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映画「寄生獣」(第1部) 感想

2014年でよかった


映画「寄生獣」を見てきました。原作は大好きでコミックも持っていました。もうないけど。
公式HP↓
http://kiseiju.com/
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監督は山崎貴氏。私は彼の作品を見たことがありません。「三丁目の夕日」も「ヤマト」も「名もなき恋の歌」も「永遠の0」も「ドラえもん」も見たことありません。嫌いというわけではないのですが、今までの題材にはあまり興味がありませんでした。
でも、VFXが必須の今作。日本でこのレベルのVFXを使って商業映画を作ることができるのは彼しかいません。さて、どうなっているか。


良かったです。
(以下、ネタバレあります)


一番重要なミギー他パラサイトの動きですが、とても上手く作られていました。これだけで大満足。あとは原作が素晴らしいので、その通りに進めば傑作は約束されたぜ!
原作が完結した頃から映像化の噂はありましたが、日本で映像化するのであればあの時代では見るに堪えない特撮描写だったことでしょう。映画化が今年でよかった。
ハリウッドでの映画化の予定もありましたが、頓挫してよかった。あの世界観(日常と非日常)は日本が舞台の方がいい。海外だと日常感がなくなってしまう。でも、設定諸々換骨奪胎したハリウッド版も見てみたいです。


前後編になっているとはいえ、原作で全10巻のコミックを4時間ほどにまとめるのであれば、エピソードは取捨選択が必要になります。その辺も上手くできていたと思います。欲を言えばきりがない。
PG12というレーティングなのでグロい描写が抑え目になっているかと心配されましたが、十分人体はバラバラになっていました。マンガの世界なのでグロく感じなかったのかな。


まあ、欲を言えばきりはないのですが、それでも欲とケチを、原作との違いを含めて書きます。
まず、原作ではパラサイトは宇宙からやってきましたが、映画版では海からやってきます。どこから海にたどり着いたのかは描写されていません。
これは、こっちでいいのかな。海からでも、元は宇宙からかもしれないし。とにかく「どこかから」が分かればいいので。
復活後の新一の変化の描写がもう少し欲しかったです。運動ですごい記録を出すとか髪型の変化について。そういうのがあった方が彼の心の変化(犬の死についてなど)についても説得力が出ると思うのですが。まあ、時間が足りないか。
クライマックスの島田を倒す場面。原作では石を投げますが、映画では弓矢方式になりました。これもどっちでもいいのですが、弓矢の方が見栄えするからかな?でも、あれだけ銃で撃たれても大丈夫だった島田が一撃で絶命するには「石で心臓を打ち抜く」方が見た目の説得力があると思うのですが。鉄パイプだけだと銃弾との差が分かりにくいのでは?
オープニングで「誰かが思った。人間が半分になれば、焼かれる森も半分になるだろうか」というモノローグ。原作では誰の発言とは明示されていません。「誰かが」思ったのです。
これが映画では田宮良子(深津絵里)のセリフになっています。これって田宮良子の意見?うーむ。映画だから誰かにしゃべらせなければなりませんが、それは彼女なのか?誰でもない声でよかったのでは。もしくは文字を出して音声は無しにするか。
この「この作品の主題」は誰かの意思や意見ではない方がいいと思うけどな。


これは本当に些末でどうでもいいことなのですが、美術室で女子高生たちが襲われるシーンで、あんなに大勢がパニックになっているのに、パンチラゼロ。新一が里美を助け出して校舎から飛び降りる際もパンチラゼロ。校舎の廊下に生徒の死体が転がっているときもゼロ。
いや、どうでもいいんだけどさ、普通見えるじゃない。パンチラ気にしている場合じゃないじゃない。じゃあ、少しサービス欲しかったなあ。


