やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「渇き。」 感想

笑えないグロはただのグロだ


中島哲也監督が好きで、新作「渇き。」を見るために原作を読みました。
「果てしなき渇き」 深町秋生 感想 - やりやすいことから少しずつ
昨日読み終わり、今日映画を見に行ってきました。
映画『渇き。』公式サイト



あー、こっちもヘビーだなあ!
(以下、ネタバレ含みます。)


主人公はクズでゲスなのですが、映画ではそのクズでゲスの具体的な描写は少し抑え目でした。しかし、映像があるとそれぞれのエピソードに意味や重みが足されますね。エロやグロの描写は(原作に比べて)少な目だったし細かいカット割りなどで直接的な描写を避けていましたが、それでも十分エロでグロでした。
男の子がおっさんに犯されるシーンも直接的な映像は抑え目でしたが、十分グロい。そもそも、少年がおっさんに犯られるシーンっていうだけでグロいよ!気分悪くなったわ。
そして、暴力描写は原作以上。血まみれすぎるでしょ。気分悪いどころか、気持ち悪くなっちゃった。寝袋に入れられた彼の腹とか、ボクがあの女にカッターで行う行為とか。
途中身をよじりながら見ていたし、一部は目を伏せちゃった。映画観終わった後に昼飯食べようと思っていたのに、気分悪くてしばらくご飯どころじゃなかったです。


全体的にアップが多いのと思わせぶりなカットバックが多いのが気になりました。もっと全体見せてよ。パーティーやっていた会場がどんな場所なのか全く分からない。クラブのフロアなのかホテルの部屋なのか駐車場なのか、全く分からない。


加奈子の目的である「復讐」が、あまり映画では描かれていないように思いました。なので、加奈子は単なる薬や売春の元締めで、悪魔のような(キャッチコピーに倣うと「バケモノ」のような)存在に感じました。復讐のためには悪魔にもなるよ、という感じがしなかったな。


オダギリジョーの存在が全く分からない。原作では子どもの医療費のために悪に手を染めていましたが、映画では単なる殺人鬼。自分の妻ですら躊躇なく殺します。金だけのためにこんなリスクの高いことしないでしょ。行動原理が分からない。
でも、確保(取り押さえ)の後に妻夫木聡が撃ち殺して「はい自殺~」という描写は良かったです。
ついでにいうと、愛川(オダギリジョー)の家に踏み込んだ藤島(役所広司)が彼の奥さんを犯す場面も理解できなかったです。原作では覚せい剤でラリっている状態で家に入っていて、奥さんの姿を見て徐々に欲情していって奥さんが逃げようとしたところで理性が切れるという段階があるのに、映画ではいきなり犯している。頭おかしすぎ。


結末は原作とちょっと違っています。映画では「殺してやる」と言いながらシャベルを振るいますが、原作では娘に「許してほしい」と願いながらシャベルを突き立てます。どっちがいいのでしょうか。「殺してやる」はイカれた父親を分かりやすく表現していますが、「許してほしい」は、この期に及んでまだ許してもらえると思っている父親のイカれ具合(それが「果てしなき渇き」なのでしょう)を表現しているとも言えます。そう考えると後者なのかな。映画見たときは映画の方がしっくりきたけど。


キャストについて。
役所広司。もちろん言うことはありません。ナイスクズ!でした。
小松菜奈。ああ、かわいい、美しい。こんなのに迫られたら誰でもイチコロです。劇中、5人とキスしていました!許せん。けしからん。うらやましい。
妻夫木聡。善人顔しているので「黄金を抱いて翔べ」のような悪役はやっぱり無理。なので、こういう「顔は笑っているけど腹は黒い」役だといいですね。ちょっと藤島(役所広司)を泳がせすぎだけど。
橋本愛。こういう役の方が素っぽいね。イライラ顔が似合う。
二階堂ふみ。彼女はこんな役ばっかりだな。サブカル女優。
清水尋也。イメージ通り。彼のことは何も知りませんが。
オダギリジョー。無駄に格好良すぎ。上にも書きましたが、どんな人か分からないままクレイジーなことをしすぎ。最期も生きているだけで不自然なのに、立ち上がっちゃダメ。座った状態で銃を使えばよかったのに。
中谷美紀。「嫌われ松子の一生」で中島哲也監督と衝突したらしい彼女がまた登場。しかも重要な役どころです。さすがに上手い。ただ、加奈子に手をかける場面で血を出すようなやり方はまずいんじゃないの?シートなどをきれいにふき取れるわけないもの。ここは原作のように首絞めで。
青木崇高。映画ではほとんど暗闇の中での登場なので、顔が分かりません。公式サイトの顔見たら、結構普通でした。私は「黄金を抱いて翔べ」の「いかにもワル」なイメージがあったので、ちょっと肩すかし。
國村隼。毎回上手い。香川照之ほどクドくないのもいい。
黒沢あすか。こういう不幸でイライラする奥さんの役は似合いますね。脱げるのもポイント。


一番納得できない点があります。
原作では加奈子は父親に暴行され、それが心を歪めた大きな要因になっていますが、映画ではその部分がありません。
父親が酒に酔って部屋に入ってくる描写はありますが、レイプしようとしたわけではありません。それどころか、自ら父親にキス!これ、ダメでしょ。その後父親は自分の娘に欲情していることを見抜かれて首を絞めて殺そうとする場面はありましたが、レイプはしていません。いや、したのかもしれませんが、娘からキスしている時点でレイプでなく合意の上の近親相姦になっちゃうぞ。
これだと、娘が壊れる原因になり得ていないです。自分からキスしちゃダメ。


私は中島監督は好きなのですが、今回は「面白かった!」とは言えません。「嫌われ松子」は原作と全く違うアプローチらしいですが、原作は未読です。で、映画は面白かった。
なので、もしかしたら原作読まずに映画を見れば面白かったのかな?いやー、でもグロすぎて辛いな。
これ、よくR15で通ったな。学生は見ちゃダメ。


<追記>
何と、藤島加奈子は死んでいない説があります。原作と映画は全然違うという見立て。
この作品を見てからずいぶん経つので細かい部分はもう覚えていませんし映像がグロくてもう一度見ることもしませんが、そう考えるとこの作品の評価も変わってくるな。もう見ないけど。
movie-review.hatenablog.com




映画『渇き。』予告編【高画質】 - YouTube