やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「キッズ・リターン」 感想

今さら初体験


恥ずかしながら、初の北野映画です。
今までのたけしさんの映画はバイオレンス色が強くて、どうにも手が出なかったのです。あとは「難解そうだな」という勝手な思い込み。
そこでバイオレンス色のなさそうな、そして世間からの評判も良い、今作から手を出してみました。


結論。いい作品でした。
青春=衝動だけあって目的がない、全能感と実力が乖離している時期。もしくは目的を見つけて、そこに向かって走り出している時期。ゴールはまだ見えない。
そんな彼らの青春ムービーです。
この映画がいいのは、ボクシングの才能があるシンジ(安藤政信)が、「物語」とは違い大成しないところ。現実はそんなもん。
そして主人公二人以外の若者のその後も描いている点。会社に入ったら怒鳴られ怒られ、別の会社に移ってもやはり同じ。現実はそんなもん。
ただ、唯一成功していく漫才コンビの漫才のネタや技術があまり向上していないのでは…。ツービートさん、指導お願いします。


役者も素晴らしい。
安藤政信はこれがデビュー作だそうですが、いきなり素晴らしい。基本受身でぼーっとしているからかな。自然な感じがよい。こんなイケメンがちょい前まで普通に一般人でいたのね。
金子賢もいきがり→チンピラがよく似合う。俳優から勘違いして格闘家目指して失敗した感じ。
そして一番素晴らしいのはモロ師岡
分かりやすい「悪」じゃないのがいい。すっと近くに寄り添い、いつの間にか楽→堕落に落とし込んでいく甘言。若い才能をスポイルしていく才能というのか。
これはたけしさんの若手時代に実際にいた先輩芸人がモデルだそうで。どこの世界にもいそうですよね、こういう「見えにくい泥沼」な人。


この映画の決め台詞といえばラストの「もう終わっちゃったのかな」「まだ始まってもいねえよ」ですよね。さすがの私もこの台詞は以前から知っていました。そして実際見たら、「これぞ青春映画」とその瞬間は感動したのですが、どうもあとからすっきりしない。
なぜかと考えると、この台詞を言うのがマサル(金子賢)だから。何もやり遂げず、何も反省もせず、今無職。そんな彼に「まだ始まってもいねえよ」と言われても説得力はありません。そんなこと言っているうちは何も始まらないよ。

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