やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

レキシ『レキシチ』感想

この子の七つのお祝いに


レキシ7枚目のアルバム『レキシチ』が出ました。もう7枚目!それどころか、レキシとなってもう15年だって。月日の経つのは早いものよ。
私は「七キシ(ななきし)」だと予想していたけど外れた。レに横棒1本入れた筆文字をイメージしていたのですが。
レキシは活動自体がコンセプチュアルなので、アルバムごとに明確なカラーはありません。毎回名曲だけを10曲届けてくれます。
今回も外れなしの10曲でした!それでは、1曲ごとの感想です。


1.ギガアイシテル
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この曲はレキシ史上最もポップな1曲です。インタビューを読むと、池ちゃんはポップにし過ぎるのに抵抗があるようですが、これはクレヨンしんちゃんの映画タイアップという外部の力でシャイな池ちゃんの殻を破ることができたようです。めでたしめでたし。
この曲めちゃめちゃいい曲なのに、映画がコロナで公開延期になり、シングルも発売延期になったのでプロモーションが十分にできずにかわいそうだなーと思った1曲。今回のアルバムプロモーションでも「過去の曲」扱いであまり語られなくてかわいそう。
Bメロ「ウサギとカエルも踊りだす」の跳ねるリズムがとてもいい。
ラップはlyrical schoolのminanさんがMC旧石器として参加。せっかくのゲストラップなんだから池ちゃんの声重ねずにminanさん単独で聞きたかったなー。


2.たぶんMaybe明治
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Awesome City Clubのatagiさん(あ、たぎれんたろう)をゲストに迎えてのアルバムプロモーション曲第2弾。これもポップでキャッチー。
シティポップな曲にしようと思っているのでしょうが、ホーンが入るとディスコやファンクの要素が強くなっちゃう。オシャレや洗練は難しい池ちゃん。ドラムが打ち込みでホーンでなくシンセだったらもっとシティポップ風味が強まったのでは。


3.だって伊達
タイトルの出オチ曲。でも曲はいい。
この曲のピアノはとても素晴らしいと思ってクレジットを見ると、皆川真人さん(大岡越前クラゲ)が弾いていました。インタビューでは「自分で弾いてもしっくり来なくて皆川さんに弾いてもらったら『これだ!』って」と語っていました。池ちゃんだってプロのキーボーディストなのに、自分で弾けない曲あるんですね。


4.つれづれ
この曲のイントロ、シカゴの『サタデー・イン・ザ・パーク』っぽくないですか?
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Aメロの歌詞とメロディと歌い回し、スーパーバタードッグっぽいからシャカッチ(ハナレグミ)に歌ってほしかったなー。そういえば、これまで全アルバムで皆勤賞だったシャカッチと足軽先生(いとうせいこう)は本作ではいないんですね。寂しい。
これは歌メロとグルーヴが両立していて気持ちいい。
「つれづれ」はもちろん「徒然草」から来ているわけですが、「徒然 It's too late」のIt's too lateといえばキャロル・キングの同名曲ですよね。そしてキャロル・キングの名盤といえば『つづれおり』なわけで、何となく、つながっているよーという蛇足情報でした。


5.縄文ロンリーナイト
この曲のAメロ、何かに似ている気がするんだけどなー。誰か教えてください。
タイトルは「縄文ロンリーナイト」「土偶so good」「縄文のビーナス」どれでもいけますね。
派手さはないけど地味名曲。サビ終わりの「縄文ロンリーナイト」の譜割りが気持ちいい。


6.マイ草履
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アルバムプロモーション曲第1弾。MVを見ると切ない恋の名曲ですが、歌詞はマイ草履。信長から秀吉への気持ちを歌った曲。そんなことはいいんだ。名曲だろ?ストリングスもいい!


7.いきなり将軍
初期っぽい曲ですね。実際曲自体は数年前からあったそうです。
レキシの曲の特徴である「歴史上のある瞬間を切り取り、面白く表現する」が上手く成立した曲です。「君、今日から将軍ね ボクは春から老中」の気持ちよさよ!


