やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「ぼくのメジャースプーン」 辻村深月 感想

カバーがプラスになっていると思えないのだが


辻村深月さんの「ぼくのメジャースプーン」を読みました。辻村深月さんの本は初めてです。
とても良かった!
良さは実際に本を読んでください。そして解説を読んでさらに噛み締めてください。
いかにふみちゃんがいい子なのか。いかに市川雄太がひどいことをしたのか。その悲しみと苦しみと憎しみを、主人公である「ぼく」と読者である私たちは同じ熱量で噛み締めながら読み進んでいくことでしょう。この丁寧な前半部分だけで作者の力量の素晴らしさを知ることができます。


この物語は、ジャンルは何なんでしょう。ミステリーでもなくラブストーリーでもなくファンタジーでもない。ジュブナイル小説なのに哲学書でもあります。
罪と罰。道徳と倫理。復讐と赦す事。法律と感情。許せないことをした相手に対し、自分は何をしたらいい?何をすれば気が晴れる?許せる?忘れられる?相手の反省は心から?表面上だけ?それを見極めることはできる?心から反省・改心させるにはどうしたらいい?
これらのことについて、「ぼく」と大学教授である秋山先生は話し合います。まるでサンデル教授が扱うような内容ですが、秋山教授の話し相手である「ぼく」は10歳の小学4年生なので、言葉は丁寧で優しく、理解しやすいように語られます。
しかし、内容は子ども騙しではありません。「ぼく」に語りかけながら、読者である私たちも考えさせられます。自分だったら、どうしたら気が晴れるだろうか。この「力」を、どう使うべきか。


何これ。小学生の読む本じゃないじゃん。大人の私たちでも答えの出せない哲学的命題の話じゃん。でも、小学生でも読めるように書かれているじゃん。てことは、すげーいい本じゃん!


ラブストーリーではないのですが、純愛の話です。「僕は君が好きだ。付き合おう。結婚しよう」という愛ではなく、もっと純粋な愛。「ぼく」が子どもだったこともあり、男女の恋愛のベタベタ・ドロドロした感じが一切ない愛。愛情でもなく、もちろん愛欲なんかではない、愛の純粋抽出。


解説を読むと、登場人物が他の作品にも出ているそうですね。そんなことを知ったら別の作品も読みたくなるじゃないか。上手いなあ。まんまと乗せられよう。


この本は友達から勧められて購入したのですが、本屋の棚から抜き出すと、表紙カバーにはラノベのような可愛いイラストがあり、「ラブプラス図書委員推薦図書」と書いてあります。これ何?表紙の女の人、物語には出てこないじゃん。これが小早川凛子という人なの?何でラブプラスとコラボしてんの?物語の内容と何も関係ないし、この表紙だけ見たら私は絶対に買っていません。
私はゲームをしないので「ラブプラス」はよく知りませんが、彼女とイチャイチャしたりするゲームなんでしょ?余計レジまで持って行きにくいわ!
ラブプラスファンがこのイラスト見て購入するのと一般人がこのイラスト見て避けるのは、後者の方が多いような気がするのですが、本当にこの販促はプラスになっているのでしょうか?一応このカバーを外すと普通のカバーが下にあるのですが、買うまでは外せないのでレジまで持っていく葛藤は変わりません。
本屋の皆さん、カバー外してもらえないですか。


ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)


ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)


ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)


Amazonはラブプラス表紙はないのかな?