
なるほど。考えられています。これでまっすぐに無駄のない田植えができるのです。
田植え機の車輪は前輪2つ、後輪4つあるのですが、どれも細くて植えた苗の間を通る設計になっています。これでバックしたときでも苗を潰すことなく走ることができます。
さらに、回転半径がほぼ田植え機1台分なので、端っこまで植えてぐるりと回転させるとそのまますぐ次の列を植えることができます。
なるほど。考えられています。


田植えが進み、田植え機の苗が少なくなると、先ほど畦に置いた苗を田植え機に補充していきます。そしてまた見ているだけ。


さらに感心するのが、田植え機で田植えをすると、田んぼの幅ちょうどぴったりで植えられるのです。6列植えられる機械(6条植えという)で、ちょうど6列で端から端まで植えることができるのです。ごくまれに半端なサイズの田んぼがある場合は、数列だけ苗が出るように機械を調整して植えることもできますが、ほとんどは6列ごとでぴったり。つまり、田んぼのサイズにも規格があって、田植え機はその規格に合うように作られているのです。
考えてみれば当たり前ですが、こういう「業界標準規格」があることでそれに合わせた様々な機械や決まりが作られ、それに則っているから作業はやりやすくなっているのです。


農業、すごいぜ。私は見ているだけだけど。
その後、新しい田んぼにまた苗箱を配置し、殺虫剤を撒き、肥料を投入し、苗を補充する。そして見ている。


<稲刈り編>
春に苗箱のコンテナを積んだ軽トラに、秋は刈った稲(籾)を積む大きな箱が設置されています。
田んぼへGO。


稲刈り機は四隅を刈ることができないので、そこは人力でやります。稲刈り機が稲刈りをしている間に、私が四隅を手刈りする。四隅だけでも結構な量です。これを昔は全部手作業でやっていたなんて信じられない。田植えもそうですが、機械化バンザイです。
手刈りした稲は稲刈り機のサイドから籾部分を飲み込ませます。手を入れないように注意。


田植え機もすごいですが、稲刈り機もすごいです。稲を刈り、籾だけを取り、残りの稲の茎部分は短くカットして田んぼに排出します。これにより茎部分を捨てる手間もないし勝手に来年の肥料となります。機械化バンザイ。
稲刈り機に籾がいっぱいになると、それを軽トラに積み込みます。稲刈り機から煙突のようなクレーン機のアームのような筒が伸び、軽トラのコンテナ箱に籾を注ぎ込みます。一度に数十~百㎏くらい積めます。すごーい。


このコンテナ箱がある程度いっぱいになると、私は軽トラをカントリーエレベーターへ走らせます。積載量マックスで走るので、スピード出しすぎると揺れて怖い。揺れ出すと余計揺れるので、スピードは控えめに。後ろの車の皆さん、ご勘弁ください。この時期は農耕者優先でお願いします。
この時期はみんな一斉に稲刈りしているので、カントリーエレベーター前では渋滞が起きます。少しずつ軽トラを進め、受付へ。
サンプルで少し籾を取り、水分量を測ります。続いて車ごと計量器へ。重さと水分量から籾の量を測定するのです。
さらに奥へ。ここでの軽トラは2種類あります。コンテナ箱を載せているタイプと、設置(くっついている)しているタイプと。前者はフォークリフトでコンテナ箱ごと持ち上げ、ひっくり返して籾を出す。後者はコンテナ箱の底付近にある蓋を外して中身を出す。
籾を出す場所は地面が網状になっており、そこに籾を落としていくのです。道路の側溝にあるグレーチングの上から籾をぶちまけるというイメージ。あれの超巨大版。
落とした籾は地下でどうなっているのかしら。一日に数千㎏の籾が運び込まれてくるわけで、そんな大量の籾をどうやって処理しているんだろ。その内部のことは私は何も知らない。
籾を全部出したら、出口へ。再度計量器を通り、差し引きで籾の量を確定させます。


再び田んぼに戻り、端刈りをしてコンテナが満杯になったらカントリーエレベーターへ行き、というのをひたすら繰り返します。
これが稲刈り。


<思ったこと>
●JA、パねえ
苗を買うのも籾を下ろすのもJA。肥料を買うのも機械のメンテナンスもJA。とにかく農業の1から10までJAがいないと何もできません。JAという組織はいろいろ問題があるのは間違いないですが、そうであってもやはりなくてはならない組織です。だから腐ってものさばっちゃうのだと思いますが。


●コメ、混ざっちゃう
JAのカントリーエレベーターに持っていくと、他の農家のコメと全部混ざってしまいます。どれだけ自分たちが精魂込めてコメを作ったとしても、その他大勢のコメと混ざっちゃうのです。
もちろん全量納入する必要はなく、ある程度は自宅で管理して直接販売してもいいわけですが、私たちがスーパーで買っているお米は品質のばらつきがある最大公約数のお米なのですね。
減農薬や有機栽培をしている農家はここで差別化を図るわけですが、精米部分まで全部自分たちでやるには設備投資も相当必要だから大変だろうなー。


●農家、儲からねえ
昨年の稲刈りで稲刈り機が壊れてしまい、新しく買ったそうです。数百万円。親戚は「これであと数年は田んぼの利益ゼロだ」と言っていました。
年に数日しか使わないくせに数百万円。稲刈りにしか使えないくせに数百万円。田植え機他の機械も同様。完全なる専門マシンで数百万円。
そして田植えも稲刈りも同じ頃にやらなければならないので、隣の農家と共同購入というのも難しい。みんな同じ日に作業しなければならないから。数百万円の年間稼働数日の機械が各家庭にある。
もったいないなー。
もちろんこれらの機械をしまっておく倉庫が必要です。さらに親戚の家は自宅で籾を乾燥させる機械も持っています。そのスペースと設備投資の金額たるや。
農家儲からないよなー。


●子供にやらせるなら
よく小学校の農業体験で田植えや稲刈りをさせますが、あれってプラスになっているのかな。田んぼに入るのは楽しいけど、苗をひとつずつ手で植えていくのはとても大変です。あれをやって「自分も農業やろう」と思う子供っているのかな。「疲れるばかりで農業は大変だ」と思うのでは。私だったら絶対そう思う。
なので、子供に田植え機や稲刈り機に同乗させて作業をするのがいいと思うのです。カッコいい乗り物は子供大好きですから。そして実際乗ったら見晴らしもいいし動く楽しさもあるし実際どんどん田植えできたり稲刈りできたりするので、それを見る方が絶対に楽しいと思うのです。こっちの方が「農業楽しい!」と思ってもらえると思うけどなー。泥に入るのはどうせいつでもやってるから。


●稲作、すげえ
もちろん日々の管理はいろいろ大変でしょうが、基本的には春に田植えをすれば秋まで勝手に育ち、精米すれば翌年まで腐らず食べることができる。コメってすげえ。稲作ってすげえ。そりゃ人類繁栄するわ。
小麦にも同じことを感じる。人類の人口増加はこれらの「作るの簡単で保存もできて主食になり得る穀物」のおかげだよなー。


以上、とりとめもなく書いてきた農業体験記。農業は知恵と技術の積み上げでいろいろ効率的で集約的に作業ができるようになっているけど、割に合わない設備投資が多くて農家は大変だなーとも思いました。そして読み返すと小学生の作文みたいだな。
自分で作ったコメは旨いぜ。私、味オンチだけど。