やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

この世から「強制」がなくなる日

おっさんなので言葉遣いが気になるお年頃なのです


先日、健康診断に行ったときに感じたこと。
「ご案内させていただきます」
「こちらの機械に乗っていただけますか」
「はい、下りていただいて大丈夫です」
「こちらでお待ちいただけますか」
「測らせていただきます」
過剰!過剰!!
「ご案内いたします」
「こちらの機械に乗ってください」
「はい、下りてください」
「こちらでお待ちください」
「測りますね」
でいいじゃない。


以前から「させていただきます」の過剰使用は気になっていました。
「させていただきます」って、丁寧の上に「許可をもらって行う」というニュアンスも乗っかります。あなたが勝手にやっているのにこちらの許可を求めるな。
「ドラマに出演させていただいて」「新曲をリリースさせていただいて」って、誰に向かって言ってるの?それはプロデューサーに向かって言ってください。ファンへは「出演しました」「リリースしました」でいいでしょ。
芸能人が誰かのライブを「見させていただきました」なんて言いうと「関係者席で見たのかな」と勘ぐってしまいます。自腹でチケット買っていたら「見させて」なんて言わないでしょ。
日本語も敬語も分かっていないので「させていただきます」と言っておけばより丁寧な言葉を使っている気になっているのでしょうが、誰か教えてあげて。その日本語、美しくないですよ。
※私はこの「させていただきます」の過剰使用はEXILE一族に多いので、「EXILE敬語」と呼ぶこともあります。


そしてまた、最近気になっている言葉遣いがあります。
~していただけますか」という言い方。
マナー講師はこういう言葉遣いをしろと言いますが、私は反対です。だって、これって相手に了承を求めている言葉ですよね。相手が嫌と言ったらどうするの?YESもNOもない場面で相手に了承を求める必要ありますか?
さらにこの言葉が卑怯なのは、相手に了承を求めて相手が了承したら、その選択・行動の責任は相手にあるのです。「~していただけますか」→「はい」→この選択をしたのは相手であり、自分には責任がない。無理やりやらせたわけではない。何かあってもそれは相手の責任。姑息!
健康診断でいえば「Aの検査の次はBの検査」と決まっているわけで、そこに相手の選択や許可は必要ないはず。Aが終わったら「次はBです」「Bへ行ってください」でいいのに。


少しでも指示・強制のニュアンスを消したいのでしょうが、日本語としておかしいから違和感を感じるのです。


続いて、「大丈夫」という言い方。
「下りていただいて大丈夫です」って、どういう意味?下りてもいいよ、という意味?では、下りなくてもいいの?下りてほしいんでしょ?じゃあ「下りてください」でいいじゃない。
そこまで強制のニュアンス消す必要ある??


もうひとつ。「~していただければと思います」。
気持ち悪い!「~してください」から指示・強制のニュアンスを消すためにこういう言い方になるのでしょうが、気持ち悪い。
「~していただければと思います」って、主体は言っている人の気持ちじゃないか!お前の希望は知らねーよ。「~してもらえたらうれしいなあ」ってこと?気持ち悪い!


なぜそんなに指示・強制のニュアンスを消したがるんだろ。


健康診断のようなルーティンの動き方がある場所では、皆そのやり方に従います。そこで「~してください」と言われて怒る人なんていないでしょ。しかも、「ニュアンス」というのは単語そのもの・敬語それ自体ではなく、「言い方」による部分が大きいです。「~してください」と言っても普通に柔らかく言えば強制のニュアンスなんて出ません。
※「メラビアンの法則」によると、言われた人の受ける影響は、言葉が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%となっています。言葉より言い方(表情・口調)の方が大事なのです。


もちろん相手が嫌がる行動をお願いしなければならない場面ではこういう言葉遣いも必要でしょう。それがTPOをわきまえた言葉遣いであり、適切に意味と効果を発揮する場面です。
とにかく丁寧でなければ、へりくだらなければ、という流れはやめましょう。適切で適当な言葉を遣いましょう。


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