やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「絶望ノート」歌野晶午 感想

メンタリストになればいいのに


文庫の帯や裏表紙のあらすじを見て買いました。この著者はお初です。
※ネタバレがあるので注意!


いじめに悩む中学生太刀川照音(たちかわしょおん)は、「絶望ノート」と題した日記にいじめの内容を書き記す。そしていじめた同級生を「殺してください」と書いたところ、本当にその生徒は事故死。さらに同じクラスメイトも殺される。本当にこのノートが殺したのか?


まさにリアルデスノートですね。
お話の大半は主人公ショーンの日記の文章なのですが、文章が上手い。中学生がこれだけ書けたら将来有望だ。
前半はいじめの描写が長く、なかなか「始まらない(事件が)」のですが、文章が上手いのでどんどん読めます。
そしていよいよ始まります。最初は階段からの転落事故で、大怪我ではありますが本当に単なる事故かも。しかし次の屋上からの転落事故はどちらの可能性もある。そしてついには明らかな殺人事件が発生します。さらにラストではあの人まで死んでしまう…。


トリックは「内容を創作したノートを使い親を操る」というものでしたが、これはトリックというには弱くないですか?実際その通りになるかどうかは分からないのに。
それぞれの事件の手口はあまりにずさんで、たまたま目撃者がいなかったから、たまたま警察が本腰を入れて捜査しなかったからなどの「運の良さ」で真実が判明しなかっただけです。「自殺に見せかけて殺す」なんて素人がやるには難しすぎるはず。


ラストで「創作のいじめ」の原因を排除したために実際のいじめを受けるようになったショーンに現実の危機が訪れます。

神様!照音は心の中で叫んだ。
しかしそれでどうもなりはしないと、彼自身が一番よく知っていた。

人を操って運命を動かそうにも、日記帳にはまだ何も記していない。
照音の首にはナイフが押し当てられている。

このラスト、ぶつ切りのようで最初は「え、こんな半端なとこで終わるの!」と思いましたが、日記により周りの人間を動かしてきたショーンが、目の前の現実には対処できない、というオチなので、これはこれで良いと思います。


解説にはしきりに「葉桜の季節に君を想うということ」が引き合いに出されていたので、次回はこれを読んでみよう。


絶望ノート (幻冬舎文庫)

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絶望ノート

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