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映画「インソムニア」 感想

クリストファー・ノーランなのに普通


インソムニア」を見ました。
なぜ今頃これを見たかというと、クリストファー・ノーラン監督作品だからです。ノーラン監督といえば哲学的な語り口と編集の妙が特徴の監督ですが、今回は「普通」でした。
物語の見せ方も普通だし、出来も普通。


今作はミステリーではありますが、犯人探しが主題ではありません。「目的のためには手段は選ばず」「大義のためには細かいところは目をつぶる」は正しいのか、正義感と罪悪感のせめぎ合い、を問う作品です。


アル・パチーノが素晴らしい。物語序盤では切れ者の仕事熱心な名刑事。それがあの事件以降は不眠症に悩まされる朦朧とした老刑事。途中から彼の不眠症加減に同情しました。
ロビン・ウイリアムズももちろん素晴らしい。彼は陽性で善人の役ばかりですが、今作は悪役です。凶悪犯ではなく、起きてしまった事件は早く方をつけて自分の人生からこの出来事を除外しようとする人間です。
しかしそうは割り切れないアル・パチーノ。その二人が協力・協同できるはずもなく、物語はラストへ進んでいきます。
そしてもうひとりの重要人物、ヒラリー・スワンク。彼女はこういう真面目な役はいいですね。仕事熱心で、でも尊敬する刑事に真実を問いただすことができない。


最終的に「正義」「善」「正しさ」に傾くラストは良かったです。これでアル・パチーノもゆっくり眠れることでしょう。


でも、ノーラン監督作品なので、ちょっと物足りないのも正直なところ。もうひとひねりや、序盤のあのシーンやセリフが実は!という展開を期待していたので、この「普通」には「普通かよ!」という感想です。
物語自体は及第点だと思うのですが、ノーラン監督には「その先」を求めてしまうんですよね。デキる男は「いいもの」を作っても納得されない。「すごくいいもの」を作ってようやく評価される。可哀想ですが、それだけ期待が大きいんですよ。「松本人志のMHK」みたいなもんで。


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