8.Let’s FUJIWARA
今回は歌ものが多く、ファンク要素や踊れる曲は少なめなのであえてそっち方面で作った1曲。
ライブではBメロで手拍子するんだろうなー、サビでは池ちゃんがドリフの踊りをするんだろうなー、が既に見えている。


9.鬼の副長HIZIKATA
これ、完全にライブ映えする曲ですが、実際ライブだとどうするんだろ。大沢局長のデスボイスも女性陣のコーラスも、レキシチームじゃできないじゃん。全部池ちゃんが歌うのかな?先日テレビでこの曲を歌っているのを見ましたが、池ちゃん歌ってないじゃん。
サビ終わりの「しんしんしん新撰組」のところ、ライブだと「進研ゼミ」でやるよね。


10.フェリーチェ・ベアト
フェリーチェ・ベアト。この単語は聞いたことありましたが、まったく何も知りませんでした。そうか、人名だったのか。カメラマンだったのか。
Aメロ「君の隣の」のコード進行がビートルズっぽいなーと思っているのですが、具体的な曲名が分からない。誰か教えてください。
この曲、桑田佳祐だったらさらに盛り上がるメロディを付け足しただろうな。池ちゃんはそういう貪欲さが足りない。だがそれは悪いことじゃない。


本作は、池ちゃん自身がインタビューで語っているとおり、歌ものアルバムです。これまでのファンク・ディスコ要素は薄め。私はそういうのが好きなのでその点ではちょっと残念。
でも、歌もの要素が強めのおかげで、グッドメロディの曲が多くてとてもよい。歌ものに寄ったとはいえ、寄った先は現在のJ-POPではなく池ちゃんの思春期時代の歌謡曲・ニューミュージックというのがよい。
結果、今回も外れなしの名曲揃いアルバムとなりました!


レキシってもう15年も活動していてアルバムも7枚出ていてたまにテレビにも出るのに、一般への認知は高くない気がする。何でだろ。こんなにキャッチーでグルーヴィーでいい曲だらけなのに。ライブに行けば100人が100人「楽しかった!」と言う満足度なのに。
そうだ。ツアーがあるんだ。私は7月の新潟公演に行きます。楽しみだなー。


過去作レビュー(ライブの感想は右側のレキシカテゴリから読んでください)
ese.hatenablog.com
ese.hatenablog.com
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レキシチ

レキシチ

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映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』感想

なんでもあり


MCU最新作、『『ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス』を見てきました。
marvel.disney.co.jp
前作はそんなに好きではないです。ストレンジのキャラが好きではない。自信家で嫌な奴がいろいろあってヒーローに、というお話なのに自信家で嫌な奴はそのまま残っている。内面の成長はないんか。
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でも「お前が余計なことをするから世界がめちゃめちゃになったぞ」と思っています。もちろんトムホのおしゃべりのせいもありますが。


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でマルチバースの世界観が解禁となり、それが本格始動する本作、さてどうなる。

さすが初日×初回なので、こんな地方の映画館でもほぼ満席。そしてエンドロールの途中で席を立つ人はいませんでした。


(以下、なるべくネタバレないように書きます)


本作は『ドクター・ストレンジ』の続編ですが、前作だけ見た人は本作を見て理解できたかしら。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でのマルチバースの概念、『ワンダビジョン』でワンダに起きたことなどをすっぽり知らないまま本作を見て、理解できたかしら。
そうでなくてもMCUはハイコンテクストな世界(事前知識がある程度必要)なのに、本作はマルチバースがあり、魔術・魔法があるので、マジでもう何でもアリ。今回伏線っぽく語られた出来事も「あれは別のユニバースのことなので今回は関係なし」「前回と今回で辻褄が合わないところも別のユニバースを持ってくれば解決」とかなりそう。映像自体CGで何でも作れちゃう上に、魔法です、別のユニバースですまで加わったらマジでもう何でもアリになっちゃうので、物語って何かねという根本的なことまで考えてしまいました。
今後のMCUはあの少女(アメリカ・チャベス)がいろいろなユニバースを行き来することでMCUの世界を広げていくのでしょうが、ついていけるかしら。


