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「顔面遊園地 ナンシー関 消しゴムの鬼」に行ってきました! 感想

ナンシー関さんの展示会「顔面遊園地」に行ってきました。

顔面遊園地 ナンシー関 消しゴムの鬼 | PARCO MUSEUM | パルコアート.com
ナンシー関。私のようなアラフォーはみんな知っているのでしょうか。それともサブカル側の生き方をしてきた人たちしか知らないのでしょうか。
ともあれ、テレビっ子だった私にとって、ナンシーさんの文章は物事の見方の物差しの一つになりました。


土日は混んでいるとの情報で、月曜の開店と同時に行きました。
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入り口には玉袋筋太郎さんのお花もありました。そしてこの日、相棒である水道橋博士さんも来場されたようです。


この展示会のキャッチコピー「見えるものしか見ない。そして見破る。ましてや彫る」。これ、ナンシーさんを表している名コピーですね。
その人そのものではなく、「テレビに映ったその人」「テレビに映った状態」を見るのです。それでその人の本質(タレントとしての本質も含め)を見抜くのです。


場内は、「俳優女優」「スポーツ選手」などのカテゴリに分かれたハンコ現物の展示、コラムの一節を掲示した空間、手書き原稿やカセットテープなどの私物展示、前回の「顔面博覧会」のときのドレスや靴にハンコを捺した作品の展示、そしてお色気コーナーや犯罪者コーナーなどもあります。


メインはもちろん生ハンコの展示。これが全部面白い!「あのとき」を切り取ったものから、今でも変わらないもの、そして今だからこそ分かるものまで、ナンシーさんの「本質を見抜く力」に感服しました!
ひとつひとつ取り上げてコメントしたいくらい。でも写真撮影不可なので、既にほとんど忘れた。
それぞれのハンコに添えられた文章も読みたいなあ。ハンコの横にQRコードが付いているとか。でもそんなことをしていたら丸一日あっても足りないな。


コラムの一節の部分では、有吉弘行の「ふてぶてしさ」を見抜いた文章や、ダウンタウンの「地肩の強さ」を評価する文章(あの当時、お笑いの評価に「地肩」や「強さ」という評価軸を持っていた人はいないはず)、中山美穂川島なお美三原じゅん子の「美人とは」「自意識と世間の評価」について、そしてヤワラちゃんに対する未来予想図まで(「10年後選挙に出る」と予言している!)、膝を打ちっぱなしの的確な指摘とツッコミ。
この文章には町山広美さんの解説もついているので、当時をよく知らない人でも理解できるし楽しめると思います。中山美穂に対しての「まさか美人の称号を夫に奪われるとは」とか。
あと、千葉すずさんの文章にもあった、テレビの「感動ブーム」に対しての辟易は、あの文章当時も私は同感していたのですが、今はもっと大きな流れになっていますよね。24時間テレビ、オリンピック、ワールドカップ。最近の邦画も「感動させまっせ」というものが多いですよね。ああいう「感動させるよ」「感動しろよ」という集団心理というか同調圧力というか、とっても苦手。もっとナンシーさんのような声があがってもいいのに。


ナンシーさんの手書き原稿は、とても美しい文字をみることができます。
ハンコの作り方のコーナーを見れば、ナンシーさんがとても細やかで繊細なことが分かると思います。私のようなおおざっぱな人間はとてもあんな細かい作業できない!技術と集中力のどちらも必要ですな。


ナンシーさんの小説とハンコを活かしたアニメもあったのですが、あまりはまらず全部見なかった。朗読はピエール瀧さんがやっています。


芸能人以外のハンコは、デビューのきっかけになった「でっち小僧」とかその他昭和の風景など、やさしいタッチのものが多かったです。もしナンシーさんが今も生きていたらこっちの方向に進んでいたかもしれませんね。
※今はブログやSNSなどでみんなが発信できるしツッコミもできる時代なので、ナンシーさんのやり方は変わっていたかもしれない。


場内は基本撮影禁止なのですが、一部撮影可能な場所がありました。
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由美かおる本田博太郎(「北京原人」のときの)です。顔出ししたかったのですが、なんせひとりなもんで、誰かに「撮ってください」とも言えないヘタレなもんで、写真だけ撮ってきました。
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これも同じく。馬場さんに16文キックしてもらえる機会なんてないのに!


後半にはピンクコーナーと犯罪者コーナー。ナンシーさん、SM雑誌にも連載持っていたのか。犯罪者コーナーは黒い箱に顔を突っ込む形で中を覗き見ます。


グッズコーナーで何か買おうかと思ったのですが、物欲や収集癖のない私は何も買わずに出てきてしまいました。Tシャツはデザインがイマイチで購入しませんでしたが、それ以前に素材が薄いのが不満でした。今度の岡村ちゃんのグッズにもなるTシャツも飾ってありましたが(購入はできない)、ペラペラだなあ。この辺はRHYMESTERを見習ってほしい。Tシャツの素材、しっかりしていて着心地がいい。


私はナンシーさんの著作は何も持っていませんが、それでも覚えている文章がいくつもありました。どれだけ自分の深くに沁み込んでいるんだ。
ナンシーさんは売れっ子になった後もほとんどメディアの前には出ることはありませんでした。あくまで「テレビで見えたもの」だけで書いていく、彫っていく。
今週のTVブロスでこの顔面遊園地の特集があり、そこで町山広美さんが「ポストナンシー」としててれびのスキマさんを挙げていました。ものすごく同意!
スキマさんも徹底して「テレビを見る側」のみで文章を書いています。もうプロになったのだから直接有名人に会ってインタビューすることもできると思うのですが、そういう仕事しませんよね。そういう信念があるのか、オファーがないだけなのか分かりませんが。
てれびのスキマさんのブログ

てれびのスキマ
あと、この展示会についての文章で、とても良かったもの。↓

顔面遊園地 ナンシー関 消しゴムの鬼 - ビーガタスエッコヒダリキキ
こちらも読んでください。
あと、ナンシーさんの文章の一部を呟くbotもあるので、そちらをフォローするだけでも少しはナンシーさんのすごさ、面白さが伝わるかも。本当はこんな一節のみじゃ伝わらないんだけど。

ナンシー関ボット (@nancy_seki_bot) | Twitter


ナンシーさんは「毒舌」「斬る」というイメージで語られることが多かったですが、ナンシーファンならそうではないことは皆知っているはず。「見抜く」のです。
今回の展示会でナンシーさんの凄さがまた世間に分かってもらえれば、間違ったフォロワーである今井舞の仕事も減るかな。文体から何から真似しやがって、そして「毒舌」という間違ったトレースの仕方。これがオリジンだよ!


こんなに盛りだくさんで入場料500円ですよ。滞在時間も1時間以上はいられます。お友達とくればもっと長く楽しめるでしょう。
あー、楽しかった。

ナンシー関大全

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ナンシー関 リターンズ Nancy Seki Returns

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テレビ消灯時間 (文春文庫)

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