あと、本作は「母親との関係」について大きな改変がいくつか行われていますが、そこでも違和感を感じました。
「母性の奇跡」は第2部でも重要なテーマのひとつになりますが、そこを重要視しすぎていると思うのです。
まず、母子家庭にしたこと。母親がいなくなった後の彼の日常を考えると、高校生一人暮らしは大変すぎます。児童相談所が出てきたり親戚が出てきたりしないといけなくなります。なので、父親はいてもいいと思うのですが。旅のエピソードはなくてもいいので。
また、母親が息子に近づきすぎ。高校生の息子に対して腕組んだりするの?今どきの高校生の親だったらするのかな。ちょっと関係性が近すぎる感じがしました。もっと普通でいいのです、親なんてもんは。「ここぞ」というときにだけ親の愛情を見せてくれればいいのです。「この親子、仲がいいですよ」の描写がくどい感じがしました。
そのくせ、大事な「天ぷら油から息子を守る」エピソードを語りだけで済ますなんて。映像入れたって1分くらいでしょ。入れてよ。それでこそのあの火傷の跡が活きてくるのに。
その後母親との闘いで、原作では新一が「母親の火傷の跡を見て一瞬躊躇してしまう」描写がありましたが、それは無し。その代わり「パラサイトの攻撃を母親の意思が防ぐ」という描写があります。えー、パラサイトの設定を根底から覆すこの行動、いいんですか?
これも劇中で田宮良子が口にする「母性という特殊な能力」なんでしょうが、この「母性愛」の押しつけがくどいと感じてしまいました。


「母性愛」を全面に出しすぎて、作品全体のバランスが崩れてしまったと思います。殊更に協調しなくても、原作通りで十分出ますから。


役者さんについて。
染谷将太
彼でよかったと思いますが、彼はもともと目つきが悪い(死んだ目をしている)ので、復活後の新一が悪く見えがち。でも、彼でよかった。
橋本愛さん
原作の里美は純朴田舎少女でしたが、橋本さんがやると冷めた感じになってしまいます。もうちょっと純朴な子はいなかったのか。ロリコンアイドルでなく、ちょいダサな感じがいいな。
阿部サダヲさん
これはいい。声だけだともっとクールな声がいいけど、動きもモーションピクチャーで俳優の動きを取り入れているのであれば、阿部さんでよかったと思います。
ただ、これは阿部さんのせいではないのですが、ミギーをかわいく描き過ぎ。コメディ色は薄めてもっとクールでよかった。(クールだからこそ面白いのだ)
東出昌大さん
彼は、スタイルはいいしいい人そうだけど、演技下手ですよね。今回はぎこちない笑顔のパラサイト役ですが、あれでいいのかな?
深津絵里さん
東出さんと同じですが、パラサイトの演技はあれしかないのか。パラサイトの人たちはあんなじゃ元からの知り合いにすぐ「あんた誰?」になるのでは?「母親の母性」を持ち出すまでもなく。
余貴美子さん
宮崎美子さんと並ぶ「日本のお母さん」。ちょうどいい太り方で、お母さんさ満点。途中、「この椅子、そのうち友近が座ってるんじゃね?」と思いながら見ていました。
北村一輝さん
このキャスティング、ものすごくピッタリ。原作と顔は違いますが、「人間離れした人間」がものすごく合ってる。
國村隼さん
彼も邦画出まくっていますな。今作は関西弁の刑事。もちろん上手い。
浅野忠信さん
ラスボス。さすがの存在感です。後編楽しみ。


文句や注文の方が多くなりましたが、トータルではとても良かったです。原作ファンでも満足してもらえるんじゃないでしょうか。
さて、後編は4月。私立探偵の活躍、田宮良子(後編だと田村玲子ですね)の母性愛、殺人鬼浦上(新井浩文さんが演じるの楽しみ!)、市役所包囲網、後藤との闘いと盛りだくさんです。2時間で収まるのか。
楽しみです!



映画「寄生獣」予告 - YouTube

10分でわかる組曲『寄生獣』 - YouTube
(原作ネタバレ↑)

寄生獣 完全版全8巻 完結コミックセット

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