MCUは、基本的にはSFアクション映画ですが、『ウインター・ソルジャー』はスパイ映画だったし『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーズ』は戦争映画でした。『スパイダーマン』は青春映画ですね。そういう色づけ/色分けも楽しい。
で、本作は完全にホラー映画でしたね。だってサム・ライミ監督作品だもの。途中『貞子』があったり『キャリー』があったりしましたね。PG12やR15を考えて、どんなにひどい戦いであっても腕がもげたり血が出たりすることはないMCUにおいて異色のカラーでした。血を流すのはNGだが返り血を浴びるのはOK、というギリギリの線引きだったのかなと推測します。


本作はワンダがヴィランで、最後は亡くなってしまったのでもう登場しないのかな。『エンドゲーム』までの登場人物は徐々に減っていきますが、『シャン・チー』『エターナルズ』の面々と、それぞれのミッドエンドの場面で登場する新たなキャラ、そして今後マルチバースの概念から過去のMCU以外のキャラ(『ファンタスティック・フォー』など)も登場するでしょうから、結局世界観は膨らむばかり。ケビン・ファイギはどう収束させるつもりなんだろ。


MCUの世界観の広がりは、映画作品が多いからだけでなく、Disney+のドラマ作品のせいもあります。本作は『ワンダビジョン』の視聴は必須ですし、この先の『ザ・マーベルズ』は、その前に配信される『ミズ・マーベル』の知識が必須でしょう。
これまではスピンオフ的な話が多かったDisney+のドラマ作品ですが、今後は映画作品とダイレクトでつながりのあるお話が増えてくるでしょう。正直、映画作品だけでも年に何本かあるわけで、配信ドラマまで見ていられるかな?私の余暇時間はディズニーのためだけに使うわけにはいかないのよ。
本作だって、この作品単体で評価することは難しい。面白かったのかどうか、よく分かりません。マルチバース、前作(ストレンジ単体とMCU全体)からのつながり、今後への布石。この辺を理解したから「面白い」ってわけではないのですが、それ(作品世界の理解)が面白いと感じる必要条件になっているようで、「面白い映画」の評価とはズレている感じがします。


といいながら、次回は『ソー/ラブ&サンダー』でお会いしましょう。



2022年4月ツイートまとめ

映画『アルプススタンドのはしの方』感想

しょうがないなんて言うな!


映画『アルプススタンドのはしの方』を見ました。
alpsnohashi.com
Netflixありがとう。


感想は、大満足!とても面白かったです!


この作品は、皆さんの感想でもよく挙げられている『桐島、部活やめるってよ』を思い出させます。高校時代に真ん中だった人とはしっこだった人。この作品は演劇が原作ということと小規模作品であることから、『桐島』よりさらにミニマムな関係性のみを描きます。


作品中、「人生は三振の連続だ」「人生は送りバントだ」という、名言っぽいけどよく分からない台詞が出てきます。でもね、それをいうなら「人生はしょうがないの連続だ」ですよね。
しょうがない。人生はすべてが思い通りにいくわけではありません。上手くいかなかったり失敗したり諦めたりすることの方が多いです。それを慰めてくれる魔法の言葉が「しょうがない」なのです。実際はそんな言葉で魔法のように悔しい気持ちが消えるわけではありませんが、どうにかして折り合いをつけながら人生をやっていくしかない。そこで「しょうがない」に縋ったり悔しい気持ちを被せたりしていくのです。


頑張ることへの肯定/否定、諦めることへの否定/肯定は、フィクションの世界ではこれまでも数多く描かれてきました。だって実人生で誰もが体験することだから。
70年代スポ根マンガは「諦めずに頑張る」ことが美徳とされ、いろいろなことを犠牲にしながら努力して成功を掴む、という物語が王道でした。
その後80年代になり軽薄な世間の空気もあり、一生懸命頑張ることはダサい・恥ずかしいという方が王道になりました。80年代後半~90年代はサブカルの時代でもありましたから、王道に対するカウンターという意味合いも大きかったと思います。
90年代末はノストラダムスの大予言があり、「頑張っても無意味」という虚無感や無力感がありました。それが00年代になると青春パンクの流行などもあり、頑張ることや感謝することを恥ずかしがらないことがよしとされてきました。
いつだって時代は巡る。王道に対するカウンターとそれの揺り戻し。


