やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「黄金を抱いて翔べ」 感想

原作は素晴らしいのかな?


井筒監督作品としては「パッチギ」「ヒーローショー」に続いてこの作品を見ました。
「パッチギ」はだいぶ前に見たのであまり覚えていません。関西出身ではないので部落や在日というのもピンときません。
「ヒーローショー」は素晴らしかったです。感想はこちら↓
映画「ヒーローショー」 感想 - やりやすいことから少しずつ


原作は未読です。
世間では(というかネットの中では)井筒監督は結構バッシングされていますが、私は上記2作はどちらも良かったので、期待して見ました。
しかし、がっかりな感想でした。


まず、動機が分からない。なぜ金が必要なのか。浅野忠信は奥さんも子どももいて、幸せそうな生活を送っています。そりゃ日常生活にはいろいろ不満もあるでしょうが、こんな危険を冒してまで金塊が必要な理由が分からない。
また、妻夫木聡とチャンミンの関係性も分からない。過去に何があったのか。また、妻夫木が越してきたアパートの目の前にチャンミンのアパートがありますが、これはたまたま?だとしたら相当な確率ですな。
そしてラストで妻夫木と西田敏行の関係も明かされますが、これこそどんな偶然だよ!
こうなる必然や伏線があればよかったのに、いきなり「親子です」だと「え、急に何?」という感じ。西田敏行が自殺する理由も分からないし。


肝心の銀行強盗ですが、計画粗すぎじゃないですか?
陽動作戦として別の場所を爆破してその隙に、という狙いはいいですが、それでももう少し警察も機能するでしょう。それ以前のダイナマイト強奪だって大事件なので、警察も力入れて捜査するでしょう。
また、警備員無能過ぎ。というより浅野忠信は相手の気を失わせる技術ありすぎ。誰でもえいっと殴れば気を失います。簡単すぎ。
その後はとにかく爆破爆破。ようやく本丸の金庫にたどり着くとそこはバールでよいしょよいしょ。えー、こんな力任せでいいの?
それでも金庫は開いちゃいます。でも、開いた時の描写がただ金庫を映しているだけなので、「ついに!」「これが金塊!」といったカタルシスがありません。もっとアップから引いていくとかBGMに凝るとか出来たと思うのですが。


ラストで妻夫木はビルの屋上から落下して死んでしまいます。そりゃそうでしょう。銃で撃たれてモルヒネで痛みごまかしている状態で片手でロープ1本で降りられるわけがない。
でも味方のみんなはシートやクッションなどの準備は無し。落ちた時も「あちゃー」くらいのリアクション。ここまでこんなに頑張ってくれたのに、冷たいなあ。
そして妻夫木の死体は目立つ黄色の袋に入れられて昼間の大阪の川に流されます。目立つよ!せめて夜中にやって!せめて黒い袋に入れて!


俳優さんは良かったです。
妻夫木くんは顔の作りが陽性なので、こういうダークな役どころは本来合わないはず。山田孝之の方がよかったんじゃないかとも思いますが、でも上手かった。
浅野さんは楽天的なリーダーで、あまり物事を深く考えない感じ。嫁と子どもを殺されても結構平気な顔してるし。髪型のせいで前半は笑い飯哲夫に見えてしまいました。
チャンミンは、かわいいね。私は東方神起は全然知らないのですが、すげーかわいい目をしている。こんな顔で「爆弾テロリスト」と言っても説得力無いような。途中の女装もかわいかった。
桐谷健太はこういう役いいですね。「流星の絆」のときのような、エリート気取りだけどハリボテ、という感じがいい。
溝端淳平はなぜこんなにプッシュされているのか分からない。CMにもいっぱい出てるし。でも今回のちょっと狂っている役は良かった。最後はちゃんと死んで欲しかったけど。
西田さんは、今回は抑えていていいですね。いつもの「俺、アドリブもできますぜ」的なドヤ顔がない。地味すぎてポスターの顔はもうダチョウ倶楽部の上島になっています。
あと、カジノのキングである青木崇高さんも良かった。「ザ・ワル」という感じがいい。その割にやられてばかりでかわいそうだったけど。


と、ここでまた私は立ち止まります。


以前「俳優はかっこいいセリフが用意されているのでズルい。いい役やるといい人に見られてズルい」ということを書きましたが、こういうことをまた考えてしまいました。
マンガ家って大変だな&俳優って恵まれているなと思うこと - やりやすいことから少しずつ
溝端くんが箸の持ち方もめちゃくちゃでご飯をかっこんでいるシーンやリストカットするシーンなどで「いつも優しそうな溝端くんがこんな演技を。見直したぜ、一皮むけたな」という意見をネットで散見しましたが、だってそういう脚本・演出だもの。溝端くんが急にこんな人になったわけじゃないし彼が自分でリストカットしだしたわけじゃないのに。
今までの役柄と違う・素の性格と違うことをやると評価されがちですが、だってそういう脚本・演出なんだもの。


ここまで結構批判的に書いてきましたが、多分原作がボリュームがあって、それを2時間にするとこういう不親切な感じになるのかな?原作読んでから見ればまた感想も変わったのでしょう。機会があったら読んでみます。
あと、エンドロールで流れる安室ちゃんの曲がカッコよかった。



映画『黄金を抱いて翔べ』予告編

映画『黄金を抱いて翔べ』安室奈美恵「Damage」ミュージックビデオ

黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)

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