やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「リリィ・シュシュのすべて」を見て、歪に大人になった自分を見つめ直す

「青春」「通過儀礼」、大事。


本当に今さらですが、「リリィ・シュシュのすべて」を見ました。
岩井俊二監督作品は、「スワロウテイル」「打ち上げ花火~」しか見たことがありません。それもどっちもほぼ忘れている。
作品については、いろんな人が素晴らしい文章を書いているので、さらっと。それよりも、この作品を見て自分の「こじらせ」などをいろいろもやもやしてしまったのでそちらを書きます。


岩井俊二監督はよく知らないし見た作品もだいぶ昔なので、作風などは分かりませんが、映像がきれいですね。しかし、私はこういう「映像美」に重点を置いた作品はそんなに好きではありません。
また、上映時間が146分という長さなのですが、どう見てもカットできる場面がたくさんあり、増長に感じました。編集次第では120分以内に収められたはず。


内容は、いじめ・窃盗・援助交際の強要・集団レイプ・殺人、とダークな題材ばかりです。ラストも救われる結末ではありません。
見た後は鬱になります。
俳優陣はみな良かったです。市原隼人はかわいいし、中学生男子の「口の中でしゃべっていて何言っているか聞き取りにくい」感じが上手かった。これに関しては、役名のないクラスメイトの男子がみな「これぞ中学生」の顔やセリフ回しをしていて、とても良かったです。
ダークサイドに堕ちる忍成修吾もいいし、エンコーを強要される蒼井優はこのときからもう「女優!」です。実際に丸刈りになった伊藤歩も素晴らしい。彼女の「何にもしてないのにいじめられる」のがかわいそう過ぎた。
そして何の役にも立たない担任。


映画についてはこれくらい。見た後は鬱になり、いろいろ考えちゃった。
前半、まだいじめなどが起きない頃、中学生たちは部活に恋愛にはしゃいできゃっきゃしています。こんな場面、映画ではいくらもありますが、私はこれがどうにも受け付けないのです。
「うわ、青春場面だ」と思ってしまうのです。これが「桐島~」のような着地をすればまだ消化できるのですが、この作品のダウナーな空気には自分が負けちゃう。


青春のシーンでなぜこれほどまでに拒否反応が出るのか。それはやはり自分が思春期に青春しなかったからです。


そう、まさにそう。


自分は小学生までは「子役時代(写真を見ても顔が違うし、記憶が一切ないので別の人間がこの時代を演じていると思っている)」、中学時代は「虫時代」、高校時代は「犬時代」と呼んでいて、大学生でようやく人間になったような気がしています。
高校までは記憶がほとんどないし、何も考えてなかった。中二病的な世界観は若干ありましたが、恋愛、部活、友人関係、いじめなどの問題、将来の夢など、考えたりぶつかったりしなければならない問題を全てスルーしてきました。
それは、逃げてきたわけではなく、そんな問題がなかったからです。いや、実際はあったのでしょうが、当時はそれに気づかず、ただ日々ごはんを食べてうんこして寝るだけの日々でした。


結果、反抗期もなく「いい子」で育ってきたのですが、やはり通過儀礼をきちんと経ていないと、きちんとした大人にならない場合があるのです。
親に暴力を振るわれた子供が自分が親になったときに暴力を振るってしまうように、子どもの頃に何かがあるとそれが大人になったときに変な形で発現してしまうのです。
それが私の場合は「青春こじらせ」です。


今の私は「サブカルクソ野郎」ですが、これはこれで楽しい日々を送っています。
しかし、普通に恋愛して普通に結婚して普通に子どもがいたら。子育てに忙しく、金も時間も自由にできないからライブに行くなんてもちろん無理だし、CDを買うこともない。そんな日々だったら。
そんな「ベタ」に思える生活の方が幸せなんじゃないか?音楽は聴かないけど、子ども経由でファンモンを聴いて「ヒーロー」はいい曲だな、なんて思う生活。


今さらないものねだりをしても仕方ないし時間は巻き戻せないけど、物事を斜に構えて見るより、ベタなものを素直に「いい」と思える人生の方が楽しいよな。
もう「まだ始まっちゃいねーよ」(©キッズリターン)なんて言えない「人生も後半のページ」(©宇多丸)。このサブカルクソ人生を生きるしかないよな。
やばい、鬱ラストだ。


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