そして現代。これらの価値観は何周もして、さらに「多様性」という現代の王道の価値観もあり、どちらかに傾けて描くことは難しくなりました。どっちに描いてもその反対側からは「そうじゃない」という反発は受ける。
さてどうする。


物語序盤、演劇部の安田あすはは「しょうがない」と口にします。だってそう思わなければやっていけない出来事が自分にはあったのだから。
続いて元野球部の藤野富士夫も「しょうがない」と言います。頑張っても勝てないんだから諦めるのもしょうがない。
それに対して、同じ演劇部の田宮ひかるは安田がそう言うことに対して居心地が悪い。だってその「しょうがない」の原因を作ったのは自分なのだから。


序盤で「しょうがない」の台詞が出たとき、私も同じ気持ちでした。ダメだったのはしょうがない、そう思わなきゃ気持ちの置き所がない。野球部が負けるのもしょうがない。甲子園常連校に勝てるわけなんてない。だから応援だって意味がない。厚木先生が「もっと声出せ」「みんなで心をひとつに」と言うのがウザくてたまりませんでした。私たちはしっこにいる人間にとって、青春のど真ん中にいる野球部に対して応援する意味も義理もないわ、と。


それが、途中から変わってきます。練習しても意味ないから辞めた藤野に対し、下手なのに辞めずに練習してきた矢野が代打で登場。送りバントを成功させ、その後の得点につなげます。
しょうがないなんて言っているだけじゃ何も変わらない。諦めずにやることだけが未来を変える。


そう、「しょうがない」は過去なのでしょうがないけど、「じゃあどうする」は未来なのでしょうがなくない。未来に対して「しょうがない」で諦めてどうする。落とし前や決着をつけるのは、自分のこれからの意志と行動だ。


諦めなかった矢野と、ずっとエースで頑張ってきた園田の活躍により、ゲームは最終回逆転のチャンス。結果試合は負けてしまいますが、「しょうがない」で諦めずに最後まで戦ったからこそ選手は悔いなくゲームを終えることができたでしょうし、見ていた安田たちも諦めずに応援したからこそ自分たちも悔しがれたし自分たちもその先へ進む意欲を持つことができました。


そしてエピローグ。「しょうがない」から卒業した彼らのその後を、ずーっとワンカメワンショットで描いていきます。登場人物それぞれの着地がいい。ご都合主義かもしれませんが、ここはこれくらいハッピーエンドな着地でよいと思います。


いやー、素晴らしかった!
冷静に見ればアラなんていくらでもあります。そもそも演劇が原作なので会話が演劇っぽいとか、どう見てもアルプススタンドじゃねーだろとか。
会話問題は、もともと舞台版で出演していた演者たちのため技量があって違和感は感じませんでした。見終わってから「舞台っぽいな→調べたら舞台だった」という程度。
そしてアルプススタンド問題は、タイトルがこれだからどうしようもない。演劇は「ここは甲子園のアルプススタンドです」と設定すればそこはアルプススタンドになりますが、映画は映像として描かなければならない。そしたら、いくらなんでも寂れているだろとか、お客少なすぎるだろとかは感じますよね。特に野球好きの人が見たら。
なので、これは地方大会の決勝もしくは準決勝にして、安田と藤野が「ここ、アルプススタンドって言うんだよね」「違うよ、それは甲子園だよ」みたいな会話を挟めばよかったのでは。
でもまあ、そんなのは些末なこと。人によっては大きなノイズかもしれませんが、物語の本質には影響しない。


