やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「殺戮にいたる病」我孫子武丸 感想

これが小説の力


先日の「最近読んだ本 一言感想」に入れ忘れたので追加。
読んだのはだいぶ前ですが、衝撃を受けた本なので紹介させてください。


この作品はいわゆる「叙述トリック」なのですが、私は本格的な叙述トリックの作品は多分これが初めてで、それでブッ飛んだ思い出があります。
小説というのは文字だけですので、その場面や人物は私たちが自分の頭の中で描きます。作者もそれがイメージできるように人物造形や場面描写をするのですが、それがこの叙述トリックにより、今まで読んできて形作られてきた私たちの頭の中の造形や情景が全て打ち砕かれるのです。
見事にはまりました。はめられました。確かに読み返してみるとそう書いてあるわー。嘘はついてないわー。やられたー。


ただ、この手の小説は「小説」というフォーマットだからできることであって、映像化しにくいことが難点です。なので、とてもいい作品であっても、なかなか万人に届きにくい。普段本読まない人でもこういう作品に巡り会えたら「小説って面白いな」と思ってもらえるのに。


そう思うと、「アヒルと鴨のコインロッカー」はうまく映像化したなあと感心です。これは原作を読んで、「こんなの映像化不可能だよ」と思ってから見るとなお面白いです。おすすめ。


殺戮にいたる病 (講談社文庫)

殺戮にいたる病 (講談社文庫)


アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)