「こじらせ」が創作の源だとしても、それは嬉しいことなのか
「プロインタビュアー」吉田豪が漫画家たちへのインタビューをまとめた本作。これ以外の「人間コク宝」シリーズは読んでいませんが、このメンツもとても強烈なので、機会があれば読んでみようかな。
今回登場するのは花沢健吾、福満しげゆき、古泉智浩、若杉公徳、浅野いにお、泉晴紀、佐藤秀峰、福本伸行、板垣恵介、小池一夫、小林よしのり、古屋兎丸、川崎タカオ、カラスヤサトシ、地下沢中也、村上和彦、杉作J太郎の面々。
うーむ、濃い。普通の漫画家インタビューではありえないラインナップですね。
わざとこういうサブカル系の漫画家にインタビューしているからというのもありますが、みなさん青春と童貞をこじらせすぎ。周りのみんなが青春を謳歌している学生時代に漫画を書いていたからこじれてしまったのか、こじらせる人だから漫画の道に進んでしまったのか。
私は絵心無い芸人ですので絵が上手い人というのは尊敬しますが、それでも学生時代に休み時間にノートの片隅にイラスト描いている同級生がいたら冷やかしていたかもしれない。
確かに、漫画家というのは基本ひとりで机に向かってシコシコ作業するというお仕事ですから、一般的な仕事とは違いますよね。作品を世間に発表するといっても本人が歌うわけでも演技するわけでもないので、本人自身が世間と直接対峙しないまま社会的地位が上昇して、こじらせた人はそこでさらにこじらせたり「失われた青春」を挽回しようと空回りしたりしてしまうのですね。中には福本伸行のように上手く「モテる社会人」にステップアップした人もいますが、ほとんどの人はこじらせのねじれがほどけないまま現在に至っている感じがします。
童貞喪失話も必ず訊くのですが、みなさんあっさり話すのがまたすごい(中には拒む人もいますが)。私だったら赤の他人に話すのも嫌なのに、それが世間に公表されると分かっているのにしゃべる勇気は偉いなあ。
今回はこういうサブカル系の漫画家でしたが、ジャンプなどの「ど真ん中」にいる作家にも同じインタビューをしてもらいたいです。最初からど真ん中を目指していたのか、売れるために捨てたこと、売れて得たもの、作家性と商品性のバランス・葛藤、なども訊いてもらいたい。
まあ、集英社の方で取材拒否されると思いますが。
あとは女性漫画家にもインタビューしてもらいたい。久保ミツロウ、東村アキコ、その他男性誌に書いている女性漫画家、女性誌に書いている女性漫画家など。
今作に登場する泉晴紀さんの奥さんが書いた本についてのエントリ↓
「ダーリンは55歳」山崎紗也夏&「人間コク宝 まんが道」(泉晴紀部分) 感想 - やりやすいことから少しずつ
吉田豪の著作についてのエントリ↓
「サブカル・スーパースター欝伝」吉田豪 感想 - やりやすいことから少しずつ
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