そして、本作が素晴らしいのは、はしっこにいる人だけでなく、真ん中にいる人もきちんと描いていることです。
エース園田の彼女である久住智香は、野球部のエースと付き合いながら吹奏楽部の部長で勉強も学年トップ。そして可愛い。私から見れば天は何物与えているんだという「持てる者」ですが、彼女からは「一生懸命頑張ったら報われたいと思うことの何が悪いの」「真ん中は真ん中で大変なんだよ」という発言があります。そうだよな、頑張ったんだから報われるのは正しいこと。なのにひがみやっかみ妬みを受けるんだもんな。そして今からはしっこに移ることも難しいし。
暑苦しいと思っていた先生は、確かに暑苦しいし接し方はウザいですが、悪い人ではないし一生懸命やっている人です。それがエピローグで描かれる結果につながっていくわけで、自分の思い通りにいかなくても(野球部の監督をやりたかった、茶道部の顧問は望んだわけではない)、一生懸命やっていれば結果に繋がることもある。


私は、良質な青春映画とは「物語の始まりから終わりの間に登場人物が成長していること」だと思っていて、それが本作ではとても上手く描かれていました。
物語は野球の試合の5回から描かれます。高校3年生の夏って、本人たちにとってはもう8回くらいかもしれませんが、実際はまだまだ人生の序盤。そして9回が終わっても人生は続いていく。いい着地、そしていいエピローグでした。


というわけで、名作。75分という短い上映時間もよい。ぜひ皆さん、見てください。


RHYMESTER『ライムスターイズインザハウス』atチッタ川崎 に行ってきました!感想

ライブはお客の声も構成要素


RHYMESTERの2年3ヶ月ぶりのワンマンライブ1発目、クラブチッタ川崎に行ってきました。


前回が2020年1月だもんなー。コロナが流行する直前にツアー終えられてよかった。
ese.hatenablog.com
今回はライブハウスですが指定席仕様。なので荷物やロッカーの心配はしなくてよいし時間前に並ばなくてもよい。ありがたい。


箭内さんは毎回律儀にお花を出していて偉いなー。


中に入る。

私は日頃の行いがよいので3列目の宇多丸さん側をいただきました!わーい。
イスがあるのはありがたいですが、みっちりと並んでいて狭い。結構密ですね。

そして今回はコロナ禍のライブであるということで、声が出せない。そこでこのバイブス棒ですよ。ライト&ボイス。14種類のカラーと6種類の音声。正直こんなに機能いるかな?と思いながらも、今回のツアーでこの棒は必須でしょうから買いました。


さて、開演!
「ザキング!ザキング!ザキングオブステージ!」のトラックとともにJINさんの雄叫び。カーテンが開くと、DJブースの後ろには今回のツアータイトル「ライムスターインザハウス」のロゴがあります。
JINさんがMC二人を呼び込み、いよいよスタート。
宇多丸「お待たせしました!声が出せない代わり、今回はバイブス棒とかも駆使して、どうなるか分かんないけどやってみましょう。何度でもやり直してやろうじゃないの、つまり『ONCE AGAIN』!」
この曲はどこに置いても成立するから強いなー。
うむむ、思った以上に声が出せないライブは辛い。コンサートなら素晴らしい歌声と演奏を聴き惚れればいいのですが、これはライブですから、そしてHIPHOPライブですから、韻の部分は被せたいじゃないですか。でもできない。もちろんコール&レスポンスもできない。その分Dさん&宇多丸さんが相手の韻を被せたり普段客席に振っている部分を相方が歌ったりしていて、上手く間を埋めていました。これ、ソロラッパーは厳しいね。
そして声を出せない分、ラップをしっかり聴くわけです。演者もそれは分かっているわけです。なので、二人ともラップキレキレ。「楽しむ・暴れる」ではなく聴いて「気持ちいいラップ」がありました。


『Future Is Born』『Back & Forth』と3曲ノンストップで演奏。引き続き声の出せないもどかしさもありつつ、熱はバイブス棒に託して振る!
このバイブス棒、振っているとまるでアイドルのライブのようですが、きれいなのは否めない。私は3列目で結構前の方でしたが、後ろから眺めたら壮観な眺めだったんじゃないでしょうか。


