全然足りない!
ベストアルバムを出し、現在ツアー中の桑田さんですが、桑田さんの「歌詞(この本だと「歌詩」になっていますが)」に焦点を当てた本が出ました。
330ページほどの本ですが、桑田さんの文章は80ページほど…。あとはタイトルの通り、歌詞です。そりゃないぜ桑田さん。
でも、インタビューではなく、桑田さんの「書下ろしの文章」というのが良かったです。前書きの部分では照れ隠しなのか自分で自分にツッコミを入れていますが、筆が進むにつれて徐々にシリアスになっていきます。病気の発覚から術後の経過などの部分はインタビューなどでも語られていましたが、それでもやはりぐっとくるものがあります。
では、いくつか引用しながら本書の紹介をさせていただきます。
当時はリハーサル・スタジオで口から出まかせのように浮かんだものも多かった。「いとしのエリー」の ‘♪笑ってもっとベイベェ~’ の部分も確か、そうだ。
最初は本当にこんなんだったのですね。「女呼んでブギ」なんてそれがハマりすぎて大成功したパターンですし。意味よりも音やリズムに合う方を優先する。
それが結果的に現在の日本語ポップスの歌詞の乗せ方のメソッドになるんだから、世の中分からんもんですね。
でも今は「小説家の人達とも歌詩で勝負してやろうじゃん」というくらいの気持ちでいる。
現在はこのように意識が変わってきているそうです。
「ポップス」とは大衆のための歌であり、この世の喜びも悲しみも怒りも希望も、すべてを大声で叫び、切なく囁いた音楽の総称である。
この「ポップス」の定義、すごく良いですね。大衆のための音楽であり、あらゆる感情を叫び、囁く音楽。自らをポップスの神に捧げた「国民の宝」桑田さんらしい考え方です。
アルバム「孤独の太陽」は、今までのサザンや桑田さんとは違う、ロック・フォーク・ブルースの匂いのするアルバムでした。しかしそれでも
ただ、このアルバムにしても、やはり根底にあるのはポップスだということを改めて感じた。ギター1本でやろうが、髭を生やしてメッセージ・ソングを歌おうが、やはり本質は変わらない。
「自分はこれからもポップ・シンガーであることに拘っていく!」
という思いだったそうです。
そうしたポップスとの思いとの対比として「ROCK AND ROLL HERO」が生まれるのですが、桑田さんはこのアルバムはあまりお気に召していないそうです。
ただの楽器に詳しいプロデューサーである自分に陥っていて、肝心の「歌い手」になりきれていなかった。
私も実はこのアルバムはあまり好きではありません。
桑田さんのポップスサイドから出てくるロックは、ディラン・ジョンレノン・クラプトンなどが透けて見え、そこに桑田さんの歌謡曲のエッセンスが振リまかれるのでポップに仕上がるのですが、最初から「ロックを作るぞ」だと歌詞もメロディもサウンドもヘビーでシリアスになりすぎて、ちょっと重いのです。
「MUSICMAN」というアルバムは、
これこそが自分のアイデンティティの最後の砦というか、音楽人生のひとつの大きなポイントになるという思いで執念深く作っていった。
そうです。
その一方で、「ROCK AND ROLL HERO」の反省から
「シンガーとして、自分が歌って楽しく心地良いもの」
を目指したそうです。
でも、私はこのアルバムもあまり好きではありません。
「ベタなコード進行にセブンスコードなどのアクセントと英語日本語のグルーヴ」が桑田メロディの真骨頂だと思っているのですが、このアルバムはコード進行がベタではありません。なので、メロディが一聴して体に入ってこない。だから歌いたくならないのです。
それでも、今回のベストアルバムに収録されている「幸せのラストダンス」「愛しい人に捧ぐ歌」はまたまた素晴らしい!
一体何回自己最高記録を更新するのか。
というわけでソロの歩みを歌詞の側面をメインに書き下ろしてくれた本作ですが、それでも物足りない。私は全部の歌詞の創作こぼれ話やこめた意味などをもっと聞きたかった、読みたかった!
私は何かが生まれるその過程や裏側を見たり聞いたりするのがとても好きで、サザン「キラーストリート」のDVD初回限定盤にはリハーサルの様子などが収められたボーナスディスクが付いており、それがとても良かった。そう、こういうのが見たいの!
全部の歌詞について書くのは大変なのでその部分はインタビューでいいし、全部とは言わないので半分でいいのでは何かしら語って欲しかったです。
そう言う意味では不完全燃焼。
それでも、桑田さんの真面目とお茶目と音楽に対する愛情と周囲に対する感謝と気遣いとファンのために生きていくことを貫いている生き方にまた感心し、深く頷くばかりでした。
さて、私が行くライブは11月15日、さいたまスーパーアリーナ。楽しみでーす。
桑田さんの今回のベストアルバムについての記事はこちら。
桑田佳祐最新ベストアルバム「I LOVE YOU-now & forever-」 - やりやすいことから少しずつ
桑田佳祐ベストアルバムの歴史 - やりやすいことから少しずつ
桑田佳祐・サザンオールスターズの歴史 - やりやすいことから少しずつ
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