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「往復書簡」湊かなえ 感想

湊かなえの作品は漢字2文字が多く、どれを読んだか忘れがち(湊かなえあるある)


「告白」「少女」に続く湊かなえさんの本です。
「境遇」はドラマは見ましたが原作は未読。「贖罪」は原作も映像もまだです。
なぜこの本を買ったかというと、もちろん文庫だからです。ハードカバーは高くて固くて重くてでかいでしょ。なので、他の作品も文庫になったら買いますよ。


今回の「往復書簡」はタイトル通り、手紙のやりとりのみで綴られるという、非常に制約のある物語です。3作の短編と、エピローグ的なおまけの文章がついています。
文庫裏表紙には「連作ミステリ」とあったので、それぞれの話が関連していたり最後に収束していくのかなと思いましたが、それぞれ独立した作品でした。
それでは、それぞれの感想です。


①十年後の卒業文集
これが一発目だったのは失敗だったのでは?プロットもトリックも無理がありすぎ。
手紙を出した相手が本人かどうか疑っている部分があるのですが、高校の同級生で結婚式に出るほどの仲良しが筆跡の違いに気づかないものか?手紙でのやりとりしかできない理由が「海外暮らしの一時帰国のためケータイ・パソコンを持っていない」ということですが、それでも家に電話はあるでしょう。その辺の不自然さやリアリティのなさでちょっと物語に入り込めませんでした。
そしてオチでは何と「結婚式に出席したのは別の同級生でした」とは??さすがに誰も気づかないなんてありえないでしょ。小学校低学年以来ならともかく、高校以来だったらさすがに他人だったら気づくって!いくら「学生時代は髪ボサボサで」とか「事故のついでに顔もいじってもらった」なんて理由付けもありましたが、それでも無理がありすぎる。
「高校時代から似ていた二人」とか「出産したら太ってしまった」「学生時代は太っていた」など、もう少し「あの頃と今が違っている理由」「間違えても不思議でない理由」などがないと納得できません。まあ、それでも納得できませんが。湊さんはその辺抜かりないイメージなのに。
あと、本筋とは関係ないけど、女って怖えぇ。こんな冷たいビームを出しながら「友達」が成立しているのですね。手紙の中からもビームは発射されていたし。


②二〇年目の宿題
これは良かった。6人を訪ねていくにつれて、事件の真実が見えてくる。
同じ出来事でも見る人、見えること、見る視点によって受け取る事実は違ってくる。湊さんらしい作品でした。
ただ、これは手紙でなくてもできたのでは?という思いもあります。誰かに依頼されて一人ずつ訪ねていくという流れなので、一般の小説でも描けたのでは。
あと、この作品がどうやって映画「北のカナリアたち」になっているのか、不思議です。映画では「原作」ではなく「原案」となっているので、プロットの部分以外はオリジナルらしいですが。映画だとミステリよりも感動を押し出しているような予告編。


③一五年目の補習
これが一番良かったです。ミステリとしても素晴らしいし、「手紙のやり取り」という設定の理由付けも、それを活かした謎解きもうまくはまっていました。
ミステリでありどんでん返しもあるのですが、ラストはハッピーエンドで、とても良かった。ただ、この二人のラブラブぶりが癪に触る。とリア充でない私は思ってしまう。だからリア充じゃないんだけど。
こっちも映画化できそうだけどな。


普段ドラマを見ることがないので、長澤まさみ主演の「高校入試」の1回目を見逃してしまい、もう見る気がなくなってしまった。早くレンタル化されないかな。もしくはどこかで第1回目見る手段はないものか。


往復書簡 (幻冬舎文庫)

往復書簡 (幻冬舎文庫)

往復書簡

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