最初のMC。
宇「『ライムスターイズインザハウス』って新しいライブシリーズだけど、別に改まったもんじゃなくて、ウィズコロナ時代を踏まえた上で『ライブやりたい』ってだけなんです」
D「生きてる!って感じがするね」
宇「そう?変な棒買わされてますけど」
と、ここからバイブス棒の操作説明。宇多丸さんの声に合わせてコール&レスポンス。正直、音も音量もしょぼいので、成立はしないです…。この音声は過去のライブでの私たちの音声を収録したそうで、それはありがたいのですが、しょぼいです。
D「遠い…」
はるか遠くで叫んでいる声がかすかに聞こえる感じでした。


お次は『ライムスター・イズ・イン・ザ・ハウス』。このツアーのタイトルですからもちろんやるよね。今回も新しいルーティンで演奏してくれました。そう、RHYMESTERは(特にこの曲は)DJがトラックを演奏しているのです!
『Deejay Deejay』も新しいトラックで。この曲は音源のトラックが好きだったので「あれで聴きたかったなー」という思いも少しある。
これは風営法の曲ですが、「踏ん張ってくれその日まで」というリリックはコロナ渦でのDJやライブハウスに向けた意味でも通用しますね。そして、「手を叩け足を踏み鳴らせ」は現在の声を出せないライブにおいて数少ないお客のできること。私も懸命に叩いて踏みました!


再びMC。
宇「次は本当に久しぶりにやる曲です」という流れからロシアのウクライナ侵攻の話、そしてチェチェン、クリミア、シリア、ミャンマーなどの話も含めてシリアスなMCでした。さらに我が国の移民に対する仕打ちなども。
バイブス棒をウクライナカラーにしようということで、青か黄色の指定。
曲はもちろん911エブリディ』
今回のライブは声を出せないのでラップをじっくり聴くわけで、そうするとDさんはリズムとグルーヴの人、宇多丸さんは理屈と韻がしっかりしているリリシスト、という印象をより強く感じました。
この曲はアメリカの911イラク侵攻が元になっている曲ですが、戦争や戦争報道の本質を突いているので今回の事態でも強度は変わらず聴くことができます。つまりは耳が痛い。


この曲はとても重いため、次で空気を変えよう。
『POP LIFE』。そうだよな、ポップな日常がいいよな。


今回はイスがあるのでここで座らせてMC。
Dさんのインスタの話だったけど何も覚えてないな。
D「宇多さんはアウトプットがあるからいいよね」
宇「俺、ラジオがなければすぐYouTuberよ」


座ったまま『グラキャビ』
この時代にツアーをするってのは演者にとっては楽しいことばかりでなく、居酒屋にも行けず他人とも会えずとにかくストイックに過ごさなきゃならないしライブではお客は声も出せないし、気苦労の多さと見返りの少なさと、以前のツアーとは気持ちの収支勘定は違っているんだろうな、なんて余計なことを考えてしまいました。それでも今はツアーをできる喜びの方が上か。
そのまま続いて『ナイスミドル』
これは「ナイスミドル=中年の自分」「HIPHOPのミドルスクール=90年前後」「初恋=HIPHOP」と意味がいくつもかかった曲です。この曲のトラックも好き。


立ちましょうと促され、新曲をやりますと言い、バイブス棒は緑を推奨され、とある会社で歌った、とここまでくれば気づきますね。『西原商会社歌』のRHYMESTERバージョンです。タイトルは『西原商会の世界Part2~逆Feat.クレイジーケンバンド』と言っていた、はず。「逆フィーチャリング、誰もやらないから2回目はまた自分たちだった」と宇多丸さん言っていました。
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トラックもこれだった。これにラップを足した感じ。
これは「自分たちの最後になるであろうフィジカルのシングルになる」そうです!えー、この曲でシングル?確かに明るくて楽しいけど、シングルになるほど強い曲じゃなかったよー。


さあ後半戦もクライマックス。
『B-BOYイズム』『ザ・グレート・アマチュアリズム』『K.U.F.U.』のアゲアゲ3連発!
『アマチャ』はJINさんパートのみ。『アマチャ』はDさんパートが肝なのになー。
『K.U.F.U.』は確かにこのツアーには必須ですね。バイブス棒もKUFUの賜物。そしてラストのDさんアカペラパートで爆発!


本編最後のMC。
ここだったか忘れましたが、今回は声が出せない分、途中から宇多丸さんより拍手の要求が強くありました。「拍手なら、手がちぎれようとも、俺の耳をつんざくばかりに、いくらでも」。うん、こういうSな宇多丸さん好き。
本編ラストは『ラストヴァース』


アンコール。MCで物販のTシャツいじり。「ライムスターイズインザハウス」のロゴが家の形だからそれを矢印に見立てて「顔に目がいくTシャツ」と言っていました。それ、あまり販促になっていないと思いますよ。
宇「こっちのTシャツはポケットが付いているから、大事なへその緒とかおじいちゃんの遺骨なども収納できます」。テキトーでいいなー。
宇「引き続きバイブス棒、よろしくお願いします」D「バイブス棒、いい棒です(太田胃散の言い方で)」宇「いい棒って何だよ」テキトーでいいなー。
『2000なんちゃら宇宙の旅』『待ってろ今から本気出す』でおしまい。


全部終わったと思ったら、サプライズでDさんハッピーバースデー!BGMもマリリン・モンロースティービー・ワンダーではなく、私の知らないカッコいい曲でした。ケーキはなく、花束のみ。
「こういうツアーなので今回は短めに」と途中で言っていたのに結局アンコール入れて2時間。結局いっぱいしゃべっていっぱいサービスしちゃうおじさん3人。大好きです。


感想まとめ。
これまでコロナ渦のライブには何度か参加しましたが、それはコンサートだったので聴くだけでよかったけど、今回はライブなので、私たちの声も必須要素なわけです。その分楽しさはだいぶ減ってしまっているのですが、このご時世だから仕方ない。今できることで楽しむしかない。
というわけで、バイブス棒は必須アイテムです。レキシのライブの稲穂くらい必須アイテムです。これから行く人、必ず購入しましょう。
そして、私たちが声を出せない分演者の皆さんがその間を埋めてくれたし(JINさんも大活躍していた!)、ラップに集中すると「やっぱラップ上手いな」と今さらですが再確認することもできました。
実際、カラオケでラップを歌うと、歌えてもグルーヴを出すことって難しいですよね。早口でなくラップであることはやはりスキルの壁があるってこと。


あとね、私の2列後ろにおっさん二人組がいて、そいつらは途中でも顎マスクでずーっとしゃべっていてとても不快でした。マスクしろよ!しゃべるなよ!演者側がどれだけ準備してこのツアーやっていると思っているんだよ。RHYMESTERのファンは民度が高いのが自慢だったのにとてもがっかりしました。あいつら、この2年寝てたの?今の世界を知らないの?
スタッフも、見つけたら注意してほしいし退場させてほしいです。このご時世にライブをやるなら厳格なルールは必要で、それをお客にもお願いしている以上、それに違反している人にはきちんとダメ出しをしてほしいです。コロナに関するルールを守らないというのは、周りのお客・演者・スタッフを危険にさらす行為です。その点はもっと厳しく対処してほしかったです。次回以降、よろしくお願いします。


本日もいろいろ匂わせがあったので、今後楽しい発表がいくつもあるんでしょう。楽しみ!


本日のセトリ
1.ONCE AGAIN
2.Future Is Born
3.Back & Forth
4.ライムスター・イズ・イン・ザ・ハウス
5.Deejay Deejay
6.911エブリディ
7.POP LIFE
8.グラキャビ
9.ナイスミドル
10.西原商会社歌
11.B-BOYイズム
12.ザ・グレート・アマチュアリズム
13.K.U.F.U.
14.ラストヴァース
(アンコール)
15.2000なんちゃら宇宙の旅
16.待ってろ今から本気出す